036 修正点修復特典
更新休止期間中に一章、二章の誤字・脱字訂正、表現揺れ・あいまいな表現の変更、レイアウト調整などを行わせていただきました。
ゼロになってるとは言えませんが誤字脱字は減って、表現的には読みやすくなっているかと思います。
内容の変更や追加はありませんので、既読の方はお気になさらずに。
フルダイブ型VRMMORPG『エルダリアウィズオンライン』。
そのゲームで『最強のデッドマスター』と呼ばれていたウェイトリーは、現実世界で死に、新たな現実となる異世界へと送られた。
地獄の沙汰も金次第ならば異世界生活も金次第。
訪れた領都レドアにて冒険者生活と金稼ぎ。
相棒である魔女のマリーの非常識なポーションでお金を稼ぎ、苦しい言い訳の不法侵入の実績で墓場の浄化依頼を解決したウェイトリーに、そんなポーションと薬草に関するあれやこれやが待っていた。
冒険者ギルドに薬草売りの少女が買い取りの伝言を残したのをまだ知らないところから、今回の話をはじめよう。
++++++++++++++++
墓場の浄化報酬をもらい、それでなかなかのお店で豪遊した翌日。
ウェイトリーはすっかり飲みなれた口当たりも味もいいハーブティーを飲みながら朝の時間をなんとなくぼーっと過ごしていた。
豪遊して見たものの、その程度では揺るがないほどの報酬だったのもあって、いまいちすぐに依頼という気分でもないから図書館にでも行くかな、と予定を考えつつ、ふと思いだしたことがあって端末を取り出して確認を行った。
案の定、端末の通知欄にメッセージが届いており、そこにはこのような内容が明記されていた。
『小規模修正点の修復により、アイテムショップに新たな商品を追加します。
追加される商品は以下の通り。
砂糖1kg 塩1kg 酢1kg 醤油1L 味噌1kg (各5000CP)
砂糖レシピ 塩レシピ 酢レシピ 醤油レシピ 味噌レシピ (各20000CP)
小規模修正点修復報酬としてショップレパートリー要望チケットを一枚配布させていただきます。
EWSD管理運営者より』
「あー」
「どうかしましたか?」
「なんか修正点修復の機能追加でショップのラインナップが更新されててさー」
「何が追加されたんですか?」
「これは所謂『料理のさしすせそ』ってやつじゃないか?」
「え最高じゃないですか。醤油と味噌は市場でもお店でも見つかりませんでしたし」
「そうだね。一キロ各五千CPだとさ」
「高っ、完全に足元見られてるじゃないですか。どれも日本で普通のものなら五百円から千円程度で同じ量が買えますよ」
「日本にかぶれてんなぁ」
「まぁそれでも買うんですけどね。金満最高ですね」
「あとそれらを作るためのレシピ本だとさ。普通の作り方と錬金術を使った作り方だってさ。こっちは一冊二万CP。より高品質で美味しくしたり、味をアレンジしたり違う素材を使ってみたいならオススメらしい」
「いいじゃないですか。とりあえずお金はあるんですから全部買いましょう」
「とりあえず一つずつで」
それぞれをまとめて購入すると、端末の取得アイテム欄にそれらは追加され、それをまとめて取り出した。
本来ならゲームでの取得アイテムであったりドロップ品などが山ほど入っていたはずのその項目には、今やショップ機能で購入した『ブロック携行食と水』が数セット収められているだけであった。
ウェイトリーは何気にこのブロック携行食を気に入っており、依頼で外に出た時や何となく口さみしい時に食べていたりする。
実際、この携行食は一日分の栄養を補えるものでもあるので、最近の偏りがちの食生活を送っていても健康に問題なしという判断であった。
まぁ、食べている大きな理由は、この携行食が黄色いパッケージの栄養保存食のチョコレート味に酷似していて、平坂であった時によく食べてたからというのが原因ではあるのだが。
「あとさ、なんかショップレパートリー要望チケットとかいうのも貰った。説明を見る感じ、欲しい商品を一品追加する要望が行えるらしい。それが通るかどうかはものによるらしいけど」
「ここまで来るとお米欲しくないですか?」
「マジで日本にかぶれてんな。まぁ米は悪くないな。通りそうな感じもするし」
「他にも欲しいものはありますけど、主さまはなにか欲しいものはないんですか?」
「コーヒーかな。EWOってゲームショップでコーヒー系商品買えたんだけど、今無いんだよな。俺好きだったんだよ、エルダリアブレンドカフェオレ」
