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A new Era  作者: ラー
3/6

3話

太陽が傾き、帝都を真っ赤に染め上げていく。影が伸び、道の至る所に設置された街灯の中で光結晶が砕かれ、夜の迫る帝都を光で照らしていく。これで真夜中、一般的な眠る時間まで光が点り、この明かりを頼りに住民たちは家へと帰っていく。しかし今日は自分たちのショーがあり、それを見に来なかったとしても街中は祭で騒ぐため、今日の帝都には夜がやって来ない。そして街灯が点るということは自分たちのショーが始まる、ということだった。

セイリオス帝国の中央広場にはアンガスを中心にした大道具仲間によって、いつもより豪華な舞台が作り上げられており、観客席含めて煌びやかに飾り付けられた装飾がヒラヒラと、集まった人々の熱気によって生まれた風で揺れている。外枠には大きな照明道具がいくつも取り付けられて、舞台の上は陽も落ちる間近だというのに日中よりも明るいと思えるほどだ。

「凄い人だなぁ」

舞台袖から観客側を見て思わず声をこぼす。ここまでの人間に見られるというのは当然初めての経験だ。それこそ巡ってきた地方の観客全員を集めても今日に届かないのではないか、そう思えるほどの人が集まって自分たちのショーを今か今かと待っていた。

「まだ増えるぜ。ほら、もっと端も見てみろ」

近くに寄ってきたアッシュが指さす方を見れば客席ではないところ、ドーム型の広場には中央を囲むように高さがある客席が置かれ、その前にもロープで区切られた立見席がある。どちらも人が犇めき、立ち見のほうなどは全員が少しでも前に行こうとしているのか常に蠢いている。そして客席のさらに後ろなどの席でないところにも立ち見の客がどんどん集まっているのが見えた。

「チケットは完売、運が悪かった奴はこっそり忍び入ってああいうところで見てるのさ。ま、俺たちも態々咎めないしな」

「そんな暇もないもんな。まぁ良いんじゃないか?観客なんて居ればいただけ良いし。精々おひねりでも飛ばしてくれればいい」

「そりゃそうだ。チケット代だけじゃ足りないからな」

今回は国の権力者に呼ばれた形だから依頼料が貰えているがそうでないならすべてが自腹になる。場所代に始まり、広告に衣装も当然金がかかる。それだけでなく普段の生活費や物の維持費、飛空艇の代金まで含めれば基本は赤字祭りと言ってもいい。だからチケットが完売したのならば多少の目こぼしをするのが基本だった。そしてだからこそ大金を払ってくれるスポンサーは大事で、その頼みは断れない。もっと小規模で馬車などのキャラバンならともかく自分たちのような飛空艇なら仕方がないことだった。

「いいか、俺たちはオープニングが終わったら帝国の城に忍び込む。それから最初は中で好きに動くために騎士の鎧を確保する。その後、ようやく姫様の場所に行くって形だ」

客席から目を外し、壁に凭れ掛かりながらアッシュとこの後の大仕事についての確認を始める。作戦自体は要所以外おおざっぱで中に入ってからのアドリブが求められる。流石に誘拐される姫様からの依頼でも当日の警備の場所や動きは知りようがない。そして建国祭で大賑わいの最中といっても警備が緩いわけではない。

「あぁ、道は頭に入ってる。でも警備の奴らがいるんだろ?そこはどうする?」

いくら姫様が部屋とその周りから人を排除したからと言って要所で誰も警備していないとは思い難い。そもそも一番居たい所から退かさたとしても次点の場所を厚く守るはずだ。それを搔い潜って辿り着くのは中々な困難に思えた。一応、脱出のほうについてはリスクさえ目を瞑れば当てはあるがそれも辿り着けなければ意味がない。

「まぁ、そこは見てみないとな・・・だが手が全くないってことはない。どれだけ優秀な騎士でも人だ。それも国が祭の中、いつもの場所で立たされてるんだ、隙はいつもよりある。ダメでもちょっと強引に行けばいい。なに、俺たちのせいだとばれて、取っ捕まるよりも速く帝国を離れれば良いからな」

