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デッドマスターはあんまり動じない  作者: 八神 黒一
6章 さらば領都レドア
110/337

110 薬草栽培用土壌改良ポーション

 昼前まで回復に努め、『アウラ・ルクシア』の名付けを終えたウェイトリーとマリーは、今日も今日とてアーシアの小屋へとやってきていた。

 既にやってきていたリーネリア嬢と挨拶を交わし、リグレットに訓練を任せ、二人は小屋の中へと入った。

 

「こんにちは、アーシアちゃん」

「あ、マリー先生、ウェイトリーさん、こんにちは!」


 錬成盤でミスリルを粘土のようにこね回していたアーシアは顔を上げて、元気に挨拶をした。

 二人がやってきたのを確認してこねていたミスリルを四角く戻して錬成盤を片付けながら、ウキウキとした様子でマリーに尋ねた。

 

「今日はついに薬草用のポーションを作るんですよね?」

「そうですよ。ここ何日か、どんな効果が適切かをかなりしっかりと調べたので、今日はついに作りますよ」

「おおぉ!」

「今日は他にもやりたいことがあるのでテキパキとやっていきましょう。昨日の内に調べた必要素材は用意していますか?」

「あります! まずは今朝取れたばかりの薬草。それからこの間森で取ってきたイセチヨモギとガセカゴケ。それとに土と水の魔石ですね。最後に……、畑の土を井戸水でといた泥水です」


 最後の素材に若干の不安を感じるアーシアであったが、数日に渡り畑の調査をしながら薬草栽培用ポーションに必要な素材とその意味を教わっているため、素材自体は正しいし理にかなっているというのは、理解は出来ている。

 理解はできるのだが、イマイチ呑み込めない部分があるのもしょうがないと言えばしょうがなかった。

 だって泥水なのだもの。

 

 それらの素材を確認して問題がないことが分かったマリーは順番に指示を出した。

 

「ではまず泥水を鍋に入れて加熱しましょう。鍋に入れる前にバケツの方でよくかき混ぜてから、できるだけ泥を居れないように泥水だけを移してください」

「泥が入るとよくないんですか?」

「問題ないと言えばないと思いますけど、多いと品質が落ちる原因になりますよ」

「じゃあ気を付けた方がいいですね」


 それを聞いたアーシアは慎重な手つきでバケツを持ち上げてゆっくりと泥水を鍋に注いでいった。

 加熱版に火を入れつつ、鍋になみなみと注がれた茶色い液体を見ながらアーシアは言った。

 

「……次に飲むポーションを作るときは、しっかりと綺麗に洗ってから使わないとダメですねこれ」

「錬成が正しく成功すれば砂粒一つ残らないので普段通りでいいとは思いますけど、気になるならその方がいいかもしれませんね」

「次からは別の鍋を使おうかな」

「そのあたりはご自由に。さて鍋が煮立つ間に次の作業をしましょう。各種植物類を五センチ大くらいに刻みましょう。最近は薬草を刻まずそのままポーションに投入して作ってますけど、今回は慎重さ重視で行きましょう」

「畑に使うポーションですからね!」

「人間に使うポーションも大事ではあるんですけどね」


 言われたとおりに三種の植物を細かくなり過ぎない程度にカットしていく。

 以前は錬成盤の上で植物をカットしていたが、流石に今はちゃんとしたまな板が用意されていた。

 

「では次。これはかなり重要なので特に慎重にやりますよ。魔石の量をキッチリ量りましょう。今回は草属性に最も近い魔力質なので、魔石の比率は土が七の水が三ですね。鍋一つ分であればわかりやすさもありますし、七百グラムと三百グラムで」

「こんなキッチリ量れる魔道具初めて使いますよ」


 街の魔道具店で買った一グラム単位で計量可能な菓子職人用の魔道具を前に、アーシアはのんきそうに言った。


「今後何かと使う可能性があると思いますし、失敗できない調合の時には重宝しますからね。さぁ重さを量ってください」

「わかりました!」

 

 そういって、七百グラム分の土魔石を量るべく、まずは魔石をそのまま乗せて七百グラム手前まで数字を持って行って、その後、乳鉢ですりつぶした土魔石を少しづつ乗せて、キッチリと七百グラムになったところで別の乳鉢に七百グラム分の土魔石を分けた。

