表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
A new Era ~始まりのヒトと終末を告げるヒト~  作者: ラー
一章 〜ルークと帝国の姫君〜

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/56

18話

僻地の村での奇妙な出会いは当初とは打って変わって意外な程に穏やかに過ぎていった。プロトが真面目で少しばかり臆病な所はあっても純朴な性格だったこともあってか、帝都から逃げなくてはならないというプレッシャーを抱えている自分たちにとって接しやすい相手だった。何より、絶対と言っても良いほどに軍の関係者でも無ければ帝国出身とも言い難く、彼がスラムに気が付いたら居たとなれば当然帝国に住民として登録されてはいない。そんな彼の経緯は極めて都合がいい。そして穏やかな夜はあっという間に明け、再び旅立ちの朝がやってきた。

「ラミィ、足はどう?」

朝食を摂り終え、再び足の包帯等を取り替えた後、少し歩き回る彼女に調子を聞く。

「はい、痛みはありますが、これなら歩けるかと」

足で地面を確認するように踏んでいた彼女の言葉を聞きながら、流石に一晩でどうにかなるものではないかと頷く。

「ま、でも第一目標はすぐそこだからな。何とかなるさ」

山に隠されている抜け道、洞窟がある場所はもう目と鼻の先だ。もしかしたら僻地のこの村は何かあった際に寄れる様に作られたのかも知れないと今更ながら思う。他国からは山の影響で踏み入られにくく、帝国全体の領地を浮かべれば変な場所にあるこの村、なのに最低限生活が出来るほどに物が揃っている。村人たちは一切その事は知らされてはいないのだろうが可能性としてはありえそうだった。

「プロト、お前はどうすんだ?」

一通りの準備が終わり、一晩過ごした相手、プロトに声を掛ける。彼も今日、自分たちと同じようにこの村を出ていかなければならない。

「どうしよう、かな?」

プロトはしょげたように首を傾げる。やっぱり行く当ては無いらしい。まぁ、事故の様に帝都を出ることになった彼がそうなるのも仕方がない。幸運なのは彼自身に食事がいらないから直ぐに死ぬことは無いだろう、ということだけだ。事実、昨晩こっちが食事をしていても彼は水すら摂らなかった。それはトイレすらも同様だ。ただ、睡眠は必要なのか上から垂らした絵具のような目を閉じて、閉じるで合っているのかは不明だが顔を完全に黒い球体のようなつるりとした面だけにして藁に背中を預けて眠っていた。

「・・・ルーク」

しょげたプロトを見ていると背後から袖を軽く引っ張られる。振り向けばミラが下から覗き込むようにこちらを見ており、珍しくフードの中が薄っすらと見えていた。

「どうかした?」

彼女に合わせて小声で聞き返す。そうすれば少しだけ躊躇う雰囲気ながら、決意したような表情で口を開く。

「彼を、プロトさんを一緒に連れていくことは出来ませんか?」

「プロトを?」

彼女のお願いは直ぐに頷けるものではない。今の状況は人数が増えるだけではすまないからだ。何より、プロト自身は良い奴ではあるがこの旅の仲間として信用できるかは完全に別のものだ。

「はい。少しばかり、思うところがあります。本来なら彼は帝都で過ごせていたでしょう。それに彼の言う通りなら、魔法も多少は使える様ですから旅では私とは比べ物にならない位、活躍も出来るかと・・・勿論、懸念も分かるのですが・・・・それに、もしかしたら」

最後の方は顔を背けられ、ただでさえ小声だったのがより小さくなってしまい、聞き取れなかった。しかし彼女がプロトを仲間にしたがっているのは良く分かった。

「んん・・・でもなぁ・・・」

チラリとプロトのほうへ視線を向ける。彼はまだしょげたように肩を落としており、ジワリと申し訳なさのようなものが湧く。実際、ミラの言うことは良く分かるのだ。どれだけ努力しても、彼女が力になるのはまだ先の事だ。その間は当然自分が彼女の分も力を使わなければならない。特に夜番や戦闘、どれをとっても苦労する事は分かり切っていた。この先の抜け道の洞窟も魔物が居ないとは思えない。何せ山だ、森と同じで魔物の住処の代表格なのだから期待は出来ないだろう。そこに睡眠こそ必要だが飯の負担が無く、魔法が使える人材が増えるのはメリットの方に天秤が傾いても変ではない。

「お願いします」

更に彼女が頭を下げてくる。ただ、不思議とお願いしている立場なのに有無を言わさない雰囲気が混じっているのは彼女が皇族だからだろうか。思わず呻いてしまう。

「あぁ!わかったわかった!聞くだけな、聞くだけ!」

頭を両手で搔き毟る。しかし駄目だ、と言うことは出来なかった。強く突っぱねる理由が少なく、手が足りない事が大きすぎたのが原因だ。まぁ、一晩話してプロトを気に入った事もある。今は当初感じていた違和感もなく、なんとなく仲間意識もあった。

