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A new Era ~始まりのヒトと終末を告げるヒト~  作者: ラー
一章 〜ルークと帝国の姫君〜

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28話

「わぁぁぁ!!!ルーク、ミラ!見てみて、凄いよ!」

積み込みも終わり、警戒の甲斐なく何の出来事も無いままに飛空艇は村から飛び立った。飛び立つ時特有の胃がひっくり返りそうな浮遊感は一瞬で、大きなプロペラ音と共に地から離れた飛空艇はゆっくりと高度を上げていく。風は少なく、船の縁もそれなりに高い事もあってか、体への負荷は甲板にいても少ない。とはいえ、不安なのは変わらないので全員の腰には命綱がカラビナと一緒に着けられて、その範囲での自由が許されていた。

「はしゃぎすぎると飛んじまうぞ。それにもっと高くなるぜ」

目の前で飛び跳ねながら喜びを全身で表すプロトを苦笑いで見守る。とはいえ、空からの景色など、普通に生きていれば一生見ることはない。それを思えばプロトに口うるさく小言を言うのも憚られた。命綱も着いている為に安全も確保はされている。

「お城から見る景色とも随分違うのね」

そんなプロトの横ではミラが興味深げに遠くを見ていた。彼女も船にいる間はずっと寝ていたか、或いは逃亡中だったためにこうして空からの景色を見るのは初めてだ。

「そうなのか?まぁ、もう城よりは高いもんなぁ・・・それに何も無いしな」

「えぇ。勿論、お城の上から見える帝都の街並みも好きだったけど・・・何処までも、果てのない景色っていうのも・・・うん」

しみじみと、ミラは遠くを見る。そのまま何処か遠くに行ってしまいそうな、或いは思いつめるような表情が何処か気になった。


それから、飛び立った村が豆粒の様に小さく見えるようになってから帝国の飛空艇は前へ、アスケラの方へと進路を取る。此処からは暫く空の上だ。アクシデントが有ればその限りではないが、まさかこんな軍艦と書いてありそうな船を攻撃するような者はいない。仮に警戒している者がいても攻撃を躊躇うだろう。

「あれ?なんか魔力が流れてる?」

ずっと遠くを見てはしゃいでいたプロトだったが、時間が経って流石に気が逸れたのか素っ頓狂な声を出して船の側面を見るように縁から少しだけ身を乗り出す。

「おい、危ないぞ」

びっくりして彼の後襟を引っ張れば、それに驚いた勢いで思ったよりプロトの体が後ろに流れて二人してよろめく。

「わ、わ、わ・・・っと」

「ふぅ。悪い、大丈夫か?」

直ぐに手を離して背中を直接支えてやればプロトの足元も直ぐに落ち着く。

「あ、ごめんね。ちょっと気になっちゃって」

「突然身を乗り出すのは不安になるから勘弁してくれよな。で、何が気になったんだ?」

そう問えばプロトは再び船の縁に近付いて手招きをする。

「ほら、この船の側面なんだけど・・・魔力が流れてるんだ。なんの効果が有るのかはわかんないけど・・・」

「そうなのか?・・・俺にはまったく、だな」

「ん・・・私も、良くは・・・」

プロトが言うには船の側面に魔力が流れているようだ。しかしまったくその手の物の才が無い自分では分からない。そして魔法が使えるミラでも分からないとなると何かしらの高度な技術が使われている可能性がある。

「うん。なんだろう・・・船の周り全部を覆ってるみたい」

「そんな規模でか・・・そりゃ、ずっとか?」

「うん。ずっとだね」

顎に手をやって考える。自分にもアガパンサス団にも魔法に詳しい者がいない事もあって、確かな事はさっぱりだが船に直接何かしらの魔法を掛けるような事をアガパンサス団の船ではしたことがない。そもそも船が航行する間ずっと魔法を行使するのは不可能だ。魔法は短時間で打ち切り、というのが常識で火球を作って放つことは出来ても、炎の壁を作り続けて守りとする様な事は出来ない。だから国の守りは物理的に塀を建てたり、穴を掘る。そんな長時間維持させる事は道具を使ったって無理だろう。似たような物には光結晶の街灯が有るが、アレは光と魔力を蓄える性質があって、それを定期的に交換しながら使いまわしているだけだ。それと魔法を行使し続けるのは訳が違う。つまり、プロトの言う通りなら一般には出回っていない特殊な魔法技術が使われていることに他ならない。それもミラの様に魔法が使えるだけでは分からない様に出来ている、というおまけつきだ。