 続いて同じ手順で水魔石三百グラムも取り分けた。

 

「じゃあ分けた土と水の魔石を同じ乳鉢に入れてから全部砕いてください」

「なんだか魔石を砕くのも久しぶりです」

「ポーションを作るときはそのまま投入してますからね」

「このポーションって毎回こうしないとよくないんですか?」

「そんなことはないんですけど、どの程度工程を省略していいかは、今後アーシアちゃんが自分で試して調べてください。今日はとにかく慎重に工程を重ねて最高品質のものを作りましょう」

「了解です!」

 

 しばらく魔石を砕いてすりつぶし、それらを丁寧に混ぜ合わせていると、鍋一杯分の泥水が煮立ってきた。

 

「いい感じに煮立ってますね。素材を投入しましょう。まずは砕いた魔石を半分ほどお願いします。これは厳密に半分でなくともおおよそ半分でいいです」


 その指示を聞きながら真剣そうな表情でアーシアは魔石を投入した。

 鍋を覗き込みながら続けてマリーは指示を出していく。

 

「鍋をゆっくりと混ぜながら、カットしたイセチヨモギとガセカゴケをまず入れてしまいましょう。ヒナ草は後です」

「はい」

「入れたらまずは今の状態で均一化してください。均一化は徹底してほしいですけど、焦って濃縮までもっていかないでくださいね」

 

 指示の内容を正しく理解して、指示通りに鍋の中で魔力を渦巻かせて非常に丁寧に鍋の中の素材を一つの溶液へと整えていく。

 慎重かつ丁寧にその作業を五分ほど続けたあたりで、マリーは次の指示を出した。


「これが前提触媒の溶液ですのでよく覚えておいてください」

「わかりました」


 アーシアは『鑑定』と一言呟いて、その溶液を調べて、一つ頷いた。


「では、最後の手順ですが、ここからは水を張った鍋で下級ポーションを作る工程と同じです。今までポーションを作ってきた腕を存分に使って、濃縮百倍相当の下級ポーションを作る気で作ってみてください。

 ただ、作っているのは下級ポーションではないので、普段よりも制御が難しかったりしますが、そこは頑張ってください。

 あと昇華させちゃうと別物になりかねないので注意してください」

「わかりました!」


 そこからの集中力も大したもので、普段は片手間でも作れるようになった下級ポーションを真剣な表情と手つきで作り上げていった。

 薬草を入れ、魔石を入れ、鍋の中で渦巻くのは三重渦で、それらも普段と違うものでありながらブレやゆがみなどなく美しい流動を描いていた。

 水かさはぐんぐんと減って、やがてポーション瓶にして三本分程度の液量がなべ底に残った。

 アーシアはそれを丸底フラスコに移し替え、二人に見せるように掲げた。


「できました」

「鑑定してみてください」

「『鑑定』!」


 同じく鑑定を掛けたウェイトリーが見た内容はこのようなものであった。



――――――――――――――――――――――――――

 薬草栽培用土壌改良ポーション  品質10 レアリティSR


 [土壌改良][植物良質化][薬効上昇][病害耐性付与]

 [品質低下無効]


 詳細

 荒れた土地や植物栽培に適さない土地の土壌を改良し

 植物栽培に適した土地に整えるポーション


 様々な薬効植物に対して有効で

 特にその効果はヒナ草に対して強く表れる

 また 植物の味や風味に悪い影響を与えることはない


 使用量は大きな水桶いっぱいの水に対して一滴程度でよい

 三日から一週間に一度程度の散布で徐々に効果が蓄積され

 一年ほど続けることで

 散布せずとも良質な植物が育つようになる

――――――――――――――――――――――――――



「おおおおぉぉぉぉ!! すごい!!」

「これで、アーシアちゃんの最初のお願いを叶えることができるはずです」

「ありがとうございます! マリー先生!」

「はい。でもこれはアーシアちゃんが頑張った成果ですからね。誇ってください」

「やったー!」


 嬉しそうに飛び跳ねて喜びを表現するアーシアをマリーは微笑ましそうに見ていた。

 やがて飛び跳ねていたアーシアは我に返ったかのように立ち返り、フラスコを掲げて言った。

 

「すぐに撒きに行きましょう!」

「そうですね」


 颯爽と飛び出していくアーシアに二人はのんびりと続くのであった。

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