そう言いながらアッシュが頭の後ろで手を組んでニヒルに笑う。

「大丈夫なのか、それ?流石にそこまで甘くない気もするけどな」

アッシュの言葉は理解できるが不安は募る。とはいえこの不安を消せるような策が頭に浮かぶはずもないため、反発はしない。

「お前の不安もよくわかる、でも流石に相手の警備の状況だけは分からん。こればっかりはハッタリ頼りだ。目的の姫様がこちらの味方、ってのが一番の武器としか言いようがない」

そう言われてしまっては仕方がない。無いものは無い、それが世界の真実だ。

「よし、じゃぁ、オープニングの後にまた集まるぞ」

そう言うとアッシュは自分の準備の為か裏手の方へと姿を消した。

「俺も準備するか」

時間ももうほとんどない、それこそ今にも観客の期待と歓声で舞台が壊れそうなほどだ。そんな観客席の方をチラリと眺めてから控室の方へ向かった。


「Ladies and Gentleman! 御待たせいたしました!今宵、皆様に御覧入れますは我らアガパンサス団による奇想天外、驚天動地の妙技!そして感奮興起の劇や歌の数々!どうぞ皆様方、大きな期待を胸に、ご観覧くださいませ!我ら一同、その期待、見事に答えて見せましょう。さぁさぁ、お待ちかね!一夜限りの幻想世界の始まりでございます!」

ボスがまるで成金の貴族のような恰好をしながら舞台の中央で観客に向けて声を張り上げ、前口上を述べる。そうすれば観客は待っていましたと言わんばかりに声を張り、舞台を揺らす。その熱量は空の果てまでも突き抜けてしまいそうだ。

舞台の端で待機していた楽団のドラムがスティックをリズムよく鳴らして合図を出せば演奏が始まり、それに呼応して舞台の幕が開けられる。そして裏方を除いた団員全員が舞台へと飛び出した。

舞台は360度すべてが見渡せる構造になっていて、舞台に上がった瞬間に光と観客の熱気すべてが全身に針のように突き刺さる。今までに感じたことのない大歓声は勢いよく走る自分の心も一気にその熱に飲み込む。今にも張り裂けそうな心臓の鼓動を受け流し、勢いに変えて練習通りに全員で踊る。

一度踊り始めてしまえば慣れた物で、幾度も繰り返すことで体へ染み込ませた踊りはこの大舞台でも一切迷うことなくステップを踏み、歓声でやや聞こえにくい演奏でも正解をなぞる様に全身を舞わせる。

それを見た観客の興奮はさらに上昇して舞台に集まる熱気が体をさらに温める、灼熱とも思える熱さの中、自分の動きのキレは増して、それでも仲間全体の調和を見事に合わせる。

頭の中は空っぽの様で、体の動きと連動しながら常に次を導く。不思議な感覚が脳を震わせた。このすべてが一体になった感覚が自分は好きだった。この瞬間だけは自分は孤独ではなく、この世界の仲間だと心の底から思えた。しかし、オープニングはあくまで前菜、観客の熱を更に高めたところで楽団の音に導かれて踊りも終わる。それから全員で一礼すれば万雷の拍手を送られ、それぞれに手を振り返して退場した。


「よし、ルーク行けるか?」

タオルで汗を拭っていると同様に身綺麗にしたアッシュが声をかけてくる。

「あぁ、もう行ける。物持ってくるよ」

オープニングをうまくやり切った興奮を抑えながら目的の荷が置いている場所へ駆け足で向かい、皇女のダミーを手にしてアッシュと2人、更に盛り上がっていく舞台を背に城の方へ小走りに向かう。

