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閉鎖病棟より、愛をこめて。  作者: 雨季日向
閉鎖病棟一ヶ月目
13/26

5.スマホ解禁!

 入院して3週間と少し、やっとスマホの使用許可が降りた。


 担当医や症状によって対応はまちまちなのだが、私の場合、前職の関係からSNSにフラッシュバックの要因になりかねない情報が多そうで慎重になっていた。

 しかし、“女神” こと担当の看護師さんが根気強く担当医にアピールしてくれていたおかげで許可にこぎつけた。


 早速、親に届けてもらい、友人・知人への連絡や各種SNSのチェックを行った。


 友人が初産を無事に終えたことを確認できたし、スマホが使えるようになったと告げたらすぐに泣いて電話してくれた知人もいた。


 SNSでは、フラッシュバックのトリガーになりそうなアカウントは予めミュートにするなど自分でも対策をとって取り乱すことはなかったが、自分が病棟ここで止まっている間にも社会は動き続けていると痛感した。

 辞めた会社に関連する事物ももちろん絶え間なく動き、次々に新しいものが生まれている。

 私はこんなに未練があるのに、会社あちらからしたら些細な出来事の1つに過ぎないのだ。




 入院したことで保険関連の手続きが必要になっており、とりあえずは代理人の親を通して手続きを進めてもらっていた。

 自分で連絡が取れるようになったので、そのことを伝えると担当者は大いに喜んでくれたのだが、その時に言われた言葉がずっと引っかかっていた。


「あなたのことを事例に使って、急に入院するかもしれないと話すようにしたら説得力が出て、最近、私も営業成績がぐんぐん伸びています。雨季さんのおかげです!」


 私の保険担当である彼はずっと営業成績が振るわないことに悩んでいたので、言われたその時は私も

「よかったじゃん! 私も入院した甲斐があったってもんだ!」

と笑っていたが、彼の喜びに溢れた粘着質な言葉の羅列は数日間脳に張り付いていた。


 後日、その保険の手続きで、「加入者自らで入院の経緯を確認する作業が必要だ」と言われた。

 この病気になった理由や、入院に至る過程などの詳細を私の口で言わなければいけないらしい。

 今の私がそんなことしたら、確実に取り乱して泣き出してしまう。

 診察など治療の一環としてのものならまだしも、たかが『保険金』のために自分を追い込まなければならないのか。一度は生きるのをやめようとした人間が『生きるためのお金』を得るために。


 こんな屈辱があってたまるかと考え始めたら、先日、担当者に言われたあのネバネバとした言葉も浮かんできて、涙が止まらなくなった。

 私は “社会で失敗した人” というレッテルを貼られて今後も事例に使われていくのか。


 私だって営業マンだったらどんな手でも使って商談を勝ち取りにいくだろうから、その行為に腹が立っているのではない。なぜそれを当事者に言うんだ。

 ご丁寧に「ありがとう」とお礼も言ってくれた。何に対しての?

 私がうつ病になって、閉鎖病棟こんなところに入院するほど悪化して綺麗な事例になってくれて、()()()()()




 私は丸2日ほど泣き続けた。

 その担当者は個人的にも親交のある人で、私が地元に戻って会う機会がなくなっても病状をずっと心配してくれていた。

 それなのに……


 大人気ないとは思いつつ、彼との連絡手段は一切を遮断して、その後の保険の手続きは親に全て任せることにした。

 

 後に彼個人との縁は大切にしたい思いもあり、連絡は取れるようにはしたものの、いまだに保険云々の話には嫌悪感を抱くので、手続きについては内容は把握しておきつつ基本的なやり取りは親に頼っている。

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