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デッドマスターはあんまり動じない  作者: 八神 黒一
4章 不人気依頼担当冒険者
81/337

081 青く高い夏空に

 一週間後。アーシアの小屋の近くの草原にて。

 美しい白銀の髪をひとまとめにした少女が、恐ろしき屍骨の騎士と激しい打ち合いを繰り広げていた。

 少女が握る深い青を湛えた凍てつく剣が屍骨の騎士の胴を薙ぐかと思われた刹那、その斬撃は騎士の振るう古めかしい剣の見事な技を持って払い流され、少女は立ち位置を大きく変えさせられた。

 しかし少女も慣れたもので、その程度では動じることなく次なる連携、次なる斬撃とを繰り返していく。

 それでも騎士の防御は崩れることなく、流麗な騎士剣術を持ってそのすべてをいなし、流し、逸らし、受けていく。

 二人の攻防ははたから見ていれば非常に洗練されたもので、素人目に見ても見ごたえのあるものになっていた。

 少女の名はリーネリア、そして騎士はナイトスケルトンであった。

 

 そんな光景をぼーっと見ていたアーシアが口を開いた。

 

「……ウェイトリーさん」

「なんだ」

「リーネちゃんすごすぎないですか」

「すごすぎるな」

「少し前まで結構重い病気だったんですよね?」

「そのはずだな」

「ウェイトリーさんがやった魔法がなんかすごい効果があったり?」

「いやぁ? あれはホントに身体を治すだけだぞ? 病人をいきなりスーパー魔法剣士に変える魔法じゃないぞ」

「だとしたらリーネちゃんすごすぎないですか?」

「すごすぎるな」

「あれってどれくらい強いんですか?」

「どうだろうな? ナイトスケルトンは対人戦に強い五等級冒険者四人がそこそこ頑張れば勝てるくらいの強さだから、それとまともにやりあえてるなら、勝てないにしても六等級くらいの強さはあるんじゃないか?」

「それって四対一でそこそこ頑張ってですか?」

「そうだな」

「リーネちゃん一人で戦ってるんですけど」

「あー、なら五等級並みなのかもな」

「リーネちゃんすごすぎないですか?」

「すごすぎるな」

「さっきから二人の会話ループしてませんか?」


 ウェイトリーとアーシアがループさせる会話にマリーがツッコミを入れながら、その戦闘の行く末を見守っていた。

 なお、この時の護衛騎士二人はとても気が気じゃない気持ちで見守っていた。

 気を強く持ってほしいものである。

 

 

 しばらく続いたその打ち合いは、リーネリア嬢が疲れからか少しばかり大きく態勢を流されたところで、ナイトスケルトンが首元に剣を突きつけることで終了となった。

 その結果をもって、双方剣を引いた。

 

「ありがとうございました、ナイトスケルトン先生」

「……。」


 話すことのできないナイトスケルトンは、礼儀正しく頭を下げるリーネリア嬢に、胸に手を当て同じく礼儀正しく腰を折ることで答えとした。


「いくつか質問してもよろしいでしょうか?」

「……。」


 頷き答えるナイトスケルトンにリーネリア嬢は気になっていたことをいくつか質問していく。

 

「私が態勢を崩された技なのですが、あれには何かコツなどがあるのでしょうか?」

「……。」


 剣を構えながら、その質問に答えるように動きを見せるナイトスケルトンを、強化された視力でしっかりと捉え、その隣でその動きを可能な限り再現する。

 それをいくつか繰り替えして、少し休憩をはさんでからまた模擬戦を再開する。


 激しい打ち合いは少しずつその流麗さを増し、日に日にその動きは最適化されていっていた。


 本日二度目の模擬戦を終えたところで、マリーが休憩を言い渡し、近接戦の訓練は終了となった。

 

「お疲れ」

「……。」


 胸に手を当て、会釈するように頭を下げるナイトスケルトンに、ウェイトリーは少し声を小さくして話しかけた。


「そのうちリーネ嬢は“王国剣術”を使いこなしそうだな」

「……。」


 ナイトスケルトンは頷きつつも、自分では教えられる範囲に限界があるということを意志の伝達にて感じたウェイトリーは、うーん、と唸った。


「そのうち負けそうか?」

「……。」


 これにもナイトスケルトンは頷いて答えた。


「リーネ嬢は目もいいしセンスもいいし、ついでに頭もいいからな。当面はヘビーナイトゾンビの“王国槍術”も学ばせてもいいと思うが、どちらにしても限界はあるな」

「……。」

「リグさんあたりを呼べば概ね解決だろうが、そのために呼びつけるのはどうだと思う?」

「……。」


 感じる意志には、喜んで来るだろう、という意思があった。

 

「まぁ、そうだろうな」


 ウェイトリーも同じようなことを思っていた。


「しかしまぁ、お前さんにも騎士の矜持か、プライドもあるだろ?」

「……。」


 これには強く頷いて答える。

 

