表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
A new Era ~始まりのヒトと終末を告げるヒト~  作者: ラー
二章 ~ルークと迫りくる帝国の闇と実直の騎士~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

42/56

11話

ウィリアムの提案を受けて、そのまま人気の無い場所を目指して4人で連れ立って歩く。幸い、この周辺はフォード公爵の手が入っているから多少の事は誤魔化せる。それに自分では分からないが彼の手下もいる筈で、直接何かをしてくることは無いだろうが、外からの者に対しては干渉してくれるだろう。

「つっても、どこ行くかなぁ」

ウィリアムの要望を飲む形なら広く、人気が無く、最悪いくらか壊れてもいい場所が必要だ。しかし、ここは王都、アスケラの中心だ。そんな場所は滅多に無く、人が住んでいる場所が大半と言ってもいい。

「・・・仕方ありません、公爵に力を借ります」

ミラが渋々と言った雰囲気で口を開く。仕方がない、ウィリアムを監視する目が無いとは言えない以上、王都を出るわけには行かない。そこで監視が敵に加われば、ウィリアムとの約束を果たすのは互いに難しくなってしまう。自分たちにとってもここは分水嶺、邪魔はして欲しくない。

「やはり上位の家が手を貸していましたか」

「はい、それしか手はありませんでしたから」

ミラの言葉にウィリアムが反応する。どうやら推測はついていた様だ。確かに、ミラの交友関係くらい、知らない訳がないだろう。何せ帝都を初めて出たお姫様だ。会う人間の制限されていたに違いない。そう言う意味ではフォード公爵に助けの手紙を出せたのは奇跡に近い。

道を自然に歩く最中、ミラが何か手で合図するような仕草をする。すると暫くして前から二人の男が何か会話しながらゆっくりと歩いてくる。既に大通りからほど近い場所故に、人がいるのは変ではない。自分だけなら何も気にしなかっただろう二人が自分たちの近くを通り過ぎる時、ミラが何かを呟く。

「・・・・・」

そして何もなかったかのように二人と交差した後、今度は自分たちを追い抜かすようにフードを被った誰かが自分たちを追い越してから直ぐの場所で足を緩める。先程までのやり取りを見ているだけに、あれが案内してくれているのは良く分かった。

「・・・流石ですね。よく訓練されている」

ウィリアムがポツリと呟く。どうやら彼の目から見ても彼らの評価は悪くない様で、今のも自然に零れた感じだった。尤も、自分にはそんな事は分からないのでそうなのかと思う程度だ。

「ね、ねぇ・・・ルーク?本当に戦うの?」

前を行く二人を見ながら歩いているとプロトが自分の裾を引く。彼は意図的とはいえ、完全に巻き込んだ形だ。思えば最初に会った時から彼はずっとこちらの事情に巻き込まれっぱなしである。悪いと思う気持ちもあるが許してくれとも思ってしまう。

「・・・仕方ねぇよ。それ以外に事が進みそうに無かったからな。でもプロト、此処迄来てあれだが、俺は外れても良いと思うぜ。きっと無理強いはしないだろうから」

そう言いながらウィリアムの背を指さす。先程の会話の様子から、一番の標的は自分だ。プロトはその次、というかミラの言葉を信じきっていない彼からすれば見たことがなく、誤魔化しに使われた人、として見ているだろう。

「う、ううん。大丈夫、二人を見捨てる事はしないよ。でもあの人ってすっごく強いんでしょ?何か作戦とかあるの?」

「いや、ねぇ」

「無いの!?」

プロトが驚いた猫の様に飛び上がるがそんなモノはない。あったらもっと上手く事を運んだ。今も頭の中で必死にどうやってこの局面を乗り切るかで一杯一杯だ。もはや良い点は自前の武器は持っている程度だ。念の為と会合の場所に置いておいて良かった。


そうこうしている内に人気の無い、どこかの広い庭の様な場所に連れてこられた。周囲は背の高い木々が囲っていて、まさにと言わんばかりだ。というより歩いて来た方角から計算してフォード公爵のタウんハウスの近くだろうと言うことは推測がついた。

「ここで良いですね?」

ミラがウィリアムへそう問えば、彼は暫く周囲を見渡してから頷く。

「ええ、問題ありません。・・・最後に問いますが皇女様は」

「私もやります。今は彼らの仲間ですから」

ウィリアムの言葉を再び切った彼女はそのままこちらへ小走りに寄ってくる。

「・・・ごめんなさい。結局私では説得することは出来ませんでした。それにルークとプロトを戦わせる事にもなっちゃった・・・・」

「良いさ。元より難しい話なのは分かってたからな。だから気に病むなよ!」

「う、うん。ボクたちは大丈夫、だよ」

目の前までやってきたミラは端正な顔に影を落としていた。とはいえ、仕方がない事でもあった。だから彼女を責め立てる様な事は出来ない。

「それより、ミラも本当に一緒にやるのか?」

「はい・・・足手纏いかもだけど、もしかしたら、私がいることで少しでもウィリアムの動きが鈍れば、と思って」

「あぁ、成程な・・・でも、それで鈍る相手、なのか?」

既に用意が出来たのか、背負っていた大剣を杖のように地面に突き刺してこちらを待っているウィリアムを見る。明らかな戦力差があるはずだが、それでも一切の油断も無さそうに見えた。それどころかさっきの逃走で彼の身体能力がこっちを大きく上回っているのも良く分かっている。それだけに、そもそもミラが囮になるだとか、動揺を誘う様な作戦が立てられもしない、という可能性も極めて高かった。事実、ミラは難しそうな顔をしながら視線を反らしてしまった。


