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デッドマスターはあんまり動じない  作者: 八神 黒一
6章 さらば領都レドア
102/334

102 スキルを選ぶ

 人心地付いてスキルの確認を始めたマリーは、なんの憂いもなく『オールレンジスキャン』が使えるようになっていた。

 

「このスキルずる」

「ギャザラーウェイトリーの全てだぞ」

「このスキルがすごすぎて逆に物探しが下手になりそうです」

「否定できない」


 使い心地に呆れ半分感心半分といった感じで十分に試し、満足したのか、話はスキルについての話題に戻った。

 

「主さまは他に三つも複合スキルを持ってますよね? そのあたりの条件もご存じなんですか?」

「知ってるぞ」

「私にも覚えられますかね?」

「もう二度と飲みたくないんじゃななかったのか?」

「のど元過ぎれば熱さ忘れるというじゃないですか」

「とんでもない急速冷凍だな。もはやフリーズドライだよ」

「それで? 条件教えてくださいよ」

「エルダリア時代だと絶対に教えなかった秘中の秘なんだけどな。まぁいいけど」


 そういって語ったのは複合スキルの内訳であった。

 まずは、先日のスパイクアルミラージスタンピードで完全な空気と化していたり、探索中や戦闘中にオンオフを切り替えてよく使っている『天地一心』。

 これに必要なスキルは、『気配察知5』『追跡5』『行動予測5』『環境同化10』『人類学5』『宮廷儀礼5』『気配遮断10』の八スキルに加えて、『探索系スキルレベル合計100以上』と『知識系スキルレベル合計100以上』という条件が加わる。

 エルダリア時代では、ウェイトリーただ一人使うこのスキルは『環境同化』の上位スキルだとまことしやかにささやかれ、隠密系のプレイヤーたちはそれに関係するスキルを血眼になって探していたようだが、必要なのは知識スキルのために図書館に籠ることであるとはウェイトリーは終ぞ口にしなかった。

 何より『宮廷儀礼』を取得する必要があるなど思い至るものなどいるはずもなかった。


 次に『弱点看破』。

 これはかなり有名かつ比較的シンプルな取得条件で『鑑定10』『鑑識5』『解体術5』『魔生物学10』の四つであった。

 これを取得しているプレイヤーもウェイトリー単独ではなくそれなりに取得者の存在するスキルであり、効果もモンスターと戦う時に大いに発揮するため人気の高いスキルであった。

 ただ、ここでもネックになるのが『魔生物学』で、このスキルで断念するプレイヤーは数多くいたという。しかしモンスターと数多く且つ長く戦っていれば少しずつでも上がっていくスキルでもあるのでプレイヤー歴が長いプレイヤーは適度に上がるものでもあった。


 最後にまだスキルを戻しきれていない『弱点特効』。

 条件は『弱点看破』『感知10』『解体10』『解剖学10』『弱点攻撃回数:10000回』『弱点攻撃キル:10000回』『連続弱点攻撃回数:1000回』というものであった。

 このスキルを取得しているものもウェイトリー単独ではなく、狙撃を得意とするフォレストガードクラスのアーチャーやミリタリーアームズクラスのスナイパーなどは比較的取得者が多かった。

 モンスター撃破時に素材が増える『解体』とレア素材の入手確率が上昇する『解剖学』スキル、汎用性がそこそこ高い『感知』など取得者が多いスキルが前提となってはいるが、条件の部分で、特に『連続弱点攻撃回数:1000回』という部分が数々の発狂者を生み出した曰く付きのスキルでもある。

 連続攻撃系の攻撃では一回分の判定であるとか、一回の攻撃の威力より相手のHPが大幅に低い場合は無効であるとか、同一個体で稼げる回数が決まっておりボスで最大十五回、レイドボスなら三十回、それ以外は一律個体につき一回(回数がカウントされないだけで上限に達しても弱点攻撃事体は続けないとカウントが途切れる)など見えない条件が無数にあり、かつどこにも連続弱点攻撃回数をカウントする表示がないため成否がわかりずらいという苦行を強いられることになるのである。

 まぁアーチャーやスナイパーは条件の方はあっさり取れてしまうというものも多かったようではあるが。


 スキルの取得条件を聞き終えたマリーは、うーん、唸り取得が可能かを考えてみた。

 

「他は私にはちょっと厳しいかもしれませんね」

「少なくとも今すぐ飲んで取得できるものはないな。あーいや『弱点看破』は可能じゃないか?」

「それは多分もう持ってるんですよね。魔物を見れば生物的急所や属性相性をおよそ判別できるので」

「なんか『弱点看破』より上位互換なスキルの気配を感じる」

「私にはわかりませんけどね。特に今はスキルの判別なんかも出来ませんし」

「まぁそもそもほかはそれほど必要でもないってのもあるか」

「『天地一心』は取得できるなら欲しいですけどね」

「『環境同化』のスキル上げが結構苦行なんだよなコレ」

「もらえるなら欲しいというくらいなので苦行をしてまではちょっと」

「でしょうね」


 マリー自身のスキル取得の話に一区切りつけ、話の本題に当たる、アーシア・リーネリア嬢両名にどのようなスキルポーションを渡すべきかという話に推移した。

 

「まずはアーシアから決めていくか」

「そうですね。まず二人ともに言えることなんですが、何にしても『鑑定』ですね。作ったものの性能や植物類の効能を測ったりするのもそうですし、魔物事体がどういう生物かなどを判別したりするのにも有効ですからね」