「なら、お前さんのできる限界までリーネ嬢とやりあって、教えられることは教えてやってくれ。なんならヘビーナイトゾンビと合流して訓練してもいいしな。

 リーネ嬢がそれでも足りないとなるのなら、その時は満を持して我らが騎士団長殿を呼ぶとしよう。

 “王国騎士”の根性を見せてやれ」

「……!」

 

 胸に手を当て、ナイトスケルトンは強く頷いた。

 

 

 八月初旬。盛りを迎えつつある日差しの下。

 次の魔術の訓練の話をマリーと交わすリーネリア嬢と、五十倍濃縮まで漕ぎつけたがそこからまた停滞していることに頭を悩ませるアーシア。

 

 ウェイトリーは、高い夏の空を見上げながら二人がどこまで高みに向かうのかを思いながら、日差しに目を細めていた。

 

 

 

 

++++++++++++++++

 

 

 

 

 とある渓谷の洞窟の奥深く。

 それは目を覚ましていた。

 ゆっくりと、のっそりと。

 その穴倉から這い出さんと身体を動かす。 

 しばらくして、まばゆい光を浴び、その体躯が顕わとなる。

 それはなんということもない地竜である。

 通常、頭から尻尾までが七メートルほどで、横幅は最も太い場所で三メートルほど。

 翼はなく、太い両手両足を地面に付き、強靭な鉤爪と牙を持つ。

 体つきは、まるっきり茶色いトカゲのようではあるが、非常に頑丈で体にそって流れるようなギザギザとした棘が生えている。

 

 その地竜はのしのしと周囲を移動していれば、目前に、同じような体躯をした地竜が現れた。

 お互いに一瞥し、見合ったかと思えば、そのまま速度を上げて、頭同士で激しくぶつかった。

 縺れるように噛みつき、爪を振るい、どちらが上であるかを決める、いわば縄張り争い。

 もうそろ決着も着くかと思われたその時、白熱した縄張り争いを繰り広げ周りが見えていなかった二匹は気づかなかった。

 

 自分たちが、丸のみにされるその時まで。

 その存在に気づくことはなかった。

 

 それは大きく、強靭で、この渓谷において強かった。

 否。

 あまりにも大きく、非常に強靭で、この渓谷において最強だった。

 

 絶対強者は大きな足跡を残しながら渓谷の中を征く。


 まだその存在を知るものは、渓谷の外にはいない。

 

 

 

 

 夏空に少女たちの成長を重ねデッドマスターが目を細めている頃。

 ハンガーベイル渓谷の異変は少しずつ、だが大きな力を持って脈動を始めていた。

 

 そのお話は、また次の機会に。

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――

 終了時点でのステータス



 PLv:101


 HP:3936   STR:226   MAG:786

 MP:5454   VIT:251   AGI:522

 SP:1009   INT:681   DEX:322



 探索系

 鑑定10 調査10 感知10 気配察知10 追跡10 遠見10 製図10 

 罠解除10 鍵開け8 植物採取10 伐採9 鉱物採取10 発掘10 

 解体10 神秘採取8 野営9 環境同化10


 知識系

 鑑識10 薬草学10 解体術10 解剖学8→9(10) 医学2 

 鉱物学9(10) 魔生物学9→10 地質学6→7(8) 考古学5→6(10)

 人類学6→7 天文学6 宮廷儀礼5(7) 術式魔法学(EW)3 

 魔道力学(EW)2 精霊学1 冥府の戒律10


 生産系

 土木工事9 建築2 錬金術9 薬草栽培2 罠製作2 木工2 金属加工1 細工1


 補助系

 投擲10 剣術2 体術7 気配遮断10 行動予測10 水泳6


 複合・発展系

 オールレンジスキャン 弱点看破(!) (弱点特効) 天地一心


 異世界スキル

 異世界適応10 異世界言語理解5 資材カード化5 魔力視5 修復者の瞳10 

 クラス特性:死者への権限10 クラス特性:術理解明5

 これで四章は終了です。

 次回更新は十日ほどお時間をいただき、24年6月7日/0時を予定しています。

 そこから五章終了まで二日に一度の更新、六月の月跨ぎは30日なので滞りなく二日更新になります。

 

 今回の話は冒険者ウェイトリーとしての日常に比較的フォーカスした章となっていて、冒険者としてどんな日常を送っているのかという雰囲気などを感じていただけたのなら、章のコンセプトとしては成功かなと思っています。

 この更新を行っている現在が24年5月15日なのですが、前回のあとがきを確認しようと思い三章のあとがきを見ていたところ、「総PV2000超えてうれしい! もうちょっとでユニークアクセス1000人行きそう!」といったことが書かれていて、今が総PV5582、ユニークアクセス1800人となっていて、宇宙を背景に真顔を浮かべる猫のような表情になっております。

 日々ご愛読いただき、本当にありがとうございます。

 

 これからも楽しんで読んでいただき、かつ評価やブックマーク等をいただけるよう、鋭意努力していきたいと思います。

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