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デッドマスターはあんまり動じない  作者: 八神 黒一
6章 さらば領都レドア
112/339

112 倉庫整理依頼再び

 ヒリカハチスの植え替えから二日後。

 ウェイトリーは冒険者ギルドに来ていた。

 

 前日、巨大地竜の解体の定期的な進捗確認のために訪れていた冒険者ギルドにて、解体廃棄物倉庫の処理依頼と、可能であればという前提で、いつぞやのギルドと提携している貸家業を営む老人から、倉庫の整理の依頼がウェイトリー宛に届いていたのであった。

 

 それを受けてウェイトリーは、普段の時間よりやや早い時間にアーシアの小屋へと向かってリグレットにリーネリア嬢の訓練を頼み、置いてきた。

 本当のことを言えば、マリーと一緒に家から行ってもらいたい気持ちはあるし、リグレットもそれは十分に可能ではあるのだが、如何せん見た目がスーパーつよ怖アンデッドなので、街中を歩かせるわけには行かないのだ。

 最初に考えたのはスキンにてマシなものはないかと確認したところ、不審ではない見た目や姿になるものはあるのだが、どうあがいても顔を斜めに走るガイコツ顔だけはトレードマークとでも言わんばかりに変化がなかったので却下、マリーの魔道具、ローブやフードなんかで顔を隠すことも考えたが、そもそも入街記録の無い不審者になってしまう問題が真っ当な手段では解決できそうになかったので、結局ウェイトリーが走るのが一番手っ取り早いということになったのであった。

 ちなみに、現状、巨大地竜の解体が街の中で大流行りの見学コンテンツと化しており、街門の往来がかなりの人数になっていて、街門の守衛はかなり大変そうだというのも、へんなことをしないようにしようと思った原因の一つであった。

 

 そんなこんなで戻ってきた冒険者ギルドにてウェイトリーはエリナ職員と挨拶を交わしていた。

 

「こんにちは」

「こんにちは、ウェイトリーさん」

「生ごみ掃除と倉庫整理の依頼を受けに来ました」

「どちらも、六等級の依頼ではありませんが、正直助かります。ウェイトリーさんしかやっていないギルド倉庫の清掃はともかく、倉庫整理の依頼はほぼ毎回不人気依頼ですから」

「まぁ、前にやった時に可能なら次もとお願いされた縁もありますんで、領都を出る前でよかったですよ」

「ウェイトリーさんがいなくなってしまわれると、不人気依頼の消化が滞ってしまいますね」

「また別の担当者を探してください」

 

 困ったというように言うエリナ職員に苦笑気味にウェイトリーは答えた。

 まずはギルドの倉庫から終わらせることにして、もはや慣れた道のりを進んでギルドの裏手側へ。

 そこから、解体ででた生ごみの類が集められている倉庫へとやってきた。

 普段なら解体場の職員が一名ついてくるところなのだが、巨大地竜の解体が忙しい現在、解体場の職員は冒険者たちが獲物を持ち帰るピーク時を除くと最小限にしかいないため、今日は鑑定課の職員が同伴していた。

 とはいえ、ウェイトリーがする仕事は特に変わりなく、端末を取り出して、カメラ機能で回収するターゲットを指定し、画面タップ一つで集積された生ごみはきれいさっぱり黒い光に還元されて消えた。

 

「相変わらずこの仕事うますぎるなぁ。王都のギルドでもやらせてもらえればいいんだけど」

 

 まぁ難しいかもな、とまだわからないことを考えつつ、アフターサービスのクリーニングとピュリファイドをかける作業を倉庫に沿って四角く行い、慣れた手際でサクサクと終わらせた。

 

 無事片付いたことをエリナ職員に伝えて、いつも通りの決まった報酬を受け取りギルドを出て次の依頼へ。

 前回来た時はたどり着くのにやや時間を要したが、もはやレドアの地図は完璧といってもいいウェイトリーは迷うことなく前回と同じ位置に座っている老人の元へとやってきた。

 

「倉庫整理の依頼を受けてやってきた冒険者です」

「おお冒険者さん。まだ居ってくれてよかったよ」

「今月末か、来月頭くらいに出る予定だったんでちょうどいい時期でしたよ」

「おおそうか。また来てくれて助かるわい。早速頼めるか?」

「もちろんです」

 

 老人について行って、以前と同じ倉庫へと案内され、前回と同じように頼むと伝えられたウェイトリーは二つ返事で作業に取り掛かった。

 倉庫の中は、前回と比べればそれほどほこりや汚れがたまっているというわけではなかった。

 もちろん、それでも半年分のほこりと汚れがあるわけだが、以前みたよりも気持ちマシだな、とウェイトリーは思っていた。

 クリーニングの効力が高いのか、それともウェイトリーより前の掃除を担当した冒険者がそれほどしっかり掃除をしなかったのかそれはわからないが、まぁどちらにしてもクリーニング一発だしかわらんか、と作業にあたった。