「そういえばよく飲んでましたね。ハーブティーは不満ですか?」
「いやそんなことはないし美味しいけど、普段飲んでたものだからちょっと欲しいなって」
手に持っているカップを揺らしながらウェイトリーは答えた。
「こちらで買えませんかね、コーヒー」
「あーどうだろう。紅茶は普通にあったけど、あの喫茶店にはなかったよな。商会とかで聞けば見つかるかね?」
「まずは聞いてみて買えるかを調べた方がよさそうですね。
それに、もし小規模修正点の修復で同じようにショップのラインナップが増えるのであれば、お米やコーヒーなどが追加されてもおかしくないかもれしませんね。
であればこちらでは入手が難しいものを優先して要望したほうがいいかもしれません」
「とはいっても手に入りづらいものの要望が通るかはわからないしなぁ。正直に今欲しいものをサクッと選んでしまうのも悪くはない気もする」
「私は断然お米ですね。それも日本産のものを強く要望します。ブランド米ですよブランド米」
「ならコシヒカリ十キロとかあきたこまち十キロとかで要望出してみる?」
「ある意味でどこまで要望が通るのかの指標になりそうですしいいかもしれませんね」
「もしこれが可能なら、割といろんな食べ物が通るかもね」
「食べ物がショップに追加されたので食べ物に思考が偏ってましたけど、衣料品や洗剤みたいな身近なものから、非電源系の便利グッズとかいっそ家電なんかも買えちゃうかもしれませんね」
「電気はどうするのよそれ」
「そりゃ魔力を応用するに決まってますよ。魔石なんて言う天然由来でクリーンな電池じみたものがあるんですから」
「魔物からできるもんを天然由来って言うのはいいのか悪いのか……。魔力で発電する電源を作るか、家電事体を魔力で動くように改造するわけね」
「それか話題の映画が百本くらい入ったタブレットですかね」
「それは流石に無理だと思うよ」
キラキラと目を輝かせて次々と、それは無理じゃない? という内容の要望を上げ続けるマリーをよそに、ウェイトリーは要望チケットを使用して、送信フォームに「コシヒカリ十キロ」と書いて送った。
マリーの妄想を聞きつつ待つことおよそ二分で、端末が振動し、通知が届いた。
内容には、『「日本産 白米十キロ」「羽釜セット」「しゃもじ」「茶碗」「箸」の内容なら対応可能』というメッセージが送られて来ていた。
なんとまぁ手厚い対応だこと、とウェイトリーはその内容で問題ない旨を返信した。
ついにはそもそもインターネットがつながるエアディスプレイ端末があれば解決じゃないですか? などと言い出したマリーに、ものには限度ってものがあるでしょとウェイトリーが返していれば、再び端末が振動し、ショップラインナップの更新通知が届いた。
『ショップレパートリー要望チケットにより、アイテムショップに新たな商品を追加します。
追加される商品は以下の通り。
日本産白米十キロ 5000CP 羽釜セット 20000CP
しゃもじ 2000CP 茶碗(カスタム可) 1500CP 箸(カスタム可) 2000CP
EWSD管理運営者より』
茶碗と箸を除き一揃い買って、先ほどの調味料と同じように机の上に並べた。
「もう更新されたんですか。ずいぶんお早い対応ですね。というか他にもいろいろあるじゃないですか」
「なんかあと茶碗と箸が大きさ、柄、色をカスタム買えるみたいよ」
「控えめに言っても神対応アプデですね。お米の値段はおいくらだったんですか? 調味料の値段を見る限り日本の相場の十倍くらいしてましたけど」
「五千CPだってさ」
「あれ? ずいぶんと安いじゃないですか。というか日本でもそれこそ一般的なブランド米の相場と同じくらいじゃないですか」
「日本だと三千円から五、六千円ってところだっけ? 要望チケットで頼むとお得なのかもね」
「であるならば、修正点修復で今後追加されるとしてもある程度無駄にはならないかもしれませんね。欲しいものはお得に買えるというわけですから」
「今度コーヒー頼もうかな」
「いっそ自動車とかどうでしょう」
「いやそりゃ無理でしょ」
マリーの止まらない可能性の妄想を聞きながらウェイトリーは出かける準備を始めるのであった。
大きな依頼の後で新しい依頼を受けるつもりこそなかったが、その後になにかあるかもしれないと顔だけ出すために二人は冒険者ギルドへとやってきた。
朝の依頼張り出しの時間も過ぎて、それらの冒険者もおよそいなくなった今の時間帯はギルドが一番落ち着いている時間帯でもある。
