銀の砂
ひとつやり残したことがあった。
どうしても思い出せないけど、とても大切なこと。思い出そうとしても、ぷかぷかと泡状になって消えてゆく。
もう、生きることは諦めていた。でも、思い出すことはどうしても諦められなかった。吸盤みたいに貼り付いて、ずっとずっと泳いでる。
何がしたかったんだろう。なんで思い出せないんだろう。
白く輝く太陽は、干からびさせるかの如く輝いていた。
干からびる…干からびる…?
何かが釣り糸に引っかかったような気がする。干からびる…太陽…陸地…
瞬間、鯨の潮吹きの勢いで頭の中を激流が走る。
辺りを見回す。ざらざらとした茶色い砂。その奥にそびえ立つ岩壁。
そうだ、そうだ。
私は、あの陸の向こうへ行きたかったのだ。
べちん、と力無く跳ね、太陽に笑われながら、岩壁に睨まれながら、海に看取られながら、
一粒の砂になった。