「プロト!」

「ウワァ!ど、どうしたの?」

気を入れ直すように声を張ったら思いのほか大きくなってしまい、呼んだプロトを驚かしてしまった。

「悪い。それでプロト、行く当てが無いんだろ?なら、俺たちと一緒に来ないか?これから俺たちはアスケラ王国まで行くんだけど、それでも良いなら、どうだ?」

「え!?」

突然の提案にプロトはその特徴的な目を瞬かせる。驚いたままだったからかその場で更に少しだけ浮いたようにも見える。

「あぁ。つっても嫌なら別にいんだが・・・こっちも色々事情があるからな。どうする?」

「ボ、ボクは・・・ルークたちがそう言ってくれるなら全然、良いんだけど・・・でも、ボクはのろまだし、何か凄いことが出来る訳じゃないよ?」

プロトは何処か自信なさげにもじもじと体を動かす。

「構わないさ。それに昨日も言ってたけど魔法もちょっとは使えるんだろ?十分さ!」

実際、魔法が使えるのは大きなメリットだ。流石にアンガスのような制御が怪しい状態ではなく、明確に魔法が使える、とするのは大きな違いがある。

魔法を出す、というだけなら出来るのは結構いる。但しそれを制御し、意味のある物として使える存在、『魔法使い』というのは極僅かだ。剣士だって同じだ。剣が振れることと、剣を使える事は違う。そして剣士よりも魔法使いのほうが持って生まれた才能の壁で絶対数が少なく、市井で探しても見つからない程だ。なにせ、もし魔法使いとしての才能が見つかれば国が引き上げて教育し、しかるべきところに配置してしまう。要は凄まじく価値がある存在、という認識で合っている。そういう意味では彼が此処に居るのは結構、変な話だ。

「でも、ボクは下級の物しか出来ないよ?」

「何言ってんだ。俺は魔法なんか何もできないさ」

尚も謙遜するプロトに胸を張る様にして言いのける。そうすれば暫く悩むように頭を揺らしていたが最終的には納得したようにプロトが頷く。

「それじゃぁ、ルークたちに着いていこうかな・・・どうせ行く場所もないし」

「よっしゃぁ!なら改めてよろしくな、プロト!」

やや後ろ向きな言葉ではあるが着いてくると決めてくれた彼に手を差し出す。そうすれば一瞬首を傾げはしたもののハッとしたように顔を上げて手を握ってくれた。彼の手は皮の手袋越しだったがやや固さが際立った不思議な感触だった。


「これからどう行くの?」

村を出て、山の方に向かいながらプロトが疑問を口にする。彼の背には村を出る際に返された杖があった。杖はまるで棍棒のようで、片方が丸みを帯びて太くなっており、逆に行くにつれて細くなっていた。

「正面の山のどこかにある洞窟さ。そこからアスケラの方に向かう。プロトは帝都から出たことが無いんだよな?」

「うん、初めてだよ」

「そうか、ならまぁ・・・着いて来てくれればいいさ。荷物をちょっと持ってくれるだけでもいいしな。ラミィも大丈夫?」

「はい。休んだお陰で今日は少し足が軽いです」

ミラの声は幾分明るい。完ぺきとは言えないがやはり靴を脱いで藁とは言え、土ではない所で寝られたのは大きい。

「?ラミィも旅は初めてなの?」

「はい・・・実は私も帝都から出るのは初めてなのです」

「あ、そうなんだ」

そんな軽い会話をしながら歩いていれば時間はあっという間に過ぎていく。プロトはどうやら肉体的な疲労もあまりしないようで歩く時間が長くなってきてもへばる様な様子はない。反対にミラは少しずつ疲労が蓄積しているようだった。流石にそう簡単に積み重ねた疲れが無くなる事はない。しかし、へばってしまう前に山の麓には辿り着く事が出来た。


「よし、何とか山には着いたな」

額の汗を拭い、背の荷物を下ろす。此処で一度休んでから近くにあるはずの洞窟を探す事になる。陽はまだ高く、運が良ければ今日中に見つかるだろう。

「二人とも、一旦休もう。食事も摂ってくれ、ってプロトはいらないんだったな」

「うん、ボクは座るだけで良いよ」

軽い足取りと声のプロトはそのまま木を背に座り込む。

「ラミィ、ほら」

下ろした荷物からミラに食事、ドライフルーツの類に豆類を固めた携帯食料を渡す。そこまでおいしい物ではないが基本的な種族の胃を満たせて栄養も十分だ。ただ水が無ければ大変なことになるそれをミラは受け取って口に運ぶ。もう彼女もこの食事に大分慣れたのか、ゆっくりではあるがしっかりと食べているのを見てから自分の口にも放り込んでいく。


「ソレって、どんな感じなの?」

プロトが指を差す。

「これか・・・これは豆とか、いろんなもんを粉で煮固めた奴なんだ。正直おいしくはない。だけど腹が膨れるのと調理の手間がいらないから重宝してる。正直これを食わないでいられるお前が羨ましい」

長期保存を念頭に置いたせいで水分が完全に抜け、その際に味も抜けて虚無の味がする。おまけにパサパサとしており、良いところは栄養と腹持ちだけだ。正直果物だけで何とかなるならしたいぐらいだ。

「ふーん、ボクは一度も食べた事が無いからなぁ・・・」

「まぁ、それもなんだかなぁって思いはするよな」

おいしい物を食べた時の幸福感は最高だ。正直あれを上回る喜びは無いに等しい。あれを知らないのは不幸と言いきってもいい位だ。ただ、最初から食べる必要が無い体だとその感覚も理解は出来ないだろうとは思う。一長一短だ。

「・・・でもそうなるとプロトさんはどうやって生きているんでしょうね」

ポツリとミラが呟く。確かに、生きているなら何かを消耗している、ということだ。チラリとプロトの方を見れば小首を傾げている。

「う~ん・・・睡眠じゃないかなぁ・・・ボクは一定時間は絶対に寝ないと動けないんだ。起き続けているとどんどん体が重くなって倒れちゃうから」

「あぁ、それは・・・ありえそうだなぁ。まぁ今、問題ないなら良いんじゃないか?」

そう言ってミラの方を見ると彼女は考えるように顎に手をやっていた。

「どうかした?」

「あ、いえ・・・やっぱり、そうかもしれませんね」

また、後半は小声で何も聞こえはしなかった。しかし再び食べ始めた彼女を止めて聞き返す程の事には思えなかった。そして食事が終わり、遂に本題の洞窟を探し始めた。

良ければ評価、ブクマ等してもらえれば幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