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デッドマスターはあんまり動じない  作者: 八神 黒一
4章 不人気依頼担当冒険者
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078 第一回フィールドワーク

 無事九等級として登録が終わり、やっとこさ本日の本題。

 

「エリナさん。今日南東の森に行くうえで注意するべきことや気を付けることは何か聞いてますか?」

「いえ、現状はなにも報告に上がっていません。昨日時点では魔物にも異常はなく、不審な痕跡なんかも発見されていませんね」

「その森で出会うような魔物ってどういう感じですかね? あとその中で注意するようなものは?」

「南東の森に生息するのは主に、ホーンラビット、フォレストゴブリン、ハイドスネーク、グリーンドッグですね。稀にフォレストウルフが確認されますが、ここ数か月は目撃情報がありません。

 この中で注意するのは最も等級の高いフォレストウルフですが、ほとんど確認されていませんので、ほぼ出会うことはありませんが、注意は必要ですね。ですが、確認されたすべてが単独ですので、パーティを組んでいれば、等級不足であっても大事に至ることはほぼありません。

 次に気を付ける必要があるのは、ゴブリンですね。それも、五体以上の徒党を組んでいるものは等級以上に危険な場合があるので、素早く数を減らすか、いち早く離脱するかなどの対策を取る必要があります。

 それ以外の魔物にも注意は必要ではありますが、特に注意が必要なのはその二体ですね」

「なるほど。今そのあたりの魔物で依頼として消化できるものはどんなものがありますか?」

「ゴブリンは五体の討伐証明提示で八等級一件、ホーンラビットは五体の討伐証明提示と納品でそれぞれ八等級一件、グリーンドッグは五体の討伐証明提示で八等級一件です。ハイドスネークは現状依頼対象にはなっていません」

「よくわかりました。では、南東の森で、主に採取などの依頼などがあれば彼女らに受けさせたいんですけど、なにかありませんか?」

「この時期のあの森で採取できる素材の依頼ですと、八等級のガセカゴケ、フウシベ、クサフセあたりになりますね」

「なるほど。ガセカゴケとクサフセはまだわかりやすいですけど、フウシベはぼちぼち難しいですね」

「見分けが難しいので不人気依頼ですね」

「一応、二人にある程度は任せますが、最低限必要な分はこっちで確保しておきますよ」

「大変助かります」

「俺はわかるんですけど、もし植物の見た目が分からない場合はどうすればいいですか?」


 この会話が始まってからではあるが、ウェイトリーはあえて二人にどういうことを確認して置けばいいのかを理解できるように話を進めていた。

 その意図を正しく察していたエリナ職員も心得たもので、普段よりも詳細に確認を取るウェイトリーに合わせて、魔物のあれこれ、採取目標の植物の説明と描かれた図鑑などを確認させてくれた。

 また、間違えやすい他の植物や、品質の良いものの見分け方、採取の仕方なども教えてくれた。


 それらの確認をアーシアとリーネリア嬢は可能な限り覚えて、多分問題ない、と告げた。


「とまぁ、以上で森に赴く前にギルドで話しておくことってところだ。

 今回は複数回達成可能な討伐・納品依頼が主で必要ないが、特定の対象や数に限りがある依頼は依頼表をもらったりする必要がある。

 そういう依頼を受ける場合は、エリナさんや他のギルド受付の人にまた詳しく話を聞くといい」

「わかりました!」「わかりました」

「よし。なら行こうか。エリナさん、行ってきます」

「ご無事の帰還をお待ちしております」


 一行を送り出したエリナ職員は、ウェイトリーの面倒見の良さと気配りの周到さに、新人冒険者の講師でも頼もうかなぁ、などと考えていた。

 不人気依頼であると言えば受けてもらえそうだしなぁ、とも。

 

 

 

 領都から歩くことおよそ三十分。

 領都南東に位置する森。

 南東の森、或いは森とだけ呼ばれるこの森には名前が無い。

 なぜなのかと思わないでもないが、もしかしたらノアルファール大森林のように名前をつけるほどの地域ではないということなのかもしれない。

 領都で暮らしている面々には知り様もないことだが、実は名前もあったりはするし、エリナ職員なんかは普通に知っている。

 だが、それは他の地域から『レドアの森』という名前で呼ばれているというだけのことで、つまりは領都の近くの森であるというわけである。

 あるにはあるが、実質ないに等しい。

 しかし別にそれはこの森をけなす要素にはならず、領都レドアはこの森に大きな恩恵を受けている。

 低級冒険者たちの稼ぎの場であり、薬効植物豊かな森であり、小規模伐採や間伐分程度だが材木や薪の確保などにも使われている。

 領都にとってなくてはならない森である。

 

