表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
A new Era ~始まりのヒトと終末を告げるヒト~  作者: ラー
二章 ~ルークと迫りくる帝国の闇と実直の騎士~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

31/56

1話

「はぁ・・・ようやく見えた!」

深い木々を掻き分けた先、遂に当初目指していたアスケラ王国の姿を目にする。

「やっとだね・・・」

後ろからは着いてきたミラが疲弊を隠せない声で、しかし確かな喜び混じりに呟くのが聞こえた。

「あぁ、これで糞みたいな野宿生活ともおさらばだ!」

疲れ切ってはいるがゴールが見えると現金な物で活力が湧き出す。そして改めて振り返れば後ろの二人は酷い様相だった。

「ん?どうしたの、ルーク?」

プロトが首を傾げる。その際に体についていた木屑や乾いた泥が地面に落ちる。それはミラも同じでローブはボロボロ、もはやスラムの子供が着ていても違和感のない程には解れ、擦り切れている。とはいえ、それは自分も同じだろう、顔を拭ってみると手に新たな汚れが付いた。それに手に伝わる感触から、顔に新たな汚れを擦りつけたに過ぎない事もよく分かった。

「いや、まぁ・・・今は問題は無いんだけど、どっかで身綺麗にしないと流石に王国に入れるか怪しいかもな、ってね」

手を広げて、日光に晒された自分の姿を二人に見せる。きっと二人には野盗そのものに見える事間違いなしだ。

「あぁ・・・そう、だね。ちょっと、汚れすぎてるかな?」

ミラが苦笑しながら体を揺らす。どうやら言いたいことはよく伝わったようだ。

「ま、どっかで汚れを落とそう。ほら、行こうぜ」

アスケラ王国が見えたと言ってもその城壁が遠くに見えただけだ。まだ日がかかる。そしてここまでの過程を思い出しながら日の当たる場所へと二人を引っ張った。


時は戻って三人が墜落した頃まで戻る。何とか室内に戻る事が出来た三人だったが、飛空艇は内部の重要な場所が壊されたのか、酷い揺れと気持ちの悪い浮遊感を起こしていた。そのお陰でまるでミキサーにでもかけられたかのようにガクンガクンと全身が揺さぶられ、捕まっている手摺を必死に握りしめていた。

ルークは頭の中で操舵室が壊れたのだと直ぐ理解した。それだけならここまでの物にはならなかったかもしれないが、動力室も操舵室の近くにあったのだろうと推測して、そこまで壊されてしまったのだと思った。それ位の爆発が起こっても変ではないぐらいにαの魔法は常識外の力だったとルークの記憶に刻まれている。あれが暴走してしまったとすればその程度の予測は難しくない。それにいくら帝国軍の船だろうと外部ではなく、内部からの攻撃ではどうしようも無かっただろう。

そして遂に船は本格敵に墜落を始めたのか、大きな爆発音が進行方向の下から響くと共に、力が抜けてしまった人の様にガクンと、確かな揺れの後に地面へと墜落し始めた。

墜落していく飛空艇だったが内部の揺れと起こった事の割には緩やかに墜落していた。それこそ滑空とも呼べる様な落ち方で、ルークたちは知る由もないが帝国軍の技師が組みこんだ最高峰の技術のお陰だった。これはこの飛空艇が軍艦としての側面を持っていたが故の細工であり、万が一空から落とされるような事があった時に、中の兵士たちを少しでも生かす為の装置だった。当然、緊急装置なだけあって、一番被害を受けにくい部分に設置されてあり、そのお陰で今回のαの爆発にも巻き込まれずに済んだ。そして墜落を察知して起動した装置がその役割を果たしていた。

極めて不快感と緊張感のある墜落は当事者のルークたちが感じた時間以上にしっかりと時間を掛けてアスケラの国境を踏み越えた辺りで船の底を地面に滑らした。下には帝国で言う所の天然要塞の山の様な大森林が広がっており、アスケラ王国の盾の部分だった。この大森林はアスケラを囲うように広がっており、アスケラは飛空艇の技術で持ってこの森を越える事で繁栄と守りを両立させていた。そういう意味ではアスケラは帝国よりも飛空艇に絞れば一つ上の段階にいて、大国として世界に認識されていた。その森に墜落した飛空艇は暫く地面を滑り、スプーンで掬ったかのように森をいくらか削ってようやく止まった。

