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デッドマスターはあんまり動じない  作者: 八神 黒一
1章 Revive ”Deadmaster”
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013 気になって仕方ないお金の話

 そんなしょうもない話をしていれば、先ほどの男が戻っていた。

 

「待たせたな。銀貨バラになるがいいか?」

「あぁ、かまわない」


 そういって銀貨を十枚渡された。

 大きさは五百円玉よりほんの少し小さく、厚さは五百円玉の倍くらいの厚みだった。その銀貨の意匠は精巧かつなかなかに凝ったもので、どちらが表かはわからないが片面には翼を広げた竜の意匠が施されており、その裏にはこれまた竜の横顔を象ったような紋章のようなものとその下に『WBG 1000』と小さな文字で彫り込まれてた。

 その銀のコインをみたウェイトリーは内心ではかなり驚いていたのだが、それを表には出さず、その銀貨をそのままマリーへと渡した。

 同じく銀貨を見たマリーがカチコチに固まったのを確認しつつ、ウェイトリーは早々に話に戻ることにした。いかんせん、シカを渡してもいないのに先に全額渡されては座りが悪い。


「シカはどこに持っていけばいい?」

「ついてきてくれ。猟師のヤツの解体場がある。そこへ頼む」

「あー、一応これを持っておいてくれ」


 そういってウェイトリーは二枚のカードをそのまま渡した。

 先ほど端末を操作したときに資材カードへと戻したもので、資材カードの権限をフリーに設定していた。これはどこまでフリーなのかを試してみようという試みと、代金をもらったことに対する誠意のつもりだった。

 ちなみに、権限フリー状態ならマリーでも発動させることができたのは確認済みだ。

 

「これに入ってるのか?」

「あぁ。俺は符術師でね。そういったカードに物を封じ込めたり、呼び出したりするのが本職なんだ」

「聞いたことのない魔術だな」

「この辺りに符術師はいないのか?」

「俺の知る限りはいないな。魔道具なんかを作るヤツが一番近いのかもしれんが、お前さんはそれで戦うのか?」

「そうだな」

「そういうやつは冒険者時代にも会ったことがないな。魔術とは違うのか?」

「そう違いはないんじゃないかな? ただ俺がいた場所ではカードがあれば割と誰でもカードを使うことができたが」

「それなら魔術師じゃないヤツでも魔術を使えるってことか?」

「そのはずだが、こっちでは試したことがない。そのカードはシカが出るだけだから、もしよかったら出す予定の場所で出してみてもらえないか?」

「おお! やってみよう」


 ほどなくして猟師の解体場にたどりついた。

 そこにはこれまた筋骨隆々の男がおり、話を聞けばこの村の猟師なのだそうだ。

 

 その男に促されるまま、シカを出すように言われたウェイトリーは、衛兵の男へと指示を出した。


「出したい場所の中心にカードを置いて、『発動』と言ってみてくれ」


 最もオーソドックスな召喚方法を指示して、様子を伺う。

 するとさも当然かのようにシカは召喚され、解体場にある頑丈な机の上に横たわった。

 

 衛兵の男がシカを出したことに猟師の男は驚きはしたが、それよりもシカの方に興味が移ったようで、すぐにシカを調べ始めた。

 ある程度調べ終えた猟師がウェイトリーへと話しかけた。

 

「こいつは、狩ってからどれくらいだ?」

「五日前からそれくらいのはずだな」

「調べたところ狩ってから一時間以内といった死体なんだが、どうなってる?」

「カードに封じ込めると時間が止まるからそのせいだろう」

「そいつは……。ずいぶんと便利なもんだな」


 衛兵の男が驚いたように声を上げた。

 

「カードに戻すのは俺しかできんが、出すのは俺の知る通り誰でもできそうだな。もう一枚の方も出して確認してほしい」

「わかった」

「流石に台には乗らん。そっちの床で頼む」


 猟師に言われた通り衛兵の男は床にシカを出し、それを確認した。

 こちらも一頭目と同様のサイズで、同じような状態のシカだった。


 確認を終えた衛兵の男はウェイトリーへとシカを今一度カードに戻してほしいと頼んできた。

 これをどこかに持ち込んで高額で売りさばいてもかまわないといった手前、本当にそうされてもかまわないのだが、一応何故かと聞けば、一度に二頭では食べきれず、干し肉にしたり燻製にしたりすることになるが、一気に行うのは手間になるから、このまま状態で保存して置けるならその方がいいとのことだった。