「ま、やるだけやろうぜ。どうせ逃げられないんだ。なら、本気でやり切った方がいいだろ?なんとなくやる、それだけは面白くない」

手に持った双刃剣を一つ、二つと回して肩に乗せる。そして眼前で待つウィリアムへと歩く。

「待たせたな。さっそくやろうぜ」

「・・・ふむ。来るがいい」

眼の前で指を差し、気をぶつけるが何のリアクションもない。眼の前に立つウィリアムは聳えたつ山の様にずっしりと、確かな出で立ちだ。そして彼の目が開かれると共に、全身へ津波にでも襲われたかと思う様な圧力が襲い来る。

目を開いただけ、それだけで足後ろへ二歩、下がった。尻もちを着かなかったのは奇跡だ。というより、あまりの衝撃に尻もちを着き損ねた。何なら、すぐさま尻尾を翻して逃げるべきだった。そんな弱気と絶対強者に対する本能的な恐怖が全身をのたうち回っていた。もはや後ろを確認する様な余裕もない。

肩の双刃剣が震える。奥歯がガタガタと鳴る音が嫌に響く。尻もちを着かなかったと思ったがもしかしたら着いていたのかも知れない。そう思うほどに力が抜けそうになる。

「ほう、只の盗人ではないか・・・だがそれだけだったな」

嫌にウィリアムの声が頭の中で響いた。しかしそれも当然だ、彼は既に眼の前にいた。結構な距離があったはずだ。歩いて数歩、三歩なら走る余裕もある距離だった様に見えた。しかし、そんな自分の感覚は全て意味が無かった。

やばい、不思議なものでとんでもない危機の中では世界がゆっくりに見えると聞いた事があったが今がまさにそれっだった。しかし、相手の動きに対して自分の体は鉛を詰められた様に動かなかった。そして次の瞬間、ウィリアムの大剣の横腹が自分の胴を薙ぎ払った。



「・・・が、あ・・・」

混濁した思考、寝起きよりも狭い視界に白い光が靄の様にかかる。何が起こったのか分からない。

「・・・!!?」

「・・・・・・!!!」

耳に何か聞こえた気がしたがそれが何なのか、さっぱりだった。そもそも体が少しも動かない。頬には冷たい感触がする。

「・・・・・!!」

まただ、誰かが自分を呼んでいる。体も揺さぶられている。しかし頭が回らない。なんだ、何なんだ。

「・・・・・、・・・・・・・」

一番近くで聞こえていた声とは違う、低い男の声がした。諭すような、そんな音色に思えた。

「・・・・・!!」

さっきから自分の近くにいた女の声だ。・・・泣いているのか?霞んで聞こえた。

「・・・!・・・・・!!」

また別の声だ。少年のようにも、少女の様にも聞こえる。ただ、自分の前に立っているらしい。

「・・・・・・・・、・・・・・、・・・・・」

男の声は出来の悪い子を宥めすかす様にも聞こえた。不思議と腹が立った。怒りが腹のそこから、ドロリと漏れ出す。同時に意識が戻り始めた。


「・・・ッグ、何が・・・」

「「ルーク!!」」

意識が戻ると共に、全身が焼けただれたような痛みが襲ってくる。それに奥歯を嚙みながら顔を上げれば仲間が自分を呼ぶ声がする。

「待ってて!今、治すから!」

すぐ横に居たのはミラだ。七色の瞳は赤く、目元も赤ぼったい。泣いているのかと、聞こうとして空気だけが漏れる。

「起きるか・・・」

正面にあるのはプロトの背中、しかし彼の声ではない。声はプロトの前に立つウィリアムのモノだ。

「く、来るなら来い!ボクが一歩も通さないぞ!」

プロトがそう言いながら杖を剣の様にウィリアムへと伸ばす。魔法を唱える暇もないと思ったのか、魔法の予兆も無い。そして、その勇ましさに反して杖の切っ先は震えている。しかし、そんな事は目に入らない。それよりも自分の知っているプロトが明らかな強敵に一歩も引かずに立ち向かっていた。

「・・・止めておけ。小僧が起きたとしても、敵いはしない。降参するがいい」

その全てを、無に返すような威容。ウィリアムは意識が無くなる前と何ら変りなどなかった。そして自分がアイツに吹っ飛ばされた事を思い出す。同時に、起き上がった際に湧いた怒りが、再び点る。

「は、はは、随分・・・余裕じゃないか」

自分を抑えようとするミラを押しのける。そして近くにあった双刃剣を杖に、全身を震わせながら立ち上がる。

「ルーク!まだ、」

何か言おうとしたミラの顔の前に手をやって黙らせた。不思議と全身が、相手の一発でボロボロだというのに、力が湧いてくるように感じられる。そんな自分を、酷く冷めた目でウィリアムは見つめる。

「・・・止めておけ。加減はしたが死ぬぞ」

「ウルセェよ」

彼の忠告も遮る。そして今なお、杖を向けるプロトに並ぶ。震えはもうなかった。

「悪い、プロト。少し寝てた」

「う、ううん。大丈夫なの?」

そう言うプロトの顔の前で手を振る。理由はさっぱり分からないが、全身の痛みに反して体は軽くなっていく。理由の分からない何かが今、自分を引っ張っていた。

「さて、悪かったな。でも、次はそうならないぜ。さ、続けよう」

最初と同じように肩に双刃剣を乗せて笑う、というか引き攣らせる。そんな自分を訝し気にウィリアムは見るが、暫く経っても自分が態度を替えない事に嘆息して武器を構えた。

「死んでも恨むな」

「バァカ。殺されたって死んでやるかよ」

馬鹿な大口を叩いた。そして今度は自分から力の限り踏み込んだ。

良ければ評価、ブクマ等してもらえれば幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