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A new Era ~始まりのヒトと終末を告げるヒト~  作者: ラー
二章 ~ルークと迫りくる帝国の闇と実直の騎士~

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4話

今日は時間あるからもう一話、七時位に出す予定

招かれた城とも呼ぶべき屋敷、その一室でプロトと一緒に待たされる事になった。屋敷に入るところまではミラも一緒だったのだが、入口であの黒嘴(こくし)族にそれぞれ別けられてしまったのだ。とは言え、そこに敵意の様な物は感じられず、ミラも受け入れていたように見えた事もあって素直に指示に従った。

そしてミラと別れた後、自分たちはこれまた品の良いメイドたちに連れられて、まずは風呂に連れられた。ここでミラと別れた意味を悟り、そのまま案内されるがままになっていたら頼んでもないのに全身を洗われる事にまでなってしまった。「待ってくれ。自分で洗う」そう抗議したが受け入れられる事はなく、極めて業務的に押し流されるが儘に、徹底的に洗われてしまった。それはプロトも同様だったが彼は特に違和感のような物も覚えなかったようで、彼が色んな意味で浮世を離れた存在だったと思い出すに至った。

他の種族と違い、なんの特徴も持たない自分はかなり洗いやすかったようで、メイドたちの手腕が合わさってあっという間に生まれて初めてと言っても良いほどに磨かれ、着せられたのは劇で使うものよりも上等な衣服に身を包むことになった。煌びやかな物ではないが、それでも自分にはあまりにも不似合いに思え、げんなりとした顔を浮かべてしまった。しかしこの屋敷で一番身分の低いと思われる自分たちの言葉は何処にも届くとは思えず、諦めだけが心の中を占めていた。

「・・・ミラは大丈夫かなぁ?」

プロトの呟きが宙に浮かんで消える。座っている椅子は柔らかく、全身を優しく受け止めてくれているが、それが逆に座り心地の悪さを感じさせる。不思議と今は丸太が恋しかった。

「ま、悪い様にはされないだろう。多分俺たちと同じように身綺麗にしてるんだろうから」

辟易とはしているが身綺麗にする理由は良く分かる。まず、自分たちの様な者がフォード公爵に直接会うのはありえないと言ってもいい出来事だ。というよりいくらアジトで整えたと言っても所詮は平民目線、それも下位層の判断だ。この屋敷に踏み入れる最低基準を満たしていないのは当たり前だった。だから自分たちも衣類の様に丸洗いされたに違いなかったし、ミラに至っては本来の身分には一切不釣り合いな恰好だった。髪だってナイフでバッサリと切ってしまったのだ、それらを全て整えるには時間がかかる。それにフォード公爵の方にもきっと準備する時間が必要なはずで、その兼ね合いもあるだろう。貴族はとことん見栄え、というものが大事だとボスが言っていた。

「そっか」

プロトも納得して、浮いている足をバタバタと揺らす。彼は背が低い事もあって椅子に深く座ると足がかなり浮いてしまう。自分もそこまで背が高くはないが、そんな自分より頭一つプロトは背が低い。身綺麗にした彼は貴族の子供にも見えた。


それからまた、結構な時間が経った。遂にはウトウトしていた頃、扉の向こうからノックと男の声が聞こえる。

「失礼します。扉を開けてもよろしいでしょうか?」

品の良い低い声に目を瞬かせ、首を振って眠気を振り払う。そしてプロトの方を一度見てから扉の向こうへと返事をする。

「あぁ、良いぜ」

すると一つの軋みもなく扉が開かれて入って来たのは、入口でミラと話していた黒嘴族の男だった。

「ルーク様に、プロト様でお間違えないでしょうか?」

順番に顔を伺うようにしながら聞いてくる彼に頷いて答える。どうやらミラに名前などは聞いたようだ。今のも確認程度のものだろう。

「まずはフォード家へようこそいらっしゃいました。私はこの公爵家で筆頭執事を任されております、アルノーと申します。以後お見知りおきください。そしてミラ様をお連れしてくださった事、お礼を申し上げます」

そう言いながら彼は頭を軽く下げた。

「いやいや、俺たちは、つうか俺は、か。仕事だったしな。プロトは善意だけど・・・頭下げられることじゃないぜ」

なんだか自分よりも遥かに立場がある人間に頭を下げられると無性にソワソワしてしまう。それにミラを連れてきたのは頼まれたからだ。さらに言ってしまえば目の前にいる男が何か自分たちに頼んだ訳では無いのだから、代わりと言ってもこそばゆいものがある。

「いえ、貴方方がミラ様をお連れくださった事で当主様も喜びを露わにしておられました。ただ、申し訳ありませんが今暫くお待ちください。準備が終わりましたらメイドに案内させます。それでは失礼いたします。なにかあれば扉の前にメイドが待機しておりますのでお申し付けください」

「あ、あぁ分かったよ」

そう返事をすればアルノーはこれまた優雅な動きで扉の向こうへと消えていった。きっと忙しいだろうにそんな素振りは一切見せなかった。それこそ背で小さく畳まれた黒翼にも乱れは一切ない。

「・・・なんか凄いカッコ良かったね」

プロトが扉の向こうを見ながら零す。確かにアルノーは全身が良く磨かれた黒曜石の様に綺麗な毛で覆われており、長く尖った嘴は抜身の刀身の様にスッとしていた。執事という職業の事はよく知らないが上に立つ者の見栄えが大事、そういう意味では彼はかなり高得点だった。

