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『ニュース見た! 十年前にそんな大事件起きてたんだな』


『十二人の子供って……酷すぎる。ご冥福をお祈り致します』


『このニュースのリツイートばっかりでウザイ』


『俺まだ五歳だわ。でもニュースは当時見た事ある』


『私もこの事件の時、学校休校になりました。全然別の県だったんですけどね』


『三人生き残ってる? まだ生きてる?』


『生きてたら俺と同年代か』


『ニュースでさ、当時SNS普及してないみたいな事言ってたけど、そんな事無いよな? 十年前でも鳥とかミクとかあるんだし』


『いや、十年前はまだガラケー勢が多かった。スマホが普及して爆発的にSNSも普及したから。ちなみに当時俺もガラケーだった』


『警察仕事しろ』


『してたよ。でも当時マジで犯人の目星すら付かなかったな』


『犯人宇宙人説』


『遺族の気持ち考えろカス。お前みたいのが犯罪起こすんだよ』


『ご冥福をお祈りします。一日も早い犯人逮捕を切に願います』


『そういえばさ、噂なんだけど……この事件の生き残りが復讐してるって』


『んなニュースねえよ』


『ぁ、でも私もその噂聞いた事あります。都市伝説的な』


『だから被害者の気持ち考えろカス。そんな噂吹聴してどうするんだよバカ』


『なんかグロい画像がたまにネットに上がってるらしいよ』


『そうそう、拷問されたみたいな』


『キモ』


『ないわー、お前等の行動がマジでないわー(笑) 小学生かよ』


『その画像、私も見た事ある。目とか抉られてて、もう悲惨すぎる』





 暗い空間。私はスマホを弄りながら椅子に座っている。

 そして目の前には椅子に縛り付けられた状態の男が一人。

 

 スマホの画面の光に誘われて、小さな羽虫が飛んできた。私はそれを払いながら、苛立ちを押さえつつ目の前の男へとバケツに入った水を頭からかけた。


「ん……! ゲホッ! あぁ……が……」


 バケツを捨て、スマホのカメラを向けた。先程歯を全て抜いてやったせいで、画面に映る顔は醜く歪んでいる。私はそのまま机の上のペンチを取り、椅子に括りつけられた男へと見せつけた。


「は、はへほ……はひは……へは……」


 何と言っているか分からない。遅らく命乞いか何かだろう。

 私はその男の親指の爪をペンチで挟むと、そのままゆっくり引きはがそうとする。


「あぁぁ、あぁぁぁ!」


 しかし上手く剥がれない。爪は途中で折れてしまった。もう散々この作業はしたのに、一行に上達しない。


 私は舌打ちしつつ、次はバールを手にする。そのまま野球の選手のマネをしつつ、男の腹へとフルスイング。しかし男は後ろに倒れるだけで、恐らく骨も折れてないだろう。私もまだまだだ。


「はひは……ひあひぃぁ!」


 先程から私は何をしているのかと言えば、単純にこれは趣味だ。そう、ただの趣味。


「……上手くならないな……」


 私は苛立ちを隠し切れず、椅子ごと倒れた男を再び起こし次はフォークを手にする。

 これで目を抉る。でも眼球は思ったより硬い。今度は上手く出来るだろうか。


「おはへ……! はひふふんふぁ!」


 相変わらず何と言っているか分からないが、私はなんとなく男が言っている事を想像しながら会話を試みる。


「貴方達、よく上手に爪剥がしたり骨折ったりできましたね。私も見習わないと……貴方達があの子達にしたみたいに……」


「……はへほ……へほろ!」


「これは私の趣味です。断じて復讐なんかじゃないですよ。貴方達の汚い存在で……あの子達の魂を怪我したくないですから。いやいや、何言ってるんだ私……霊魂なんてあるわけないじゃん……」


 そうだ、この世界にそんなオカルトな物は存在しない。

 でもこれは、あくまで私の趣味。断じて……断じて復讐などでは無い。


 私は殺人鬼。ただの殺人鬼。今目の前にいる、子供を殺して喜んでいる変態と同じ……殺人鬼。


「……知ってますか? 飢餓の塔に幽閉されたウゴリーノって人。ぁ、八百年くらい前の人なんですけどね。お腹空いて家族食い殺したって人です。それを旅の詩人、ダンテは新曲の中で最悪の罪とし、ウゴリーノを最下層の地獄、コキュートスに落として裁いています」


 フォークを眺めながら、私はそっと男の目の前へと突き出す。


「でも私は……ただの趣味ですから。貴方を裁こうだなんて考えてもいません。これはただの娯楽。貴方は私の娯楽の犠牲者。貴方のその惨めな姿を見て、私は快楽に浸るというわけです。私の快楽の道具になった気分はどうですか?」


 そう、ネットでどういわれようが……決して……決して復讐などでは……


「快楽……? あはは……ふざけるなぁ!」


 男の胸を蹴り上げ、そのまま再び椅子ごと倒した。

 フォークを握りしめたまま、男の腹へと乗り顔を殴打する。何度も、何度も。


「何が快楽だ! こんなんで……こんなんで何が……! お前等みたいなゴミの快楽の道具にされたのか?! あの子達は……私の友達は! くそ、くそ! 死ね……死ね……死ね!」


 何度も何度も……手が痛くなっても殴り続ける。

 すると突然、私の手が止められた。私と一緒にこの男を拉致したヤクザの人だ。


「……もういいだろ坊主。そろそろ俺達の番だ。坊主はもう家に帰りな」


 私は男の腹から降り、最後に一発、思い切り男の顔を踏みつけた。

 嫌な感触がした。足の裏にとても嫌な感触が。


「おい、送ってやれ」


 数人のヤクザが私を守るように屋外へと。そのまま高級車に乗せられ、私は元居た居場所へと返される。


 また殺せなかった。

 これでもう十一人目だ。ちゃんと殺さないといけないのに。これは私の趣味なのに。


「ごめんね……私、ちゃんと……悪い人になるから……」


 そうだ、悪人にならなければ。

 私は殺人鬼。汚い大人、十一人を殺した……殺人鬼。


 



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