「EWOでも絶対取得するべきスキルに入ってたスキルだからな。異論なし」

「あとは私としては『調査』がいいと思うんですが」

「場所を調べて情報を得るスキルだな。『鑑識』と比べて環境調査向きの効果だな。採取場所や畑の状態を調べるにも有効なスキルだしいいんじゃないか?」

「他は植物系以外の採取関係のスキルがいいと思うんです。植物関係の採取はアーシアちゃんは既に持ってそうですし」

「農家の娘だからな。そうなると『鉱物採取』と『神秘採取』だな。あと動物・魔物素材の入手という意味で考えれば『解体』もありか」

「『神秘採取』は使う機会があるかはわかりませんが、いざその機会に出くわして採取できないのはかなり痛いですからね。他の二つもいいと思います」

「となるとあと一つか。ものを見つけやすくなる『感知』、採取にも薬草栽培にも効く『薬草学』、あとは採取の時にも役に立つ『隠密』あたりか」

「学問系はいいと思うんですけど、魔導書にも内容を載せましたし自分で調べてこそだと思うので外しましょう。『感知』と『隠密』なら、身を守ることにも使える『隠密』ですかね」

「そうだな。いざという時の隠れる能力は多少なりとも危険地帯に踏み入るなら必要だろう」

「じゃあその六つで行きましょう」


 アーシアのスキルポーションは『鑑定』『調査』『隠密』『解体』『鉱物採取』『神秘採取』に決まった。

 続いてリーネリア嬢のスキルなのだが、ウェイトリーは少し難しい顔をした。

 

「できれば攻撃的な戦闘系のスキルを積んでやりたいところなんだが、EWOはシステム的に戦闘スキルはカードでデッキに組み込んで使うものだからなぁ。ステータスに表示されるスキルには戦闘系にスキルってほとんどないんだよなぁ」

「そういえばカードを錬金術の素材として使用することでスキルポーション化することってできないんでしょうか?」

「いや、そんなの知らんよ。どちらにしても俺には未知の領域だ。あーでも、今の手持ちじゃ大した戦闘用のスキルもないし、デッドマスターにはそもそも大した戦闘用スキルがない。あってもアンデッドに絡むものがほとんどだな」

「カードを素材に使うというアプローチは今後考えてみてもいいかもしれませんね。思わぬブレイクスルーを生むかもしれません」

「まぁ今は置いておこう」

「そうですね。『鑑定』は入れておくとして、主さまとしては戦闘に役立つと言えるのはどういうものがいいと思うんですか?」

「まぁ戦闘を補助するものがメインだな。多分一番有用なのは『行動予測』。次に『気配察知』と『気配遮断』あたりか。あとは物探しの面も強いが『感知』も『気配察知』と合わせて取得すれば不意打ちなんかの対策には有用だな」

「『投擲』はどうなんですか?」

「あーまぁいいかもしれんな。と言っても投げる程度のことは練習で上がっていくはずだから必須と言うほどではないだろうけど」

「でもスキルを持っていれば成長も早いですし、威力も上がりますよね?」

「少しだけな。上がるのは弾速と命中精度がメインだな。あとは投げ方か。不利な姿勢や崩れた姿勢からでも一定以上の威力と精度が保証される感じだ」

「よさそうに聞こえますけど」

「魔術でいいじゃんって気もする」

「魔力なしで運用できる点もいいと思います。凍結武装とも相性いいですし」

「なら入れとくか」

「でたものをまとめると六つありますけど、他は、ちょっとリーネちゃんに持たせるには地味ですね」

「そうだな。採取関係だの斥候関係だの中途半端な製作関係だのだからな。しいて言えば『隠密』か」

「スーパー魔法剣士暗殺令嬢の出来上がりですね」

「なんか物騒だからやめよう」


 こうしてリーネリア嬢のスキルも『鑑定』『感知』『投擲』『気配察知』『気配遮断』『行動予測』で決定した。


「で? これっていつ頃飲ませるつもりなんだ?」

「早い方がいいですね。ウサギ暴走の時に延期になった第二回フィールドワークには飲ませた状態で行かせたいですし」

「今なら一本くらいは作れるか」


 試しに錬成盤を起動して、アーシアに渡す予定のセットを設定した。

 

「魔力が足りないと困るので、一応これ飲んでおいてください」


 そういって渡されたのは濃い群青をしたポーションで、それはMPを回復する魔力ポーションであった。

 ただウェイトリーはこんな濃い魔力ポーションは見たことがなかったが。

 若干嫌に気分になりつつも、それをグイっと呷れば、ドロっとした飲み口が不快感を煽る程度で味は不味くも美味くもなかった。

 端末のステータスを確認すればMPが即時に千ほど回復しており、加えてなかなかの勢いで継続回復していた。

 数値の回復量と回復速度が異常でものすごく不安になったウェイトリーは恐る恐る聞いてみた。

 

「これ健康に被害はないんだよな?」

「一本であればないですよ」

「……二本飲んだら?」

「死にはしません」

「……。」


 それ以上は怖くて聞けなかったウェイトリーは魔力の回復を待ってから錬成盤に魔力を流し込んだ。

 スキル六個に必要な魔力は、予想に反しておよそ四千ほどで、単純にスキル一つにつき五百というわけでもなかったようだ。

 だが、回復をちゃんと行っていたおかげもあって無事アーシア用のスキルポーションは完成した。


「お昼までには魔力が回復しきりそうですし、今日二人に渡すことが出来そうですね」

「このようにしてデッドマスターの干物が作られ、皆様のご家庭に届けられるのです」

「干物にならないようにもう一本いっときますか?」

「やめろ」



 そんなこんなあり、昼前には回復が終わり、リーネリア嬢のためのポーションを無事作ることができ、昼食を終えた二人は、出来上がったポーションを携えてアーシアのポーション工房へと向かうのであった。

 デッドマスターの干物。

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