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閉鎖病棟より、愛をこめて。  作者: 雨季日向
閉鎖病棟二ヶ月目
24/26

——みんなのアイドルCさん

 病棟のマスコット的な存在のCさんという患者さんがいた。

 

 Cさんは天真爛漫な女性で、とっても大きな声と正直すぎる物言いが特徴だ。

 私の中ではアイドルのような癒される存在で、Cさんの元気な声が聞こえてくると

「あ! 今日もCさん元気そう!」

と笑顔になれる、心のビタミンだった。

 他の多くの、というかほとんどの患者さんと看護師さんは()()()眉間に皺を寄せていることが多かったが……


 でも、Cさんがよく着ていたTシャツの背面には

『THANK YOU FOR LOVING ME!!(私を愛してくれてありがとう!!)』

と書いてあったのだから、みんなにとっての完璧で究極のアイドルだったに違いない。


 Cさんにはお気に入りの看護師さんがいて、いつも

「ねーねーRくん!!」

と下の名前で呼んでいた。




 このRくんもRくんでなかなかに個性的な看護師さんで、よく私のバイタルチェックの担当になることが多かったのだが、とにかく何も考えていない軽い男だった。


 私が落ち込んで病室で泣いている時、Rくんが巡視で気づいてくれて、その日の担当ということもあり、30分以上、話し相手になってくれた。


「まあでも、雨季さんまだ若いッスから、何とでもなりますよ」

「……(Rくん)さん、おいくつですか?」

「22ッス……」

 年下じゃねーか。


 それで2コそいつとはかなり打ち解けて、お互いの好きな漫画や愚痴を聞いて談笑していたのだが、2コ下は急に

「てか今何時ッスか?」

と目の前に置いてあった私のスマホを当たり前のように触り、

「やべー! 申し送りに遅刻だ! まあでも雨季さんの話聞いてたから仕事のうちッスもんね! いやー、ありがとうございました」

と、颯爽と出ていった。


 それがきっかけで、彼はすれ違いざまに「うッス」と挨拶してきたり、バイタルチェックでも

「何か困ってることありますか? まあーなさそうッスね、俺また来るんで、何でも言ってください! じゃ、失礼しまーす」

と打ち解けてるのか雑なのか分からないが楽しいやつだった。




 Cさんに話は戻り、とにかく『2コ下』が大好きな彼女は他の男性看護師などアウトオブ眼中で、よく通りすがりの男性看護師に「Rくん!」と呼びかけては「Rくんじゃないよー」とあしらわれていた。


 そして、彼女の記録には毎日のように2コ下の名前が出てくるほど、四六時中ずーっと彼に夢中で、彼女が他の患者と話している(一方的に話していただけのような気もするが)のを聞く限り、勝手に結婚したことになっていて、薬を飲むときの名前確認でも2コ下の苗字を名乗って看護師たちを混乱させていた。

 私は「ご結婚おめでとうございます」と2コ下をいじるいいネタをもらえて、2人の()()を心底嬉しく思った。




 そんなCさんのエピソードで私のお気に入りは、Rくん……かと思いきや、シンキングとの会話を盗み見た時の様子。


 恐らくCさんがシンキングに無理なお願いをして、それはできないと優しく諭されていたのだが、急にCさんが

「それカツラ?」

とシンキングの頭を指差した。


「カツラじゃないよ地毛だよ、引っ張ってみる?」

「(触って)パリパリー!」


 私は遠くで苦笑いした。

 Cさんの無邪気さはもちろん微笑ましいのだが……

 「引っ張ってみる?」ってなに? パリパリなの?

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