 

 その理由が本当でも嘘でもどちらでもよかったので、ウェイトリーはその要望を快く受け入れ、カードの状態へと一度戻し、それを男へと渡した。


「これで取引は成立でいいかな?」

「もちろんだ。こちらが随分と得をしているが、話のほかに何か要望はあるか?」

「それなら、空き家とやらに泊めてほしい。別に空き地でも構わないが、宿があるに越したことはないからな」

「もちろんだ。村長に話を通しておこう。案内するからついてきてくれ」


 そういうと男は猟師にシカの解体と村への分配の話をしてから空き家へと案内してくれた。

 

 空き家は、それなりに旅の人が使うからか、村の人間が交代で綺麗にしているらしく、問題なく寝泊まりできる家だった。

 水回りやかまどの使い方などを説明して、男は村長への報告へと戻っていった。

 十分程度して戻ってきた男にいろいろと話を聞くことにした。


「それで? なにが聞きたいんだ?」

「まずは通貨の種類だな。銀貨と金貨くらいは察するが、実際にはどれくらいの種類があって、それぞれどのくらいの値段なんだ? そもそもなんで『ドラグ』なんて名前がついてるんだ?」

「それか。話が通じているようだったが知らなかったのか。何種類かか、あー……鉄貨に銅貨と大銅貨、銀貨に大銀貨、金貨と大金貨、それに白金貨だから、八種類か。値段は鉄貨が一ドラグでそこから順に十倍ずつっていえばわかるか?」


 男は指折り数えながら種類を言いあげる。

 聞かされているウェイトリーとしてはなんでそんなことになっているんだと興味が尽きないものであったが、流れに逆らわず答えを返した。


「あぁ理解した。なら大銅貨は百ドラグで、大金貨は百万ドラグってことだな」

「そういうこったな。まぁ大金貨も白金貨も使ってるのは王都の大店くらいだったが、最近じゃそのあたりもあんまり使ってないんじゃないか?」

「どうしてだ? 大商いをするなら相応の金額の受け渡しが発生しそうだが」

「まずは『世界銀行ギルド』のことを説明したほうがよさそうだな」

「『世界銀行ギルド』? 随分と大層な名前だが、そこが発行している貨幣なのか?」

「そうだ。今から三十五年だか四十年前だったかに始まった組織でな。元々は『世界冒険者ギルド』で細々とやってた金の預貯金の機能だったんだが、管理に問題が出たらしくてな、いっそのこととごっそりと移して冒険者以外の商人から一般の町人まで広く使えるようにと作られた組織だ。できた当初から頭をやってるグランドギルドマスターがとんでもないやり手でな。こっちは二十年くらい前だったか。金の価値がちょうど十倍の世界共通通貨を発行して今に至るというわけだ。今じゃ大体の国でドラグ通貨が使えるようになってるって話だぜ。もちろん必要なら銀行ギルドのその国の各支店でドラグとその国の独自通貨をほぼ同じ価値で交換してくれるはずだ」

「とんでもねぇ巨大利権だ……」

「開いた口が塞がりませんね。つまり『WBG』はワールドバンクギルドの略ですか。なんで英語なんですかね」


 たまらず呟いたマリーの言葉に衛兵の男は答えた。


「英語ってのはわからねぇが、銀行ギルドの本部がイストラルっつー国にあるから、そこの国の古語だな。イストラル古国語ってやつだ。イストラル古国語とは言ってるが、公用共通語でも単語がよく使われてるからある意味では現役の言語ではあるな」

「なるほど。それで、なんで大店は価値の高い金貨をあまり使わなくなったんだ?」

「銀行ギルドが発行しているギルドカードが決済機能を持ってるからだな。どういう技術なのかはてんでわからんが、特殊な鉄の板を決済機にかざせば紐ついた銀行ギルドの口座から金を払えるんだとよ」

「そ、そうなのか(マジでどうなってんだこの世界)」

「上級冒険者も報酬が大きい場合は口座に振り込まれることもあるらしいな。俺にゃぁ生憎縁のない話だったがな。決済機があるような高級店やら何やらにも縁はなかったし、俺たち庶民は銅貨からせいぜいが金貨で大概のことは事足りるからな。まぁ冒険者やってた頃は口座も持ってはいたがな」

「よくわかった」

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