 そんな森の入り口の前に一行はやってきていた。

 

「よし。じゃあまぁ、森に入る前に装備を配るぞ。というかアーシアに持たせるものだな」

「え? このかばんだけじゃなくてですか?」


 アーシアには事前に、作ったポーションなどを入れておくために、ウェイトリーが使っているのと同じ『拡張バックパック』を複製して渡してあった。

 ウェイトリーはそれに加えて、もはやおなじみの『マチェット』、『採取品質向上手袋』『森の採取カゴ』をアーシアに持たせることにした。


「採取物はその籠を使うといい。植物と野菜が大体百キロまで入るし、品質向上と鮮度維持ができる。その軍手も似たような効果だ」

「いやいや、流石にすごすぎないですか?」

「マジだ。アーシアの薬草畑の薬草もその手袋を使って籠に保管すれば二ランク程度は品質が上がるはずだ」

「なんでもっと早く貸してくれないんですか!?」

「元々薬草事体の品質を向上させたいんだから、それで品質高めても意味ないだろ」

「うっ、それはそうですけど」

「森での採取はいつでもいいものを取れるとは限らんからな。そういうもんを使う場合もある」

「というか、カゴがめっちゃいいですね……。ジャガイモの収穫が捗りそう」

「……欲しいならあといくつか売ってやるよ」


 そこでジャガイモに行くあたり農家娘だなぁ、と思った。


「これもウェイトリーさんが作ったんですか!?」

「すごかろ?」

「めっちゃすごい!」

「籠一つ二十万な。籠一つに付き手袋も着けてやろう」

「錬金術セットより高い!?」


 籠と手袋が含まれるスターターセットの森の採取伐採パックは一つあたり二万CP。つまり二万ドラグである。カードごとの複製に使うDPで複製するより遥かに安上がりだ。


 なお、アーシアは何気にポーションマネーがあるためこの後、それに物を言わせて籠を十個ほど買いこもうと考えていた。

 実を言えば、この程度のものはアーシアレベルの錬金術師がいわゆる普通の錬金術を覚えれば作れてしまうものなのだが、ウェイトリーは言わないことにした。


 そんな折、うらやましそうにしたリーネリア嬢がウェイトリーに声をかけた。


「あ、あの、ウェイトリーさん、私にはなにか……?」

「あーすまんすまん。俺は探索系の装備はそこそこなんだが、戦闘系はちょっと弱くてな。鉈とカバンならすぐ用意できるが、それでいいか?」

「ぜひいただきたいです!」


 『マチェット』はまだ残りがあるが、『拡張バックパック』は数が無いため手早く端末にて複製してそれを取り出し、リーネリア嬢へと渡した。


「じゃあこれを。……なんか同じカバンで申し訳ないな。ちょっとした形の変更と色合いの変更くらいならそのうちやってやるから、今日はこれで我慢してくれ。

 素材自体はあるから、そのうちになんかよさそうなのを考えておくよ」

「……あの、おねだりしてしまって申し訳ありません」

「いやいいさ。アーシアだけ贔屓するのも悪いし、一応俺も講師の一人だからな。頑張ってる生徒になんかくれてやりたい気持ちもある」

「私もお二人にプレゼントするものを考えていますので、楽しみにしておいてくださいね」


 え魔導書とレシピ以外にも? とニコニコ顔のマリーにやや怪訝な表情を送るウェイトリーであった。

 言ってからはしたないことを言ってしまったと赤面するリーネリア嬢にウェイトリーは気にすることはないと伝えてから、本題へと立ち返った。


「それじゃあそろそろ森に入ろう。基本的にどう進むかなんかは二人に任せるし、問題がありそうだったり危なかったらちゃんと助けるから気負わず行こう。

 だが気を抜かず、気を張りすぎずだ」

「わ、わかりました」「わかりました」

「よろしい。ならいこう」

「じゃあ私が前を歩くね、アーシアちゃん」

「お、お願いね、リーネちゃん。道は私が印付けて覚えるから」

「私もできるだけ覚えておくね」


 二人の取り決め通り、リーネリア嬢が前に立ち、その後ろにアーシアらが続くという形で進むことにした。

 護衛騎士二人は、ものすごく心配そうでやや心苦しいが、これも訓練と飲み込んでほしいものだ。

 ちなみに、この二人はベンゲル辺境伯に指定錬金術師の警護にも注意を配るよう言われているため、なかなか胃に来る時間と言えるだろう。

 飲み込んでほしいものだ。

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