「いいか、まずは鎧だ。幸い下級騎士の鎧は大体一緒みたいだからな、さっさと調達するぞ」

舞台から離れ、薄暗い道で隠れながら小声で会話をする。自分たちの番まではそれなりにあるが無駄に出来るほどではない。誘拐は行って帰る、どちらも極めて時間が必要だ。

「でもどうやって?鎧なんか早々落ちてる物でもないだろ?」

鎧は騎士にとっては財産だ。これが無ければ話にならないのに購入も維持も基本は自己負担、簡単に手放すような物ではない。ましてや見た目はある程度統一感があっても何れも職人の一点ものなのだ。思い入れだってあるだろう。

「流石に、フルアーマーなんかは無いさ。そもそもそんなの城で着るバカなんかいねぇよ。簡易の胸当てにヘルム、後はブーツで十分だ。下っ端の警備ぐらいに見られれば良い。そっちのほうが移動しやすいしな。そこらの騎士から引っぺがして、酒でも突っ込んどけば見つかっても祭りにあてられた馬鹿だと思われるだろうさ」

そう言いながらアッシュは腰の革袋を軽くたたく。どうやらキツイ酒精のものを持ってきたらしい。

「なるほどな。まぁ、やってみるか」

そう言って視線を辺りに向ける。すると誂えたかのように2人組の騎士、それも動きやすそうな鎧を着こんだ見回りが気怠そうに歩いているのが見えた。

「早速来たな」

アッシュが悪い顔を浮かべて笑う。この顔だけで騎士にしょっ引かれても文句の言えない風貌だ。そして2人してスッと暗闇の中で立ち上がると足音を消し、周囲を警戒しながら騎士に近づく。

「いやぁ、俺もショー見たかったなぁ・・・」

「仕方がないだろ、じゃんけんで負けたんだ」

「でもやる気でねぇよ・・・・さっきから同じ負け犬しか会わねぇしよ」

どうやらこの騎士たちは警備の仕事を割り当てられた不幸な奴らだったようで愚痴が止まらない。注意は散漫で警戒心の欠片も感じられなかった。帝国ほどの大国でもその辺りは他の国とあまり変わらないらしい。

「よし、一瞬隙を作る。その間に後ろからガッと行くぞ」

即座に飛び掛かれる位置まで先回りして身を隠したのち、アッシュがそう言いながら手の中で石を弄ぶ。古典的だが音がすればそちらを見ざるを得ない。それに無言で頷き、その瞬間を待つ。

「はぁ、なんか良いことねぇかなぁ・・・」

特に愚痴を零していた騎士が大きな欠伸をした瞬間、アッシュが石を自分たちとはまったく別の方へと投げつける。するとうまい具合に草木を掠めて、小動物が歩いたかのような音が闇に響く。

「なんだぁ?」

「動物でもいるんじゃないか?」

騎士たちは一瞬だけビクリと肩を震わせると音がした方へと体ごと向ける。手は腰のショーソードにかかっており、腐っても騎士として仕事を熟す気はあったらしく、先ほどよりもいくらか空気が張り詰めた。しかし、それからなんの動きも無いことに互いに顔を見合わせ、片方の騎士が剣を抜いたまま明かりを片手に茂みに近づこうとする。その瞬間、彼らの背後からアッシュと共に飛び出す。

「あ?」

近くまで駆け寄ってしまえば流石に足音が聞こえてしまったのか茂みに近づいていない方の騎士が間抜けな顔でこちらへ振り向きかける。そこへ一発、後頭部に目掛けて飛び蹴りをかます。

「ゴォッ!?」

驚きと衝撃の痛みからか潰れた蛙のような声を出した騎士が前のめりに倒れる。下が地面なこともあって、騎士の声以外は大きな音は出さずに済んだ。あとはショーの歓声が音を誤魔化してくれる。アッシュのほうも同様に手刀を相手の延髄に打ち込んだらしく、やられた騎士は尻を突き出した間抜けな姿で突っ伏していた。

「おし、これで行けるな。引っぺがすぞ」

アッシュはそう言うと茂みに騎士を引っ張りこみ、手早く鎧を騎士から剝がしていく。同様に自分も倒した騎士を同じ茂みに引っ張り込んで鎧を剥ぎ取れば気絶した忠毛(ちゅうもう)族の騎士が現れた。

