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虚無  作者: 春夏 凪
1/1

晴天

「斎藤君さ...昔いじめてた子が自〇しちゃったってほんと?」

身に覚えがないと伝えた。

「村田君って子、知ってるよね?その子のこといじめてたって聞いたんだけど...」

いじめと指導は全くの別物である。

私は村田のためを思って精一杯指導した。

それに村田は、交通事故で〇くなったのだ。

事実無根である。

私は彼女にいじめと指導の違いについて詳しく話して聞かせた。が、彼女は聞く耳を持たなかった。

「私、昔いじめられてた話したよね。そういう人種は死ぬほど嫌いなの。ごめんなさい別れてください」

ドアノブに手をかける彼女を見た。

あの女の背中はあんなに丸かったか?

昔から人間関係が長く続かない。

去る者は追わず。

それが私のルールだ。

気分転換が必要だ。

今日は部活動がある。

少し早いが、大学へ向かうことにした。

部室の前についた。

部室に、何人かのかげが見えた。

後輩たちだろう。

後輩たちの会話が聞こえてくる。

「斉藤さんガチで無理なんだけど。口うるさいわりにスタメンでもないし。選ばれなかったからって俺らに八つ当たりするのやめてほしいわ」

「斉藤きしょいよな。あいつ高校生の時に、いじめた人が自◯したらしいよ」

「犯◯者やん。まじであいつ好きな人いないだろ。よく平気で生きられるよな」

日頃の彼らの練習態度は、評価されるべきものだ。

上級生である私に対する態度も素晴らしい。

本人を前に失礼な態度をとったわけではない。

そのため、陰口は聞かなかったことにするべきだろう。

私は部室を後にした。

部活動がはじまるまで、ランニングをすることにした。

普段よりも身体が重く感じる。

集中力が低い。

そのためか不注意により転倒してしまった。

ランニング中に転倒したことははじめてだ。

膝をすりむいていた。

途端、涙が止まらなくなった。

自分がどうして泣いているのか見当がつかない。

彼女と別れたことが悲しかったのだろうか?いや違う。彼女はまた新しく作ればいいだけだ。

後輩たちに陰口を叩かれたことだろうか?いや違う。陰口を叩かれるということは、厳しく指導できるている証拠だ。誇るべきことだ。

心当たりを探したが思い浮かばなかった。

心配する必要がないことを心配して、不安になる必要はない。

通りかかった男が、大丈夫かと声をかけてきた。

男が私の腕に右手で触った。

左手にはタバコを持っていた。

歩きタバコはマナーに反する。

私は男にそのことを伝えた。

男が声を荒げる。

私の胸ぐらを掴んだ。

これは正当防衛だ。

私は男の顔面を殴打した。

抵抗する男の腕をおさえつけて、顔面を殴打し続けた。

男は涙を流しながら「やめてくれ」と私に懇願している。

男を見て、やはり私が涙を流す必要はなかったとわかった。

私はまわりを歩いていた者たちに取り押さえられ、到着した警察に身柄を確保された。

私は一方的に暴行を加えた。

一方的な暴力はルールに反する。

ルールを犯した者が、罰を受けることは良いことだ。

危険を承知で向かってきた彼らには、敬意を示す必要がある。

空が青く澄んでいる。

雲ひとつない。

心は非常に晴れやかである。

私はずっと、これがみたかったのだとわかった。

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