【BL】ひねくれ者が告白するまで
あ、あったかい、と思ったら、それは離れていった。
先ほどまで重なっていた二つの影は離ればなれになり、その間に流れた風が、少し濡れた二人の唇をひんやりと冷やす。
少年とも青年とも言い難い、どっちつかずな男子が二人。少し背の低い眼鏡をかけた方が、呆けた顔で相手を見つめている。
「アホ面さらしてんじゃねーよ、ばかが」
「え」
それは果たしてアホなの? バカなの? どっちなの?
そんなどうでもいい疑問が、眼鏡男子の頭の中を占める。頭の片隅ではそんなことはどうでもいいんだろうけど、とは思うものの、今の彼にはそれが最大の課題のように思えて。
だから、少し傾けられていた首が、更に角度を付けた。
「は、間抜け」
嬉々として、そして面白がるように貶してくる相手。そこには負の感情しか見つけられなかった。
冷えた三白眼の瞳が、徐々に状況を飲み込みつつある眼鏡越しの垂れた瞳をじっと見ていた。それは捕食者が甚振るような眼差しだった。
先ほどまでの唇の暖かさはもう微塵もなく、あるのは恥ずかしさだけだった。そして今目の前にいる人物は恐ろしい。自分はこの人と何も関係がなかったはずだ。同級生ということ以外。つるむグループさえ違う。それでも思わず自分の唇に手が伸びる。顔を赤くするべきなのか、青くするべきなのか、わからなかった。
「あ、紫色か」
「あぁ?」
「いや、ごめんなさい」
自分を射抜く視線が怖くて思わず顔をそらした。居心地が悪い。もう何でもいいから早くこの場から立ち去りたい。のに。
「好きだ」
「え?」
思わず顔を上げた。でももう相手は背を向けて向こうに走って行ってしまっていて、辛うじて見れたのは茜色に輝く金髪が揺れる様だけだった。