当然、下級冒険者である二人がのんびりとやってくるような時間帯ではないのだが、もはや今に始まったことでもなかった。
時間に囚われない悠々自適さで言えば上級冒険者並みである。
さてギルドでは、もはやおなじみ、或いは専属といってもいいほどお世話になっているエリナ職員が受付にて未受注の依頼に関する書類などを整理しているところであった。
流石に気配を消して受付前に出没するのはやめていた二人に、エリナ職員はすぐに気づき、顔を上げた。
「ようこそ、ウェイトリーさん、マリーさん。本日のご用件を伺います」
「あーいや、特に用事はないんですけどね。報酬の大きい依頼を受けた後なんで今日は依頼は休もうかと思いまして。
まぁ依頼が依頼だったんで、なんかあればと思って顔を出しただけなんですけど、むしろなにかあります?」
「そうですね……。あぁ、あの件がありますね。申し訳ありませんが、応接室までお願いできますか?」
「主さまも懲りませんね」
「なんもしてないって。昨日の今日だよ? むしろマリーさんが池に使ったヤツの話じゃないの?」
「そ、その件はすでに昨日話しましたし……」
「特になにか問題があったというわけではありませんよ。詳しく話しますのでお願いできますか」
「了解です」
もはや三度目ともなれば案内などなくとも勝手知ったるものである応接室へと通される。
ウェイトリーとマリーはソファーに腰かけて、それほど間を置かずしてエリナ職員が入室し、二人の前に腰かけた。
「お話というのは、近いうちにまた前回と同量程度のポーションをまたお願いできないかという話なんです」
「ギルドマスターからずいぶん売れてるとは聞きましたけど、差し支えなければどれくらいで薄めて売ったのか聞いてもいいですかね?」
「全て魔力水を使った四百倍希釈ですね。なのでそれぞれ総数二千本ずつです。ですがそれもそろそろ在庫の底が見えてきた状態です」
「そりゃぁずいぶん売れてる」
「瓶詰めご苦労様ですとしか言えませんね」
感心したように言うウェイトリーに、瓶詰めを行ったギルド職員に苦労に想いを馳せるマリーであった。
「元々品薄且つ効果や質があまりよくないものが多かったので、品質が揃っていて高品質・良効果、仕入れ値を考えて販売価格を調整して、効果に対して通常の相場よりも幾分か安い値段で販売したところ、冒険者の方々に大好評です。
加えて、街の住民の方々も家に備蓄して置くためという理由で買いに来られる方までいたので、早々に在庫が捌けていったという感じです」
「なるほど」
「実際にポーションを使った方が、ポーション特有のえぐみや苦みなどがなくスッキリとした飲み口で効果も申し分なく、すぐに再購入したのも拍車をかけていたと思います。
よほどのことが無いとあまり飲みたいと思う味にはならないものですが、流石はマリーさんですね」
「味の調整はしましたけど、えぐみや苦みがなかったのは薬草が良かったからですね」
「しかし冒険者ギルドって随分と良心的なんですね。別に相場通りかちょい高めで売ってもよかったでしょうに」
「ポーションは命に係わる消耗物資ですからね。
もちろん良いものを不当に安く売るわけにはいきませんが、命を掛けるのはいつだって冒険者の皆さんです。
持つべき人達が値段を理由に持てないでは話になりませんから。他のギルドはともかく、ギルマスの方針でもありますし、これはレドア支部の総意に近いですね。
この領は魔物災害に最も近い領でもありますから」
「そりゃまた立派な話だ」
「であれば良心的なマリーさんとしてもまたポーションを納品するのもやぶさかではないのですが、いかんせん今は薬草の手持ちがないんですよね」
やれやれ参ったと言わんばかりに手を広げるマリーに、エリナ職員が口を開く。
「その件なのですが、お二人はアーシアさんという方をご存じですか?」
「誰ですか?」
「聞き覚えがないですね」
「市場で薬草を売っている十代中頃ほどの少女なのですが」
「あーわかりますわかります。あの子から大量に薬草を仕入れましたからね」
二人はあの時に、自分たちの名前を名乗りはしたが、相手の名前は聞いていなかったことに気が付いた。
市場で薬効は薄いが味はいい薬草の在庫を山ほど抱えてしょぼくれいていた少女のことであった。
「昨日、墓地から戻って、三時ごろにアーシアさんがやってきて、薬草の買い取りと薬草の栽培のことで相談したいことがあると言伝を受けています」
「ナイスタイミングですね。その薬草を買えばまた作れますよ」