それから再び時間が経った後、アルノーの言ったとおりにメイドがやってきて、その案内に従って屋敷の中を進む。屋敷の内部は思ったより飾り気がない。てっきり貴族の屋敷は皆、ジャラジャラと飾り付けているのだと思っていたが今歩いている廊下は時折花瓶や絵がある程度で、華美な所はあまり感じられない。尤もその花瓶一つとっても平民の給金いくら分かするのだろうとは思えた。プロトも興味深そうに首をキョロキョロと振っていた。


「ルーク様とプロト様をお連れしました」

前を歩いていたメイドが豪奢な扉の前で足を止めて、その前に居た門番らしき男たちに頭を下げる。それを見た門番たちは頷き、扉の向こうへノックした後、メイドが言った言葉を繰り返すように内へ告げた。

「入れてくれい」

中からはいくらか年老いた声がやや剽軽なメロデイで聞こえてきた。今のがフォード公爵なのだろうか、思わず小首を傾げる。そしてそんな疑問を抱えたままに扉が門番たちによって開かれて室内が見えた。

どうやらメイドたちは一緒に入るわけではないようで、頭を下げられた儘で固まっていた。どうしたものかと思ったがどうにも自分たちが動かなければならないようで、プロトと億劫な雰囲気のままに室内に入れば直ぐに扉が閉じられてしまった。

「よく来てくれたのぉ、ドープからお前さんの事も聞いたことがあるぞ。そっちの子はミラちゃんが言っていた子じゃな。ほれ、こっち来い」

部屋の中は外観と同じように打ちっぱなしで出来ているようだが家紋の施された布が貼り付けられていたり、純粋に飾りがあるお陰で寒々しさはない。足元も廊下より遥かに質の良い絨毯が敷かれているからか雲の上にいるような感じがした。そして目の前には一つの丸机が置いてあり、それを囲むようにがっしりとした椅子が並んでいた。

(この人がフォード公爵か)

部屋の主人、そう言った雰囲気を自然と出しながら扉から正面、尤も深い位置に座っていたのは一か所に緑色の煙を集めて貴族の服を纏わせた様な外見をした(ぜん)化煙(ばけむり)族の老人だった。今は椅子に座っている影響か、何処か丸っこい印象だ足のようなものが無く、煙そのものがチロチロとしているのもあるだろう。顔は好々爺と言わんばかりだが目だけは爛々と光っており、芯には小さな炎のような煌めきがジッとこちらを見ていた。尤も化煙、と付けられただけあって顔をある程度替えられる種族だ。こっちからの視点などあまり役に立たないだろう。年はある程度誤魔化しようがないと聞いたことがあるが本当なのかも怪しい。

「あ、ルークたちも来たんだね」

部屋の正面にいたフォード公爵に気が取られていたところにミラの声が聞こえて視線を向けるとそこにはドレスを着て、簡単に飾り付けられたミラがいた。

「ミラか・・・?」

「・・・?当たり前でしょ?」

目が丸くなっているのが自分でも分かるほどに開いてしまう。髪こそ短く、貴族っぽくは無いのだがそんな事が気にならない程に貴族然としたミラが座っていた。彼女が着ているドレスは彼女に併せた物ではないだろうに彼女のひけらかされた美貌がそれを無視させる。美女は何を着ても美女、というのは決して嘘ではないらしいと何処か他人事のように頭の中を流れていく。

「ホッホッホ、ミラちゃんは美人だからのぉ・・・」

フォード公爵の言葉も上手く呑み込めないほどにミラの姿に釘付けにされてしまった。

「ルーク?」

あまりにも硬直したせいかミラが立ちあがり、下から覗き込むように見上げてくる。そうすれば照明の明かりが彼女の薄く施された化粧で反射され、元々の白い肌と合わさって宝石が輝いているようにも見えた。今なら鉱夫がなんで危険な洞窟に鉱物を求めて潜るのか理解できそうだった。

「あ、あぁ・・・なんでもないぜ。いや!めっちゃくちゃ美人だったから驚いちまった!」

後ろにのけ反り、慌てて返事をする。最初に彼女の顔を見た時にも驚いたし、その後の旅の間も普通に見ていたが、しっかりと磨かれて化粧を施された彼女に驚いてしまった。これが彼女の今までの普通なら、そりゃ国を跨いで彼女の美貌が噂になると納得できた。

「そう?じゃぁ、ルークたちも座ったら?話もしたいしね」

ミラはそのまま元の場所へ戻っていく。それをフォード公爵の年より臭い笑い声が彩って居たが自分にはそれを気にする余裕は無く、プロトに裾を引っ張られる形で椅子へと腰かけることになった。


「さて、改めて名乗ろうかの、吾輩こそがフォード公爵である。ルークにプロトじゃったな、よくぞミラちゃんをここまで連れてきてくれた。流石はドープが選んだだけはある。感謝するぞ」

「い、いや、それほどでも・・・」

まだ上手くミラの衝撃から立ち直れないまま話が始まる。目の前にはミラが机越しに座っており、気になってしまうというのもあった。

「それでじゃ、ミラちゃんから現状は聞いておる。しかし改めて話をお前さんらからも聞きたくてな。幾つか聞いても良いかの?」

「・・・あぁ、うん。いいぜ、何が聞きたいんだ?・・・・聞きたいんですか?」

「ホッホ、好きに喋って良いぞ。ここはそう言う風にしてあるからの」

「そうか、なら・・・そうだな。よし、なんでも聞いてくれ」

そうしてなんとか衝撃から立ち直った後は、フォード公爵が口にする疑問、αのことや帝国とは関係のない自分達から見た帝国の様子、そしてプロト自身の事を続けざまに聞かれる事になった。


良ければ評価、ブクマ等してもらえれば幸いです。

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