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A new Era ~始まりのヒトと終末を告げるヒト~  作者: ラー
二章 ~ルークと迫りくる帝国の闇と実直の騎士~

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24話

βを無理矢理に抱え込んだまま、グングンと迫る地面に薄っすらとした恐怖を抱きながらもその僅かな狭間に落ちた後の事を考える。一番は落下と共に自分もβから離れ、ウィリアムにβを切り裂いて貰う事だ。これが一番、確実に思える。それに下ではウィリアムもしっかりと大剣を構えてくれている事から、実現は困難ではない筈だ。

(なら問題はやっぱり俺だな)

暴れるβの羽を掴みながらが歯を食いしばる。落下と共に自分がミスって気絶でもしようものならβに反撃のチャンスが出来てしまう。こいつが落ちた程度で死ぬとはとても思えないし、自分みたいに気絶だってしないだろう。だから少しでもβを下敷きにして、なおかつ速く飛び退かなければならない。しかしそんな自分の思考を他所に、地面はもう眼の前だった。


「くたばりやがれっ!」

最後の仕掛け、βの翼を足も使って抱える。それから腰から下を丸めるようにして動かしながら自分の頭を地面から反らす。そして地面にぶつかる瞬間に勢いよく背中も反らした。

直後、全身を衝撃が走り抜ける。力いっぱい掴んでいた手も耐えきれずに離れてしまう。何なら叩きつけられたボールが跳ね返る様に自分の体も思いっきり宙に舞った事が分かった。思わず目も閉じてしまった。音は聞こえるがどうなったか分からない。本当に僅かな時間の筈が目を開けようと思ってから、速く開けと思うほどの時間を感じる。


目が開く、思ったとおりに体は投げ出されていた。視界の半分は地面で、もう半分は晴れた空に埃だった地面だ。その中央に体を投げ出した様なβの姿とそこへ振りかざした大剣と共に踏み込むウィリアムの姿が見える。良かった、何とかなりそうだと思った次の瞬間、再び体に強い衝撃が走る。

「ガッ!?」

そして視界がグルグルと回って空と地面が交互に映り、その度に体の何処かが痛んだ。そのまま数回跳ねてようやく止まる頃には立ちあがるのも億劫な痛みと熱さが全身に這っていた。


「ルーク!」

少しばかりぼやけた視界と遠くなった耳にミラの焦ったような声が響く。そんな彼女に大丈夫だと誇示するように左手を上げようと思ったが、思ったより強く打ち付けたのか錆びた蝶番のように動きが鈍い。折れてはいないだろうがそれでも力が入り難い。


「ルーク、大丈夫!?」

すぐ傍まで走ってきた彼女に、何とか上げた手を枯れ葉のように振って返事する。それに今は自分の怪我よりも気になることがある。

「・・・アイツ。は、どうな・・った?」

何とか体を起こそうとして失敗。その瞬間にミラの手が自分の腕を掴んで持ち上げてくれる。どうやら肩を貸してくれるらしい。そのまま下半身は寝かせたままに自分が転がってきただろう方を見ればウィリアムが大剣を振りかざしたまま、地面に倒れ込んだβを注意深く見ていた。よく見れば先程より砂埃が立っている様にも見え、少し離れた所には彼の胴体だった部分と翼がバラバラになって散っていた。どうやらウィリアムが上手く決めてくれたらしい。溜息と共に体の重さが倍になって背に乗ったような感覚がした。


「もう大丈夫よ。ウィリアムがあの距離でしくじるななんてありえないもの。だから治療するわよ?」

「あぁ、頼む。ふぅ・・・アイツが仲間でよかった」

力が抜けて再び倒れ込む。暫くして背中からあたたかな感覚が広がる。ミラの魔法が体を治し始めたらしい。直ぐに治らないのはもどかしいが、普通に治すよりも遥かに速いのだから本当に優秀な主従だ。

「えぇ。なにせ帝国一の騎士だもの。例え、お母さまが用意した相手だろうと、その裏にいる人が用意した相手でも関係ないわ」

ミラの声には誇らしさが混じってた。少しばかりそれがザワザワと心の奥底を揺らすが気のせいと思い直す。


「・・・忌々し・・・イ。だが、お前たちが・・・我々か、ら・・・逃れる術など、なイ我が・・・ここに、来タ・・・事が・・・証明ダ。精々・・・足掻くが・・・いイ」

バチバチと切断された部分から紫電を放出させるβが絶え絶えな雰囲気で言葉を発する。その声音はとても作られた物とは思えないほどに感情的で、怒りが強く感じられた。しかし同時に彼の言葉にハッとさせられる。


「・・・そう言えば、アイツはどうやって俺たちを見つけたんだ?」

そう、今思えばβは真っすぐにこっちへやって来た。自分たちは一応とはいえずっと顔を隠しながらやってきたのだ。外から見ればお揃いの外套を着込んだ旅人でしかない。珍しいのは事実だが、いないわけではない。ましてや空から見つけた奴等全員攻撃して回る訳にも行かない筈だ。

「おい、どうやって吾輩たちを見つけた?」

ウィリアムが大剣を突きつけてβに問うが返ってくるのは嘲る様な嗤いだけだ。

「カカカカッ!怯えるが、いイ!お前・・・たちに、逃げ場等・・・な、イ!」

蠟燭の最後のように、絞りだされ言葉は絶望を綯交ぜにしたような予言だ。眉が寄ったのが分かる。期待はしていなかったがだからと言って最後っ屁の様なものを吐き出されるのは苛立たしい。体の痛みが少し減ってきたのもそれを加速させる。しかしそれを吐き出す前にβの体に異常が走る。