「あ、こいつ、くせぇ・・・おまけになんかヘルムが微妙に合わねぇ」

アッシュが剥がした鎧を着こみながら文句を口にする。しかしどうしようもない。

「・・・俺も、ブーツがなんかネチョネチョする・・・・かゆくなりそうだ」

げんなり、まともに洗ってないとしか思えないブーツは最悪の履き心地だ。おまけにやや小柄な自分には鎧がまったく合わない。限界まで絞ったうえで持ってきた道具たちを鎧の隙間に押し込んでようやくピッタリだった。

「チッ、仕方ねぇ。あんまり人に出会わないのを願うしかないな。・・・しっかり飲ませてやろう」

アッシュがそう言いながら腰の酒を騎士の口へ流し込む。哀れ、彼らは鎧を失ったうえで2日酔いと上司に怒られる事が確定した。しかしそんな事は知ったことではない。

「よし、さっさと行くぜ」

準備を終えて最低限の身なりを互いに確認しあった後、アッシュはそう言って城の方へ体向ける。幸い犠牲者が簡単に見つかったおかげで余裕はある。しかしゆったりとするほどの時間はない。

「俺が先に行く、ついてこい」

それに無言で頷き、ヘルムをやや深めに被って顔を隠した。万が一見慣れない顔で止められたら面倒だ。それなら合わないヘルムをした間抜けに思われるほうが遥かにマシだ。


城の中は帝国の豊かさを象徴するような作りだった。それこそ、ただの廊下であっても帝国の威厳と歴史の重みに満ちているように思えた。華美な飾りが有るわけではなく、白を基調とした壁に深紅のカーペットが敷かれ、等間隔に花瓶が置かれているだけなのだが『本物』とでも言えばいいのか、色一つ取っても品が良く、埃すら無いように見えた。また、カーペットは雑に自分たちが小走りで踏もうとも音一つせず、ただ柔らかく受け止めてくれる。

「こりゃ地図が無けりゃ到底無理だったな」

長い廊下といくつもの階段を上りながらアッシュがぼやく。城は自分たちのような侵入者の対策の為か、広いだけでなく酷く入り組んでおり、もし初見で皇女の部屋を探すとなったら軽く数日は掛かってしまいそうに思えた。また当然警戒中の騎士がおり、彼らに怪しまれないようにするのも一苦労だ。

「違いないな。でもそろそろじゃないか?」

記憶の中の地図で言えばもうそろそろ皇女の部屋に近くてもおかしくない。事実見かけた騎士の質が上がっているのが傍目に分かる。少なくとも自分たちが鎧を盗んだような者は1人もいない。全員が胸を張り、民衆が思うような騎士然とした姿だ。もはやサイズが合っていない事を咎められてもおかしくない場所に居るといってもいい。同じ城の中にも関わらず、どことなく品の良さが増し、華美ではない程度に絢爛になっている。それこそ、そこらの壺1つで平民なら半年は生活出来るのではないかと思えるほどだ。

「あぁ、そのはずだ・・・止まれ」

先行していたアッシュが廊下に突如現れた大きな両階段を覗き見るようにして止まる。それと同時に自分は後方へ視線を飛ばして安全確認をする。先程だいぶ怪しまれながらもアッシュの口八丁で潜り抜けたばかりだ。しかし隠れて監視されているようにも見えないために後方から今すぐにということは無さそうに思えた。

「ま、見張りは居るか・・・」

そうぼやくアッシュの視線の先を見てみれば両階段の下には騎士が2人、階段を通せんぼするように立っているのが見えた。

「あの階段を上って直ぐの部屋だったよな?どうするんだアッシュ?」

少なくとも無言で通り抜けられる雰囲気ではない。まず間違いなく誰何を問われてしまうし、装備の見た目から今までで一番格が上の階級の騎士に見えた。見つかれば最悪言い訳の余地もなく、強引に事を運ばれかねない。そもそもこの階に居るのも既に問題視されている状態だ。それで皇女の部屋に近い階段を通るのは無理難題と言ってもいい。

