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閉鎖病棟より、愛をこめて。  作者: 雨季日向
閉鎖病棟二ヶ月目
19/26

8.ほんの少しの進歩

 病棟での生活も2ヶ月目に入り、友人もできて表情も明るくなってくると、治療にも進展が出てくる。


 抗うつ薬の処方が最大量に増えた。

 その副作用か、薬が増えて2、3日は常にモスキートーンを聞かされているような状態で、思考が鈍ってとにかく不快だった。


 また、生活リズムも固まってきて、朝は睡眠導入剤が切れると午前4時には目が覚めてしまうようになり、その後は何度寝ても30分おきには起きてしまう。

 これを安定と言っていいのかは分からないが、とりあえずリズムとしては定まっているため、そのうち明るくなるまで寝直すことも諦めた。

 その結果として、暇つぶしに『早朝筋トレ女』と化すのだが……




 この頃のいちばんの悩みは、無限に我慢してしまうこと、だった。

 

 溜め込みすぎて泣き出してしまう前に頓服(抗不安)薬を飲んだ方がいいのは理解しているけれど、

「こんなことで飲んでいいのか? 薬に頼りすぎて依存しちゃわない? いちいち頼んで迷惑だと思われない?」

と考え始めると止まらなくなり、そのうち

「頓服を飲むことすら言い出せない私って……」

と無限自責モードに入る。


 せめて頓服を飲む基準のようなものが知れないものかと(この考え方の時点で真面目すぎモードが炸裂しているのだが)、看護師さんに尋ねてみたら

「頓服は飲みたいタイミングで飲むものですよ」

とサラッと返されてしまい、じゃあ私は一生飲めないことになりそうだなと感じた。


 入院初期から個人的に信頼していたポイズンに、他の看護師さんにそう言われて余計に分からなくなったことも含めて相談し、

「無限に我慢をしてしまうから、はたから見ていて頓服を飲んだ方がよさそうだと感じたら飲むように促してほしい」

とお願いしてみた。


 私にとっては、『付き合ってください!』と放課後の体育館裏でプラトニックラブな告白をするくらいには勇気を出してのお願いだった。


 ポイ(ポイズン)は

「そうなんですね、分かりました。なるべく様子を見るように共有しておきます」

と事務的な素っ気ない感じで応じていたが、後日、診察時に自分のカルテを覗き見たらポイの署名で

『他の患者の怒鳴り声が苦手だが、本人は我慢して言い出せないことが多いので様子を見るようにする』

とメモ書きが添えられていて、心の底から感動した。




 但し、周りに頼るだけでなく自分でも改善しようと奮闘するのが超絶自責マンこと私なので、少しでもヤバそうだと感じたら自分から頓服を頼むように心がけた。


 最初こそ、罪悪感に押しつぶされそうになりながら、ナースステーションをノックして出てきた看護師さんに「ひぃぃお忙しい中ごめんなさい怒らないでぇぇ!」と念じながらではあったが、ある時ポイが出てきて対応してくれた際に

「自分で言い出せるようになってきましたね」

と言ってくれた。


 基本的に頓服を飲む時点で状態がよろしくはないのだが、その肯定的な言葉に救われた。

 苦しい時は薬に頼っていいんだ。

 少しずつだけど自分から頼れるようになってきている。




 ポイはいつも表情が固くて冷たい人だと思われがちだったが、私の中では頼みの綱てきな存在だった。

 しかし、この信頼が後にトンデモ恥ずかし事件に繋がってゆく……

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