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A new Era ~始まりのヒトと終末を告げるヒト~  作者: ラー
一章 〜ルークと帝国の姫君〜

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17話

「ここだ。荷物は後で持ってきてやる」

「分かったよ。先人は中にいるのか?」

「あぁ、そのはずだ」

案内してくれた村人はそう言うと自分たちの荷物を持って別の場所へと向かってしまう。彼らの心情を思えば仕方のない事だがこちらも不安が無いわけではない。屋根の有る所で寝られるのは良いことだがここを出るまでは警戒は十分にする必要があるだろう。

「さて、どんな奴がいるやら」

「追っ手では無いとは思うのですが・・・」

ミラが不安げな声を出す。その気持ちは良く分かるがここで突然手のひらを返す様な真似は出来ない。あまりにも怪しすぎる。加えてミラが今でこそ気丈な様子を見せてるが限界なのは間違いない。どこかで休む必要があるのなら今が良かった。

「ま、大丈夫さ。じゃぁいくぜ」

そうミラに声を掛けると扉をノックする。乾いた木の音が小さく響いて遅れて声が返ってくる。

「はーい」

明るい、少年とも少女とも取れそうな声質だ。少なくとも帝国軍のような雰囲気は感じられない。そして扉が開かれる。

「?えっと、ボクに何か用でしょうか?」

出てきた人影は自分より頭一つ分程度小さい。少しばかり汚れた黒いローブを着込んでおり、頭には大振りな三角帽子を被っていて、その先端は少し折れ曲がっていた。典型的な、魔法使いがその身分を大袈裟に伝える為の服装、そんな印象を抱く組み合わせだ。そして一番の特徴、忘れもしない。真っ黒で木のような質感をした顔に上から白の絵具を垂らしたような目がこちらを見ていた。

「あ、あの・・・」

唖然としてしまう。帝都を歩いている時に自分を追い越していったスラム住まいと思わしき少年?だ。同時にあの時感じた違和感が胸の奥をくすぐる。この至近距離で見ても彼の種族は分からない。かなり失礼な考えなのだろうがまるで作り物の、それこそ人形が勝手に動いている様な違和感だ。なぜ、こんな事を感じてしまうのかは分からないが言葉が出てこない。

「えっと・・・あの、あの・・・・」

「ルーク?」

「あ、ああ、悪い悪い」

突然動きが止まってしまった事を不思議に思ったのか、不安げなミラの声が背後から聞こえて意識が深い所から戻ってくる。目の前にいる彼も表情のようなものは一切無いはずなのに、迷子の子供のような雰囲気が伝わって来た。どうやら違和感を抱いているのは自分だけの様で、それなら今の態度は良いことじゃない。一度軽く頭を振って、出てきた彼に向き合う。あの時の彼なら絶対と言っても良いほどに追っ手ではないのだ、であればむしろ、良い出会いだ。

「ごめんごめん。実はお前を帝都で見たことがあったんだ。だから少し驚いちゃってさ。確か出歯族の子と建国祭の時にいなかったか?」

「あ、うん。そうだけど・・・あれ、お兄さんもどっかで見た様な・・・」

やはりあの時の彼だったようだ。それと同時に彼も何か記憶を探るように小首を傾げる。もしかしたら立ち見でショーを見ていた可能性がある。であれば外でその会話はしたくない。

「あぁ、悪いんだけど俺たちも今日、ここに泊めて貰うことになってさ。連れが怪我してるんだ。だからまずは中に入れてくれないか?」

「あ、そうなの?じゃぁ、いらっしゃい、てのも変だね」

そう言いながら彼は扉の前からどいて自分たちを迎えててくれる。この頃には彼への違和感が薄まってきた。しこりはあるが態々掘り起こす事はしない。


「ふぅ。あぁ、そうだ、俺はルーク。で、こっちが連れのラミィだ。よろしくな」

中に入り、積み上げられた藁を背にして腰を落ち着けた後、彼に向けて自己紹介をする。色々したいことはあるが荷物が返ってこないと何も出来ない。それまでは一旦、休憩だ。

「あ、ボクはプロトです」

そう言いながらペコリとでも音がついてそうなお辞儀をプロトがすれば三角帽子の先端も同じようにお辞儀をした。今のところは悪い要素は見当たらない。むしろ純朴少年と言った雰囲気で、スラムの住人のような擦れた感じも受けない。そういう意味では逆に怪しさがあるが彼の雰囲気がそれを否定させる。やっぱり不思議だ。

「俺たちは2人で旅しててさ、本当ならここに寄る予定は無かったんだけど魔物に襲われてさ。一旦休憩、ってわけ。お前はなんで此処に?」

あえて、ある程度情報を出してしまうことで余計なツッコミや疑いを持たせない。まして、相手に確信も無いのに態々ショーに出てただとか、逃げてきた、なんて事は言わない。ついでに先程の村人から聞いた情報が合っているのか確認する。

