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それはブラックコーヒーのよう

「道之は真面目なやつでしたよ」

そう話してくれたのは、菅原さんの同僚で第一発見者でもある小林裕哉さんだった。

「だから道之が逮捕されたって聞いたとき、正直信じられなかったですね。まさかあいつがって」

小林さんはそこで一旦言葉を切って、何かを話すべきかどうか迷っているような表情を見せた。

「ちょっとこれは、僕が言ったことは内緒にして欲しいんですけど…」

「わかりました」

「信じますよ?…でその、実は道之パワハラを受けていて。パワハラを受けてるのは道之だけじゃなくて他のみんなもそうなんですけど。道之の場合は一段と激しくて、ストレスが溜まってたんじゃないかな、って」

「それが今回の犯行に繋がった、と…?」

「いやぁ、だいぶ溜まってたとは思いますけど、もしそれが爆発したとして人を殺したりするのかなぁ。…あ、すいません。もう営業先に行かなきゃいけないんでこの辺で」

「ご協力ありがとうございました」

私たちは小林さんに礼をして、次の場所へと向かった。


「今忙しんだが」

明らかに左手でペンをくるくると回しながらイライラした態度を見せているのは、先ほどお話を伺った小林さんと容疑者の菅原さんの上司、小宮山栄治こみやまえいじだ。

ガラの悪そうな態度にドスの効いた低い声。まさにパワハラ上司の特徴を凝縮したような人だ。

「確かにパワハラしてそうな人ですね…」

そう私は師匠の耳元で囁いた。

「なんか言ったか?」

「いいえ!」

思わず私は大きな声で叫んでしまった。一気に視線が私に集まってくるのを感じる。

「すみません…」

「ったく。で、要件は?」

狼狽している私に変わって、師匠がパワハラ上司に切り掛かる。

「菅原さんについて、聞かせてくれませんか?」

「チッ、やっぱりあいつのことか。今うちはあいつの件で多数のクレーム処理に回されてるんだ。まったく、いい迷惑だ」

「パワハラをしていたと聞きました」

師匠が単刀直入にそう言うと、小宮山さんは自分の部下たちをキッと睨んだ。

「…誰に聞いたんだ」

「それは言えません。そういう約束ですので」

「ふん。パワハラなんてしとらんよ。ただこいつらの仕事があまりにも緩いからケツを叩いてやってるだけだ」

小宮山さんは不貞腐れているが、どこかそわそわしているようにも見える。…何か隠しているのか?

「聞きたいことはそれだけか?」

「では、一つだけ。小宮山さんのご両親はどんな仕事をしてらっしゃるのでしょうか?」

「米農家だが…それが?」

小宮山さんは質問の意図がわからないようで戸惑った表情を見せた。

「聞きたかったことは以上です。お忙しいところありがとうございました」

「あ、あぁ」


私たちは最後に、容疑者である菅原さんに面会した。

「私は彼女を殺してなんかいません」

菅原さんはすぐに犯行を否認した。

「藤原さんとはどういう関係ですか?」

「夏芽とは、小さい頃からの幼馴染です。でも、高校を卒業してからはほとんど連絡はとってなくて…でも、事件の日突然夏芽から久しぶりに連絡が来たんです。そうしたら、今日の夜私の神社に来てほしい。とだけ言われて、私は言われたとおりに神社へ向かいました。でも私が着いたときにはもう…」

夏芽さんとの関係は公一さんから聞いたとおりだが、事件のあった日に夏芽さんから連絡があったのは初耳だ。それに、菅原さんの話が正しいなら、菅原さんは小林さんよりも先に藤原さんの遺体を発見したことになる。

「ということは、菅原さんは小林さんよりも先に藤原さんの遺体を発見していたんですよね?どうしてその時点で警察に通報しなかったんですか?」

「それは…」

菅原さんはそれだけ呟くと口を閉ざしてしまった。

その後、なにを質問しても菅原さんはなに一つ答えることなく、面会時間の20分を過ぎてしまった。

「あんまり大した結果は得られませんでしたね…」

私は勾留所からの帰り道で師匠と今日得た情報について話していた。

「今日面会した様子だけで言うなら、菅原さんが犯人であるかのように映るわね。もしくはそう映るよう仕向けているのか…」

「誰かを庇っているということですか?」

「その可能性もありそうね」

「菅原さんが自ら罪を被るような人物…」

「でも、まだ菅原さんが誰かを庇っていると決まったわけじゃないわ。他にも可能性はまだあるから、それを虱潰しにするためにも今度は被害者である藤原さんについて調査しましょうか」


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