 運び出すために一度資材カードへと変えて、倉庫内全てのものをカードに変えたら今度はそれを外に出してからクリーニングをかけていく。

 出したものの清掃が終われば今度は倉庫内の清掃。それが済み次第、外に出したものを順番に元あった場所へと戻していく。

 前回と同じく、位置を動かすものがあれば要望を聞くと老人に伝えて、少しばかりものを移動させて、特に時間をかけずに倉庫の清掃は終了した。

 

「相変わらずいい手際じゃね、冒険者さん」

「もう慣れたもんっすよ」

「よかったら茶でもしばいていかんかね?」

「あーいただきます」

 

 そうして、老人が最初に座っていた場所まで戻ってきて、日陰の辺りに置かれているテーブルに案内され、座ってしばらく待つように言われた。

 ほどなくして、コップを二つ持った老人が戻ってきて、その片方をウェイトリーに渡しつつ、老人も席に着いた。

 

「冒険者さんは、何ぞ夢でもあるんかね?」

「夢、ですか?」

「いや、わしが見るに、冒険者さんは育ちもよさそうじゃし頭もよさそうじゃ。じゃのに冒険者をやっとるから、なんぞやりたいことかやり遂げたいことでもあるんかと思うてね」

「いやいや、自分は別にいいとこの育ちってわけじゃないですよ。ちょっと遠くの、文化が違うところからはるばるやってきただけで、育ちも頭もそういいわけじゃないですよ」

「そうじゃったんか?」

「まぁほどほどだと思います。それで、やりたいこと、ですか」

「答え辛いことならええよ」

「別にそんなことはないですよ。でもそうですねぇ……、冒険者をやっているのはぶっちゃけ金のためですね」

「大半はそうじゃね」

「っすよね。それからちょっと知り合いによかったらやっといてもらえるか、くらいの感じで頼まれたことで世界中を巡る必要があるんで、それをするのに都合がいいから冒険者をやってるって感じですね」

「そうなんか。それは、あのでっけぇ地竜を倒すようなことかの?」

「おや? どうしてそれを?」


 少し不思議そうにウェイトリーは聞き返した。


「いやなに、倅がギルドの解体課で務めておるでな。珍しい獲物を持ち込む割に、普段はウサギ狩りをやっとる変わった冒険者がおると聞いておってな。まさに、冒険者さんのことじゃろうなと思ってな。

 そんで、その冒険者が街の外でやっとる地竜を狩った立役者ってのも聞いての」

「なるほど、そうでしたか」

 

 ウェイトリーは、言われてみれば、大森林の地図を渡したときにグラッツギルドマスターのほかに二人いた職員の片方に、なんとなく老人と顔立ちが似ているような気がする職員がいたのを思い出し、納得した。

 

 理由に納得して、聞かれた質問の答えを返すことにした。

 

「話戻りますけど、別にあの地竜みたいなのを狩るのが目的ってわけじゃないですよ。あの地竜はたまたま目的地に居座ってて、放っておくのも危なそうで邪魔だったし、連れが肉を食べたいと言うので倒しただけって感じですね」

「肉の為かぁ……。確かに地竜の肉はうまいからのぉ」

「解体が終わればいくらかは食べられると思いますよ。食いきれないんで肉は解体に関わった人にそれなりに寄付する予定ですから」

「おぉ! それはありがたいのう。倅に言っておかねばな」

「そうしてください」

 

 愉快そうに表情をほころばせる老人に、ウェイトリーは穏やかに答えた。

 

「そういえば冒険者さん、あれを狩るほどとは、今何等級なんじゃ?」

「今六等級ですね」

「六等か。あれほどのを狩るなら一等、二等でも驚かんが、冒険者さんは半年前は十等か九等じゃなかったんかの?」

「そうでしたね」

「じゃったら随分と早く等級が上がったんじゃな。地竜のお陰、というわけでもなかろう?」

「おじいさんは冒険者だったんですか?」

「現役の頃は四等じゃったよ」

「それはすごい」

「ギルドは結構ランクに関してはカッチリしとるからのう。大戦果よりも積み重ねでランクを評価する形じゃからなぁ。

 若いころは強い魔物を倒した方が冒険者としては格が高い、と思って居ったもんじゃが、しばらく冒険者を続けてりゃぁ、明確にランクをあげる基準があるってのは案外いいもんじゃと思ったもんじゃよ」

「自分の六等級までに上がるのに一番貢献したのは、連れのポーションの納品と、雨季のカエルでしたね」

「あぁ泥カエルか。あいつらはいい稼ぎになるからのぉ。雨季っちゅうことはその分評価も高いからの。それなら納得じゃわい」


 そんなこんなで老人としばらく冒険者トークを続けたウェイトリーはお茶を飲み切ったところで、話しを終えて、老人から依頼完了のサインをもらった。

 

「長話にまで付き合ってもらって悪いの」

「いえ、自分も冒険者の大先輩のお話を伺えてよかったです」

「そういってもらえるとじじいも助かるっちゅうもんじゃわい」

「では、自分はこれで」

「うむ。よい冒険をの。冒険者さん」


 老人に別れを告げてウェイトリーは冒険者ギルドへと報告へ戻って行くのであった。

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