「ボクは帝都に居たんだけどショーが終わった後に帝都が凄く騒がしくなったでしょ?それにびっくりしてたら帝都中で大捕り物が始まったって聞いたんだ。ボクは身分を証明できないから友達と大慌てで騎士に捕まらないように逃げてたんだけど・・・疲れて樽の中で寝てたら積み荷だったのかな?帝都から出ちゃってたんだ」

プロトは何処か落ち込んだように口を開く。どうやら帝都から外に出たのは事故だったようだ。

「へぇ・・・そりゃ、運が悪かったな。まぁ、捕まらなかったのは運が良いのかもな」

態々自分たちのせいですまない、とは言わない。悪いとは思うが自分たちの都合が優先だ。

「うん。それからどうしようと思ってたんだけど夜に魔物に襲われたみたいで、乗ってた馬車が倒れた時に樽からこっそり抜け出したのは良いんだけど、帝都がどっちかも分からないし、どうしようと思ってたら此処に辿り着いたんだ」

そう言いながら更に落ち込んだように膝を抱え込んでしまう。

「そうかぁ・・・でも良く、ここまで来れたなぁ、見た感じ何も持ってないけど水とかはどうしてんだ?」

気まずい。空気を替えようと視線を動かせば彼の荷物がまったくない。勿論逃げ回って来たのだから大荷物でないのは理解できるが必要な物すら無さそうなのは変だ。もし、自分たちと同じように預けて返ってきてないのならば自分たちも無視できない。

「あ、ボクは何も持ってないよ。あるのは杖ぐらいで。でもそっちは預かってもらってるよ」

「・・・それでどうやって旅をしてきたのですか?」

杖以外何も持っていないというプロトの言葉にミラが思わずといった感じで口を開く。だが彼女の疑問は最もだ。

「?・・・あ、ボクは食事とかが必要無いんです。だから杖だけなんだ」

「・・・そんな事があるのか?お前の種族って何なんだ?」

プロトの返答は完全に予想外だ。飲み食いする必要のない種族というのは聞いたことがない。全身が火でできている族であっても自然の火を摂取するし、そのために活火山付近で生活を強いられている。彼にそういった特性は見られない。

「・・・ボクはなんの種族か分からないんだ。気が付いたら帝都のスラムに居たから」

そう言いながらプロトは首を振る。どうやらまた変な所を踏みぬいたようだがそんな事が気にならない位には彼の「種族がわからない」という言葉に目を開く。

「そ、そうか・・・まぁ、俺もなんの種族か、なんて分からないからさ!」

慰める訳ではないが無意識にそう言葉が出る。しかし効果はあったのかプロトが不思議そうに頭を上げる。

「ルークもそうなの?」

「あぁ、俺も同族には会ったことがない。おまけに気づいたらスラムに居たのも一緒だ」

不思議な共通点。そして現金なことに、今まで彼に感じていた違和感のようなものは胸の奥で一気に解けて消える。もはや新しい兄弟に出会ったかのような喜びにも似た何かがあった。


それから心が軽くなって二人で、時々ミラも交えながら談笑していると扉がノックされる。

「おい、荷物だ」

返事をすれば先程の門番が自分の荷物を手に小屋へと入ってきた。

「あぁ、ありがとう。問題無かっただろ?」

受け取りながらそう聞けば男は縦に首を振る。

「そうだな。一通り見たが旅の物しかなかった。だが武器は此処を出るまでは預かる。それともう日が完全に落ちる。騒ぐなよ」

そう言われ扉の向こうに目をやれば星が見えるのではないかと思えるほど陽が落ちていた。思ったよりも談笑していたようだ。

「あぁ、分かったよ。そうだ、これから治療とかしたいんだけど水って分けてもらえたりしないか?」

水結晶は持っているがアレは出来れば旅の水分に回したい。けして数にゆとりが有るわけではないし、無くなったら必然的に水を求めながら歩くことになってしまう。それは探す側の帝国に有利だ。

「水か・・・村の中央に井戸がある。桶一杯までなら良いだろう」

少し考える様に顎に手をやった彼はそう口を開く。この村の近辺に川の様な物は無かった。ならば貴重ではあるが井戸があると踏んでいたが当たったようだ。更に桶一杯も貰えるのは破格と言ってもいい。

「ありがとう。それじゃ、ラミィ、俺は一回水を汲んでくるから荷物から治療道具を出しておいてくれ」

その言葉にラミィは頷き、渡した荷物を開き始める。そして自分は男の案内で井戸へと向かった。

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