酷い目にあった三人ではあったが何とか打撲に怪我を収めて、外に出れば周囲と飛空艇は酷い有様であった。とはいえこれ自体は予想できたもの、幸い火の類は出ておらず、このまま無暗に森を突っ切る位ならばとその場でαとの戦いの傷を癒すことになった。ルークは全身が軋むような痛み、ミラは魔力が枯渇、唯一無事といっても言いプロトも何処か上の空だった。これでは流石に森は抜けられない。

そして一晩を墜落地点で過ごした後、朝日の中で船の中の無事な物を探した。あの船員達が夜の間に出てくることは無く、全員が死んでしまったのだろうとは推測が付き、ならば何か役に立ちそうな物を持っていこうという話になったからだ。

そして船を漁っているとあの村で積み込んだ樽が無数に転がりだしてきた。底の方に積まれてこそいたが、場所で言えば後ろの方にあった為に無事だったようだった。そして飛び出してきた影響で壊れた蓋からは中身が見えていた。しかし中に入っていたものは三人を驚愕させるものだった。

現れたのは先程のαとプロトの間くらいの見た目をした人形だった。人形と呼ぶのも動かない事からそう呼んだだけで詳しい事はルークには分からないかった。また、それを見たプロトは頭が真っ白になった様に固まってしまい、ミラは悔いるような険しい表情を浮かべた。

ルークは驚きを隠せない声でどういう事なのかと叫ぶ。それは心の底からの物で、普段のお調子者のような雰囲気は無かった。それに対してミラが覚悟を決めたように零れ落ちた人形に近付き、手を当て、喋り出した。

ミラが口にしたのは帝国が抱える野望、そしてミラが国を出ようとした理由そのものがこの人形たちにあると語った。

この人形たちは『魔道人形』と名付けられたもので、帝国の新しい戦力として極秘に生み出されたものだった。彼らは独自で意思を持ち、普通ならば限られた人間しか成れない魔法使いを戦力として増やす、という目的で生み出された。この計画そのものは何処から来たのかは不明で、帝国の技術を遥かに上回ったものであることも確実だった。そして突然降って湧いたような形で生まて極秘に進められてきたようだ。それからミラが気付いた時にはこのような形で量産されるに迄至っており、じわじわと湧き出す戦火の匂いを感じ取った事で、それを出来る限り早くに止めるため、或いは連合を組んで対抗するためにアガパンサス団に自身の誘拐を頼んだ、という経緯だった。

話を聞く限り、主導は勿論、皇后だがその後ろに誰かがいる様な雰囲気もある。それに技術の進み方が異常だというのもあって、ミラの話はルークも納得の行く話だった。あのαという存在は間違いなく既存の戦争を大きく替えてしまう。今回勝てたのも相手に問題があったからに過ぎない。それにそれを支える魔法師団なんとものがあれば他国は一気に潰されてしまう。空を単独で飛んでしまえるのも他国には対処は出来ないだろうと思えた。

そして話はプロトに及ぶ。これはミラも確信が今まで持てなかったようだが、αとの邂逅で確信に至った事があった。それはプロトが一番最初に作り出された個体、もしくは隊長格を作ろうとした段階で生み出された最初の一体なのではないか、ということだった。

これにはプロトが衝撃を受けた。唖然としたように自分を指さし、ミラの言葉を繰り返す。ルークは何かプロトへ声を掛けてやりたかったが何を言ったら良いのか分からなくなってしまった。

ミラの言葉から三人に沈黙が満ちてしまう。プロトは自分が周囲の人たちとまったく違って、争いの道具として生み出されたことに理解が追いつかないと言った感じで、ミラも痛ましい表情だ。そのまま全員が重い雰囲気の中、最初に声を出したのはルークだった。

ルークはここまでの旅の中でプロトを弟分の様に気に入っていた。そんな彼が襲ってきたαや船員たちのような存在と同じとはとても思えなかった。勿論その証明をすることは出来ない。それでもプロトが自分たちと同じように生きている存在だとプロトへと声を張り上げながら語った。そこにはその時、ルーク本人は自覚が無かったが自分自身の生まれが一切分からないという感傷も多分に含まれており、プロトと同じように何かの目的の為に生み出された存在、という予感を否定したいという思いがあった。兎に角、彼をそんなつまらない道具だとは到底ルークには思えなかった。

