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春と沙羅

ひねくれ者ブルース

作者: 川里隼生

 今日の横浜市は雨。私の好きな雨。春雨ってやつだ。食べ物の春雨も、この春の雨が名前の由来だと読んだことがある。個人的にはあまり好きな食べ物ではない。食べた感じがしないから。


 私は誰かから聞いたことより、何かで読んだことのほうが多い、気がする。人と喋るより本を読むほうが好きだ。本は私を否定しないから。小学校で仲良くしてくれた子と別々の中学に行ってから、周りが私を否定し始めた。みんな私を否定ばっかりする。笑われ者はもう嫌だ。


 話を本に戻して、私が好きな作家は宮沢賢治。『銀河鉄道の夜』や『雨ニモ負ケズ』が気に入っている。私も褒められなくていいから、その代わり誰からも苦にもされずに、一人でひっそりと暮らしてみたい。なんで学校に行かなければいけないのだろう。不登校の私が言うのもおかしいけど。


 宮沢賢治には妹がいた。名前はトシ。もし現代にいたら、心ない生徒たちから名前をばかにされそう。『欧米か』みたいに。彼女は体が弱かったらしい。そう読んだことがある。兄より先に死んでしまって、その弱い体を恨んでいたのかもしれない。


 もし私の前世がトシだったら。中学校の図書室から借りっぱなしの『注文の多い料理店』を途中で閉じて、そんな突拍子もないことを考えてみる。私の体は健康だ。でも精神面はどうだろう。もしかしたらトシのほうが健康だったんじゃないか。


 私は自分の周りを恨む。きっと一生、こんな寂しいことを考えて生きていくんだ。寂しい。だけど、なぜか私はこの寂しさが愛おしい。雨が好きなように、私は他の人と違う感覚を持っている。だから宮沢賢治が好きなのかもしれない。宮沢賢治は死の直前、孤独な人になりたいという詩を残した。


 きっと、宮沢賢治も苦しかったんだと思う。


 苦しいよ……。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 川里隼生様の作品、いつも楽しく拝読させて頂いています。今回は春と沙羅シリーズを全て読ませて頂きました。 軽妙な語り口の中に見え隠れする命のやり取りがなんとも切なく、沙羅が駆け抜けた青春のひ…
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