「・・・今は置いておこう。別にこっちに危害を加えてくる訳じゃないんだろ?」

「うん。そんな感じはしないかなぁ・・・あれだよ、鎧みたいな?ミラは何か聞いたこと無いの?」

プロトが首を傾げる。まぁ、自滅するような事はしないだろうし、となれば彼の言う通り、鎧説が濃厚だ。それに気が付かれないように細工されているとすれば、態々聞きに行って警戒されてしまえばここまでの苦労が無になってしまう。それにこの船ではあの喋らない奴らしかまだ見ていない。きっと聞いても何も返ってはこないだろう。しかしミラの知識は気にはなる。

「・・・ごめんなさい。私は軍事とは離れた所に居たから。船は見たことが有るけど・・・」

ミラは力なく首を振る。まぁ、彼女は守られる立場であって守る人間ではない。そもそも武器として初めて握ったのはきっとこの前に訓練で使った木の棒だ。指示を出す立場でも無いだろうことを思えば知らないのは当然だった。

「いやいや、気にすることないぜ。俺なんて何も分かんないからなぁ」

「ボ、ボクも、ちょっと気になっただけだから!」

「ふふ、別に気にして無いわよ。それよりちょっと体冷えて来ちゃったから中に入らない?」

そう言われれば確かに風が冷たくもなってきた。長く此処に居れば風邪をひくかもしれない。

「そうだな。悪いけどプロトもそれでいいか?」

「うん。十分に見たからいいよ」

プロトが素直に頷き、それから三人で紐を辿って船内に戻った。不安はあるが数日は船の中、何も起こらない事を祈るほか無かった。


船に乗った翌日、パチリと目が覚めてベッドから起き上がる。

「・・・二人は、まだ寝てるか」

同室で寝ている二人はまだ夢の中のようだ。今日はまだ船の中で生活しなければならない事を思えば起こす事もない。プロトに至っては決まった時間で起きてくる。半面ミラはやや朝が苦手そうだ。適応能力は高いが皇女として生活してきた癖なのだろう、起こされるまでは中々起きてこない。

(どうするか)

二人には一人で行動しない様に言い含めたが目が冴え切ってしまった。このまま横になるのは退屈に感じられてしまう。

「ま、いっか」

昨日軽く三人で歩いた感じでは船内に危険は無さそうだった。騎士のような者の影もなく、全員が同じように深いフードで顔を隠した奴しかいない。おまけに全然口を開かず、船員同士でも会話はしていない。一応身振り手振りで合図を送り合う事は有るが、兎に角声は聞くことが無かった。

コミュニケーションは取れないがそれでも頼めば色々してくれる。水も出してくれるし、船の案内もしてくれた。けしてこちらを詮索はしないし、行動にも移さない。その結果、こちらも彼らと最低限だけ関わって船旅を過ごすと決めた。これなら自分ぐらいなら多少は一人で行動しても大丈夫に思えた。


身支度を整えてこっそりと廊下に出る。一応机には外に出たことを書いておいた。これで戻るのが遅れても先に起きるだろうプロトが慌てずに済むだろう。

「誰もいないか」

廊下に顔だけ出して周りを見る。昨日の感じで言えば自分たち以外に客はいない。他には船員しかおらず、その人数も極めて少ない。これだけの規模の船を少人数で回せるのは腕が良いのか、船が優れているのか、或いは両方かと言った感じだ。

閑散とした廊下の床は軋み等当然せず、硬い床を叩く自分の足音が船の起動音に混じって聞こえるだけだ。

「見張りも全然いないな」

暫くブラブラと歩いてみるが誰とも遭遇しない。他にも生活感が一切感じられない。まるでモデルルームのような雰囲気がずっと船を支配していた。

行く当てもなく、船の底へと歩いていくと次第に例の船員の姿が映る様になった。とは言ってもこちらへ興味を示すような事はない。只擦れ違うだけだ。また、基本は入って欲しくなさそうな扉の前に身じろぎ一つせずに突っ立っているぐらいだ。それがなんとも怪しく、不気味に見える。まるでそういう置物の様に感じられ、人らしさを彼らには感じられない。

(まぁ、そういう種族なのかな?)