ルークがプロトへ語っているうちにミラもプロトへ衝撃的な事を告げてしまった事と自身の生まれた場所が行っていることについての謝罪をプロトへ告げ、ルークと共にプロトを励ました。最初は反応が鈍かったプロトだったがそれでも、この短い旅の中で僅かではあるだろうが確かに育まれた絆はプロトの固くなってしまった心を解した。

そうしてまだぎこちなくはあったが何とか集団として行動できる位の心持に全員が戻った後、三人は予定通りにアスケラを目指して大森林の中を突っ切る様に進んでここまで来たのだった。


「いやぁ、これで入れるかなぁ?」

ここまでの事を思い返しながら、身綺麗にした全身を見渡す。正規のルートでは無いために、アスケラの近くにある河川は遠く、身綺麗にするためにプロトの魔法で水を作り出してもらい、強引に汚れた衣類を濡らし、その間に焚き火を用意して簡単に洗濯を済ませた。ついでに食事も済ませてしまい、後は城門迄行ければ中に入るだけ、と言ってもいい状態だ。

「・・・・」

視線を焚き火の前で談笑するプロトとミラの方へ向ける。最初はぎこちなさが残っていたが、談笑する二人に蟠りの様なものは見られない。もっとも、二人とも何か悪いことをしたわけでもなければ、喧嘩をしたわけでもないのだ、いつもの様に戻るのは左程時間は掛からなかった。

(つっても、元通りって訳にも行かないよなぁ・・・)

例の話を聞いてから、時折プロトは思い更けるようになった。声を掛ければ普段の彼に戻ってくるが、事情を呑み込んで前を向く、というのはまだ難しそうに思えた。自分が何者なのか、それが分かった途端、新たな悩みが出てくるなんて思いもしなかった。これがもしかしたら自分も同様かも知れない、そう思えるだけにプロトの事情は他人事には到底思えなかった。

一転、ミラの方は大分持ち直したように思えた。最初はプロト同様に互いに気まずそうな雰囲気が漂ってはいたものの、彼女の使命を思えば彼のような存在をもう生み出さず、世界を平和の方向へ持っていく、というものだからか、より決意を固めた様にも見えた。そしてそんな彼女の意思に従うように、この森を抜ける旅の中で体も少しずつ強くなった。もう彼女は城の生活には戻れないかも知れない、そう思うほどに節々に変化があった。


「よし、それじゃ、後はアスケラの門を潜ろう。夜になると完全に封鎖されるから、それまでには、だな」

城壁が見えてから数日、もう目と鼻の先に迫ったアスケラの城門を前にして作戦会議とミラへの城門を通るための準備を済ませる。

「うん、そうだね。中に入れたらどうするの?」

「そうだなぁ・・・・ま、俺たちのアジトにご招待、かな」

アジトに行けば必要なものは全て揃うだろう。ミラの用事は、そこで改めて用意をしてからでいい。そう言えばスポンサー、というのを自分は聞いていない事を思い出す。

「そう言えばミラが会いたい人はどうすれば会えるんだ?」

「そこは街で聞けば大丈夫だと思うよ。後は私次第、かな」

ミラは少しだけ不安げに胸の辺りを握る。兎に角、彼女に任せる以外の選択は無さそうだ。

「じゃぁ、俺とプロトはついてくか。なにかあったら言ってくれよ」

そう言えばミラは頷く。

「プロト、行けるか?」

ミラと話している間、遠くの空を見るようにしていたプロトへ声を掛ける。表情は変わらないがそれでも、物憂げな雰囲気をよく纏うようになった。

「あ、ごめんね。ボゥとしちゃってた」

ハッとしたように頭を振るとプロトは駆け寄ってくる。こちらもやっぱり不安な感情を覚えるがそれでも問い詰めるようなマネは出来ない。

「いいさ。行くぜ!」

空気を入れ替えるように、敢えて元気な声を出して、足をアスケラの城門へと向けた。

良ければ評価、ブクマ等してもらえれば幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