「むっ!?いかん!」

ウィリアムが少し焦った様な声を出し、こっちに駆け寄ってくる。それと同時にβの体から異常な紫電が決壊したダムのように漏れ出す。煙も凄まじい勢いで吐き出され、αが死んだ時の事が思い出される。


「滅びヨ!悲願よ、永遠なレ!」

βの狂ったような笑いと狂気混じりの歓喜の言葉が吐かれると共に彼を中心に白い光がドーム状に一気に膨れ上がって自分たちを呑み込もうとする。それをウィリアム越しに見ながら少し回復した体の全てを使って横に居たミラを抱え込んで地面に伏せた。プロトは近くにいない事を願う他ない。そして次の瞬間には破壊音が耳を劈いた。


「・・・ご無事ですか?」

轟音で揺さぶられた脳と耳が戻ってきた直後、ウィリアムの声が聞こえる。もっとも口調的には自分ではなく、ミラなのが分かる。

「・・・俺も心配してくれ。ミラ、大丈夫か?」

「えぇ・・・二人が庇ってくれたお陰で・・・ちょっと耳が痛いけど。プロトは、大丈夫なのかしら?」

「直ぐに。プロト殿!」

ウィリアムが屈んで壁のようになっていてくれたお陰で大した怪我はない。精々耳が痛いだけで済んだ。しかしプロトだけは一人離れていたから心配だ。何とか体を動かして目を周囲へ飛ばせば遠くで尻もちを着いた様な形で座り込むプロトが見えた。

「ぼ、ボクは大丈夫だよ~!」

ウィリアムの声が聞こえれば彼は直ぐに頭を振ってこちらを見つけると手を振ってくれた。どうやら怪我は無いらしい。どこか痛めた様な様子も無いだけに良かったと嘆息する。


「良かったわ、皆無事で」

ミラによる治療を受けて、何とか一人で立てるようになった後、ミラがポツリと呟く。

「そうだな。何とかなった。ウィリアムも助かったぜ。流石だな」

「フン、無茶しか出来ないお前と一緒にするな。プロト殿の支援は流石でしたな」

素直に褒めてやったのにウィリアムの言葉は棘がある。尤も嫌な感じもしないから苦笑を浮かべる他ない。まぁ、彼からすれば自分の評価は変わらないのだろう。

「で、でもあんまり役には立てなかったよ。殆ど二人のお陰だと思うけど・・・」

「そんな事ねぇよ!プロト、お前は凄い。勿論ミラもな。お陰でもう立てるし、皆の勝利さ」

「ふふ、そうね。本当に何とかなって良かったわ」

場に安堵が広がる。短い戦闘時間だったがそれとは裏腹に紙一重だったのも事実だ。ウィリアムがいなければ間違いなく一方的にやられていたし、全てに置いて運が良いとしかい言えない。これは間違いなく今後の課題だ。


「さて、喜ぶのも良いのですが・・・私たちの足取りが帝国に捕まれている、というのは問題です」

ウィリアムの言葉に場が再び締まる。確かにそうだ。これをどうにかしないと今後もかなりの苦労することは想像に容易い。とはいえだ。

「でも、どうしようも無くないか?何の手がかりもないぞ」

「そうねぇ・・・どうやって、私たちを見つけたのかしら?」

考えては見るが答えは思いつかない。足取りをつかれているとは思わなかっただけに厳しい事実だ。

「えぇ。なので今後の旅はより警戒が必要になります。そして私たちも強くならなければならないでしょう。失礼ながら、ミラ様も含まれます。勿論、このような事態をこの目で見た以上、私も粉骨砕身、御身をお守りいたしますが、それでも貴方が旅を続けられるのなら、必要かと」

「えぇ、勿論よ。それより、ウィリアム、貴方遂に決めてくれたの?」

「はい、どうやら今の帝国は本当に私の知らない何かが起こっているようですから。このまま連れ帰るのは決して良い方法では無さそうです。なので、今後は貴方の旅に正式に参列したく思います」

そう言いながらウィリアムがミラに膝を着く。何とも不吉な事があった後とはいえ、これは素直に有難い申し出だ。殆ど引き込めている様な状態だったがそれが絶対になったのはまた、別の意味がある。そんなウィリアムに対してミラも頷き、彼の肩に手を置く。

「ありがとう、誇り高き騎士、ウィリアム。貴方の忠誠に感謝を。この旅が終われば、私の全てで持って、貴方を元の地位に戻してみせましょう」

それは騎士の誓いだった。そしてここまでで何度か見たミラの誓い。今、自分たちはきちんと仲間になった。


「さっ!堅苦しいのも、難しい事も後にしましょう!どうせ、考えたって分からないもの。だから精一杯、やるべきことをやって、成したいことを目指しましょう!」

ミラはウィリアムの肩から手を離すと元々目指していた方に踏み出して振り返る。その顔に憂いはない。自分は騎士ではないけど、彼女がこの先もそう笑っていてくれれば良いなと改めて思った。

良ければ評価、ブクマ等してもらえれば幸いです。

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