自分が知らないだけで特定の事が得意な種族を帝国が囲って利用している、なんて事もあるだろう。少数民族はそういった事が多々ある。何かに特化した能力を持っていて、普通には生きていくのが難しい場合はそう言った取り決めを国として交わして生活を守ってもらうというわけだ。彼らの行動で推測できるのは喋れない、そして我慢強いだろうか。一見何とでもなりそうにも見えるが数が少なくて喋れないのであれば確かに困難だろう。勿論まだ見えていない欠点も有るはずだ。


「ここは、物置かな?」

最深部にほど近い場所まで下りてきた。最深部と言っても飛空艇であることからそこまで深さはない。荷物を積むこともあって、深すぎるのは大変だからだろう。特に武器や兵器は重さが馬鹿にならない。そうなれば縦よりも横に伸ばすほうが懸命だ。それに軍艦ならどうせ広い場所を確保してからしか大地に着陸をしないことを思えば尚の事だ。

「見張りは、居ないのか?」

物置なんてこの船の事を思えば一番居そうに思えたが入口には誰も居ない。ならばと中に踏み入ってみる。

「暗いな・・・明かりは?」

中は見渡せない位には暗く、やや埃っぽい。鼻の辺りに手をやりながら扉周りを手探りすると取っ掛かりが手にあたる。

「うぇ・・・これで見えるな」

吸ってしまった埃に咽ながら明るくなった室内を見るとあの村で積んでいた樽と同じものが並べられていた。船の容量が広いだけに所せましとは言わないがやっぱりかなり量の樽があった。

「何を運んでんだ?」

興味が鎌首を擡げる。とはいっても簡単に樽を開くのも難しい。とりあえず樽を揺すってみると見た目よりも軽い重さが伝わってくる。

「水でもない・・・でも食いもんでもないか?」

一点、それなりに大きな物が詰められている様な感触がする。ただ、ぴったりというわけでも無さそうで布の様な物が擦れる音と木材のような軽い音が樽にぶつかる音が聞こえる。

「もしかして全部一緒か?」

場所を替えて幾つか同じように揺らしてみるが全部が同じ感触だ。となれば補給ではなく、何かをあそこで加工して詰めている説が濃厚になってきた。しかしそれが何なのかが想像つかない。工場もない、ただっ広い農地があった訳でもなく、技術者が集まっているようにも思えなかったあの村で何が行われているのか、疑問は膨らむばかりだ。

「うぅ~ん・・・開けてみるかぁ?」

割れば分かるがそれを隠し通せるかは分からない。しかし膨らんだ興味が遂に飛び出しそうになった時、少し遠くから足音が聞こえてきた。

「不味いか」

意識を樽から反らす。そのまま急いで明かりを消しに入口まで戻って、樽の影に隠れる。

(見張りが来たのか?)

やってきたのは既に見慣れた船員だ。それも二人組らしく、廊下の明かりによって照らされた入口付近に影が二つ伸びた。

船員たちはそのまま物置の明かりを点けると奥に入ってくる。予想通り見張りか、或いは物品の確認に来たのか、周囲をキョロキョロと見ている。そして自分が最初に触っていた樽のあたりでビタリと足を止める。

(いやぁ・・・不味いなぁ・・・不味いけどサッサと此処出ないほうが不味そうだ)

樽を多少なりとも動かしたことで違和感があったのか船員たちはその周囲を揃ってジッと見つめる。

(興味もあるけど・・・流石に今逃げないと駄目だな)

もしかしたら樽を開けたりしてチェックしたりするかもしれないがそれを見ていたら間違いなく見つかるだろう。入口も一つしかなく、自分に馴染みの無いところでこれ以上の危険を受け入れる訳には行かない。影から出て、ソロソロと開けっ放しの出口へと向かう。

(そのまま頼むぜ)

未だに背をこちらに向けたまま、樽を触りだした船員を横目に何とか部屋の外に出ることに成功した。


「ふぅ・・・何とかなったな。」

廊下に出てからは早足で物置から離れ、上の階に戻ってから息を吐いて肩の力を抜く。思わぬ苦労をしたせいで疲れてしまった。

「腹も減ったし、二人も起きただろうし早く部屋に戻ろう・・・」

思わず時間を掛けてしまったせいで待たせているに違いない。後ろ髪は引かれるがそれを振り切って部屋に戻った。

良ければ評価、ブクマ等してもらえれば幸いです。

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