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デッドマスターはあんまり動じない  作者: 八神 黒一
6章 さらば領都レドア
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107 第二回フィールドワーク

 翌日。

 混雑が終わった頃の朝の冒険者ギルド。

 

 昨日の内に今日のフィールドワークの為のおさらいを済ませて、明けた翌日である今日、各々でギルドへと集っていた。

 ほどなくして全員が集合し、ウェイトリーがアーシアとリーネリア嬢二人で受付を済ませてから、森に行く段取りを整えるようにと言いつけ、二人は受付へと向かって行った。

 

 今度は前日に聞かされていたエリナ職員が二人を出迎えた。

 

「おはようございます、アーシアさん、リーネリアさん」

「おはようございます!」「おはようございます」

「本日のご用件を伺います」

「森での採取に行こうと思うんですけど、えーっと、今ある採取依頼を教えてください」

「それと、なにか森で注意することや気に掛けるべきことがあれば合わせて教えてください」

「かしこまりました。出ている採取依頼は、そう前回と変わりありませんね。ガセカゴケ、クサフセ、フウシベの三種が主ですね。ですが、薬屋から薬草、ヒナ草ですね。これの高品質なものの採取の依頼が入っていますね」

「薬草の採取ですかー。ウチの薬草じゃダメですね」

「そうですね。本数は最低でも二十本ほどで、可能なら百本ほどが望ましいようです」

「その依頼も、見つけたら持ってくればいいんですか?」

「いえ、こちらの依頼は単一の依頼ですので、依頼表を発行します。自由依頼ではないため、依頼未達となると少額の違約金が発生しますのでご注意を」

「違約金って、どれくらいですか?」

「このランク帯でこのタイプの依頼ですと、最低報酬額の十分の一ほどですね。加えてギルドの評価点の減点があります」

「なるほど」

「薬草採取ならアーシアちゃんがいれば大丈夫でしょ」

「それはまかせてよ!」

「ではエリナさん、その依頼の手続きをお願いします」

「かしこまりました。リーネリアさんは、昨日の納品依頼の達成数を更新しますのでギルド証をご提示願えますか?」

「……わかりました」


 昨日の内にその内容は既に話してあり、想像した通りやや膨れたが、とはいえそれほど大きく不満があるというほどでもないようであった。

 さほど時間を置かず更新作業を終えてギルド証は返却された。

 それと同じくして依頼表も渡される。

 

「こちらが依頼表の写しになります。今回は内容確認程度のものになりますが、場合によってはこれに依頼主から依頼完了のサインをもらうこともありますので、できる限り無くさないようお願いします」

「わかりました」

「森での注意ですが、昨日の段階では穏やかないつも通りの森であったとの報告があります。注意すべき点のおさらいは必要ですか?」

「オオカミがたまに出るからそれには気を付けることと」

「複数のゴブリンに注意すること、ですね」

「問題ありませんね。採取植物の確認はいかがしますか?」

「あー、間違えたら嫌なんで一応しておきます!」

「かしこまりました」


 そうして、エリナ職員は採取物の標本を二人に見せて、それぞれがそれらをしっかりと確認した。


「えーっと、もう大丈夫かな?」

「そうだね」

「よし。じゃあエリナさん行ってきます」

「無事のご帰還をお待ちしております」


 ここまでウェイトリー達は全く口を挟まず、成り行きを静かに見守っていた。

 今日は可能な限り最初から最後まで二人に任せるつもりでいるため、森に向かうのも二人任せだ。

 先を行く二人に追従するようにウェイトリー達は森へと向かった。

 

 

 森の中での探索は、なんというか拍子抜けするほど順調なものであった。

 採取するものの場所はおおよそわかっており、『調査』のスキルを得たアーシアからすれば、以前よりも詳細に場所や植物なんかが把握できるようになっていた。

 採取植物は以前よりも簡単に数をそろえることができ、個別に依頼されている薬草の採取もいい進捗を見せていた。

 また移動する道中にしてもリーネリア嬢の精度が格段に上昇している電流感知と『気配察知』のスキルによって魔物は必ず接近前には察知され、もしくは魔物に発見される前にこちらが発見するというケースも大幅に増えていた。

 以前は、精度や熟練度の関係からあまり広い範囲に展開できなかったが、今なら以前よりも広い範囲で確認できるようになったたその恩恵であった。


 ハッキリ言って、二人の実力はこの森では過剰と言えるほどであった。

 しかし、実力はともかく経験がたったの二回であることを考えれば無駄な部分はどこにもなかった。

 