「そうだなぁ・・・流石に強引に行くのは目立つからなぁ・・・でもそれ以外も難しいか」

アッシュもここに来て手詰まりと言いたげな顔を浮かべる。その瞬間だった、階段の上からガチャガチャという鎧の擦れる音がした。

「誰か来たのか?」

音の正体が気になり、2人してそちらへ目線を向ければ音の主がゆったりとした歩みで階段を降りてきた。

降りてきたのは城の中で何故か鎧を完全に着こんでいる長身の金鬣(きんりょう)族の男だった。小金色の鬣がヘルムの隙間から棚引きながら歩みに併せて揺れており、鎧の上からでも分かるほどに大きく鍛え上げられた体は身長と相まって凄まじい威圧感を演出していた。背にはこれまた大ぶりな両手剣を背負っており、これから戦場に向かうのかと思ってしまうほどの迫力だ。

男は背後に2人の部下を連れており、その部下たちもまた明らかに力自慢と言った具合で少なくとも正面から戦ってしまえば赤子と大人ほどの差がありそうに見えた。

「帝国軍の二枚看板、ウィリアム騎士団長だ。流石にどうしようもないな」

アッシュが歯噛みしながら眉を顰める。成程、大物だと思ったがまさかの最上級だ。しかし素直に納得できる見た目だ。どうやら自分たちはここに来て面倒な運と鉢合わせしてしまったらしい。

「一旦引くか?」

幸い、逃げる事は難しくない。まだ見つかっていないのならば身軽な自分達だ、いくらでも逃走経路はある。そうでなくとも一旦引いて状況を様子見するのも悪くはない。なにせ捕まれば終わりだ。

「いや、もう少しだけ見てからだな。あれがどこに行くのかは知っておきたい」

そう言われれば確かにそうだ。あの男の所在地は確かに知っておかなければならない。そして再びウィリアムたちの行動を見ているとアッシュがヘルムを脱いで少しばかり萎びていた耳をピンと張る。

「・・・・・ふんふん」

視線の先では何やらウィリアムが警備の騎士たちと会話をしており、それに大して周囲の騎士たちは至極真面目な雰囲気でそれを聞いているように見えた。しかし不思議なことに、なんとなくではあるがウィリアムの表情は困っているような、あるいは少し疲れているように見えた。

「・・・どうやら姫さんはうまくやってくれたらしい。上の階に今、騎士は居ねぇ」

アッシュがそう呟くのを聞いて納得する。どうやらウィリアムは皇女の癇癪、演技だがそれに巻き込まれたようだった。本来なら皇女を1人にするなどありえないがそれでも忠言すら跳ね除けられてしまってはどうしようもなく、体調不良で見たかったものも見られなくなったが故の癇癪と見たらしいことをアッシュ伝手に聞く。暫く放っておけばそれも収まるとして周囲をひっそり固めることで対処することにしたらしく、そのために警備の手筈を改めて整えている、とのことだった。

「なら、今が最後のチャンスか」

「あぁ、タイミングを見計らったら覚悟を決めていくぞ」

流石に潜むように警備を固められればそうそう簡単には抜けない。ならば相手が準備を整える瞬間を狙う他ない。そう会話をする頃には向こうも会議が終わったのか解散の気配が漂っていた。

「よし、なら騎士団長様が離れて少ししたら馬鹿の振りをして俺が気を引く。その隙にお前は物陰から階段を上ってくれ。強引だが正面からはどうしようも無さそうだ。そしたら後はお前に任せる。無事に逃げて来いよ」

「あぁ、任せてくれ」

この手の陽動はアッシュが非常にうまい。その隙に身軽な自分が姫さんの部屋に行き、外から脱出する、それが作戦として決まった。この脱出方法は想定済みのために道具も持ち合わせている。そしてウィリアムたちが離れていくのをジッと2人で見つめた。


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