「あの、アーシアさんの薬草はその……、なんといいますか、薬効の薄いものであったと思うのですが、あの薬草からポーションが作られたんですか?」
「そうですよ?」
「一体どうやって……」
「材料をぽいぽいして錬金鍋でぐるぐる―ってすればできますよ」
「あの、ウェイトリーさん」
「言わんでください。俺もわからないんですよ……」
やっていたことこそその表現通りといっても過言ではないが、レベルが常軌を逸している。
錬金術のスキルが九あるウェイトリーも平気で上級回復薬どころか蘇生薬すら作るが、そんなウェイトリーからしても異次元のその先のようにすら思える手順であのポーションは作られていた。
大体からして一本分の分量に何をどうしたら二百本分の効能を凝縮できるというのだ。悪い冗談だと言われた方がまだ納得できるレベルである。
どこか遠い目をするウェイトリーに縋るような視線を向けるエリナ職員を見かねて、ウェイトリーはある提案を口にした。
「まぁ本人にちゃんと聞けば手取り足取り教えてもらえると思いますよ。確か赤点請負人だったっけ? とかいうのをやってたらしいので教えるのが多分うまいと思いますよ」
「昔の話ですねー。というかよくそんなこと知ってますね」
「ケイシーから聞いたぞ」
「あーなるほど。ケイちゃんダメな科目はとことんダメでしたからね。およそほとんどは問題なかったんですけどね」
脱線した話をウェイトリーは戻すべく、エリナ職員へと話を振った。
「ただ、あれですね。詳しく教えてくれるとは思いますけど、それをものにできるかはまた別問題だと思います。
理解も……、でき、るとは、思いますけど」
「そこはせめて力強くできると言ってほしかったです」
「エリナさんなら理解はできますよ。やろうと思えば作るのも可能だと思います。
感覚的な部分は排除して理だけを追及したものなので、錬金術理論事体はどこまで行っても座学の範囲ですし、レシピ通りに作れば普通のものは簡単です。
ただ、あそこまで凝縮したりするのであれば、技術が必要になるので、そこにはセンスや練習時間が大きく影響しますね」
「技量が伴わなければ品質などに影響もあると聞きますが」
「それはレシピの範疇ですね。理論通りに作業を行って、必要な素材を品質六から八あたり揃えれば、品質十のポーションはできるようになっているんですよ。
摂理というやつですね。もちろん最低限の作業を行えるだけの技術は必要ですが、それは料理を作る程度のものですから」
「でもマリーさん品質一を品質十にするじゃん」
「そこは理論の応用と経験と技術と魔力の力業ですね。できるかはともかくやってることは理解できると思いますよ」
「……何となく、最上級冒険者の方が言う『剣で切ってダメージが入るのなら勝てる』という言葉を思い出しました」
「『血が出るなら殺せる』ってワケですね。んなわきゃねぇっての」
「ですよね」
何となく息の合った掛け合いをするウェイトリーをエリナ職員を見てマリーは、この二人は一体何を言ってるんだろう? と本気で意味が解ってなさそうに首をかしげていた。
「は、話を戻しますね。
そのアーシアさんなんですが、今日明日と市場で薬草を売っているそうなのでよければ来てほしいとのことでしたので、ギルドに来ていただいたのはちょうどよかったかもしれません」
「なるほど。それなら今から市場に行って薬草買ってきてポーション作っちゃいますかね。
主さまはどうしますか?」
「俺も行くよ。なんか栽培の相談云々とも言ってたみたいだし、口だししたのもあるし」
「ギルドからお話することは以上ですね」
「わかりました。ポーションは明日か明後日にでも持ってきますね」
「お待ちしています」
「ギルドも稼いでいるというのであれば、上級も一本分くらいは作ってきましょうか?」
「その件に関してはギルマスと相談しますが、今回は前回と同じほどお願いします……。
下級ポーションであれば増やしていただいても問題ありませんが」
「わかりました」
簡単に挨拶を済ませて二人はギルドから出て、市場へと向かうのであった。
バレンタインデーにはカロリーメイトのチョコレートを買いました。
他意はありません。
以降、三章終了までは二日に一回のペースで更新していきます。
一応、小説関係の報告は旧ツイッターでたまに呟くので乗せ忘れていたURL乗せておきます。
(https://twitter.com/bk1_yrt_tuw)