 道中で必要な採取物を概ね揃え、昼の休憩のためにガセカゴケの採取地付近の沢で一同は足を止めた。


「ここでお昼にします!」


 アーシアの宣言を聞いて、ウェイトリー達も護衛騎士の二人も休憩の準備を始めた。


「あとはコケだけ?」

「そうだね! 薬草ももう五十本くらいあるし、こんなもんでいいでしょ」

「魔物の方は……、四件分くらいだね。またウサギが二匹とゴブリンが一匹、犬が一匹足りないけど感じになってるけど」

「それがあれば七件分?」

「そうだね」

「じゃあ最低その分だけは狩ろう。あとは、襲われない限りは放置で!」

「そうだね。キリがないもんね」

「でもリーネちゃんがもっと戦うっていうなら付き合ってもいいけど」

「うーん。この森の魔物はもう別にいいかな。なんだか弱いものいじめをしているような気になってくるから。魔物だからそこまで気にしてもないけど」

「確かにね。あっ、そうだ。次のランクに上がる依頼数って足りてるかな?」

「今の数だと……、ちょっと足りないかも」

「じゃあその分だけ魔物倒そっか」

「そうしよう。アーシアちゃんに数譲ってもらったから私も頑張りたい」

「別に気にしなくてもいいんだけどなぁ」


 その話し合いを終えて、簡単に昼食を終わらせた後ガセカゴケを採取して、話し合って決めた予定通り魔物の討伐に向かった。

 電流探知を駆使して、特定の魔物を探して狩ることで、以前よりも少ないロスで依頼達成数に必要なだけの魔物討伐を終わらせ、もろもろの確認を済ませ次第、一行は森を後にした。



 帰ってきたギルドにて。

 

「はい。常設の採取依頼が六件と薬草の採取依頼が一件、魔物の討伐証提示での討伐達成が九件、それからホーンラビットの納品が二件ですね。

 採取依頼とホーンラビットの納品依頼は頭割りで、討伐依頼はパーティ全員に達成件数が加算されますので、お二人とも、今回で八等級に昇格となります。おめでとうございます」


 返却されたギルドカードに記載された八等級の文字を見ながら、リーネリア嬢は問い掛けた。


「あの、ギルド評価というのは足りていたんでしょうか?」

「達成してもらっている依頼がほとんど不人気依頼なので比較的評価は高めになっています。それからポーションの納品は基本的にどのギルドでも高評価対象です。

 そのあたりはウェイトリーさんとマリーさんの生徒さんといった感じですね」

「ん? マリー先生はポーションでわかるんですけど、ウェイトリーさんがですか?」

「俺は基本的に不人気依頼しかやらんのよ」

「どうしてですか? お金に困ってないから?」

「それもあるにはあるんだが……、まぁアレだ。いつもよりも早い時間にギルドを覗いてみると理由はわかると思うぞ」

「はぁ?」


 アーシアもリーネリア嬢も二人して首を傾げていたが、ウェイトリーはいつも通りの真顔、或いはぼーっとしたようないつもの表情でそれ以上は特に言わず、マリーもニコニコ顔、エリナ職員はやや苦笑といった表情であった。


「アーシアちゃん、今度依頼に出かけるときにちょっと早く集まってみようよ」

「確かにちょっと気になるけど、採取はまた今度ね。今日も結構いろいろ取ってきたし」

「えー」

「まあまあ、そのうちまた行くから」

「そのうちって明後日?」

「いや、流石にそれは早いって」

「えー」


 やや不満そうにするリーネリア嬢をアーシアはなだめながら、そのうち無理やり連れ出されたりしないだろうか、という危惧を抱いていた。


「さて二人とも。ちょっと聞いてくれ」


 いつ行く攻防を続ける二人に声を掛けつつウェイトリーが話し始める。


「今日の探索を見る限り二人の実力は、領都の森では十分に通じていると判断できた。フィールドワークとしては十分な成果だ。よくやった」

「ありがとうございます!」「ありがとうございます」

「実力は十分だがそれでも経験はまだまだ足りていないだろうから、あの森には最低でも一、二週間に一回程度は通って森に慣れることだ」

「ウェイトリーさん、もっと行く分にはかまわないですか?」

「まぁかまわないよ。ただ二人で合意の上で行くんだぞ」

「わかりました」

「……ホントにわかってるか?」

「わかっていますとも」


 得意げに言うリーネリア嬢にそこはかとない不安を感じるウェイトリーとアーシアであったが、言ってもしょうがないことかとこの場は置いておくことにした。

 

「んじゃまぁ、今日のフィールドワークは終わり。アーシアの小屋に戻るか」



 そうして第二回フィールドワークは無事に終わったのであった。

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