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第22話_運命の行方


 無名都市。惑星上で緯度、経度ともに零度に位置する天蓋都市(てんがいとし)の名称だ。


 無名都市は一般の天蓋都市(てんがいとし)のような「都市国家」と異なり、都市としての名前をもっていない。無名都市にはすべての天蓋都市(てんがいとし)の出資によって大がかりな研究機関や施設がいくつも設置され、その中心に全天蓋都市(てんがいとし)間連盟の本部があった。本部近くの最高級ホテルの地下駐車場に、ライたちは二台の車の分かれて待機していた。


「貧乏ゆすりは止めなさいよ。いくら高級すぎる車が性にあわないからって」


 後部座席のエイミが、前部助手席のライへ声をかける。


「違う。単に落ち着かないだけだ」

「大丈夫。お祖父様に連絡がつかなったのは痛いけど、俺がなんとか議会を説得してやるから」


 後部座席のナオが言う。彼女は礼服と呼ぶには控えめすぎる、派手で豪華な服を着ていた。よく洗われた栗色の髪は丁寧に整えられ、化粧もしている。ライが知るナオとは印象が大きく異なっており、ライは目をあわせることができなかった。


 隣りの車に乗ったヴァネッサが合図する。運転席のヴィネスが車を発進させた。


「またネクタイを緩めている。だらしがないんだから」


 エイミが前の座席のほうへ身を乗り出してきた。ナオ以外の全員も礼服を着せられている。慣れない窮屈なネクタイを、ライは無意識のうちにほどいていた。


「いいよ。自分でやる」


 鏡を使って絞めなおし、ライは時計に目をやった。連盟の会議は予定より二時間遅れで始まった。



 **********



 席についたバルロイは、机に用意してあった冊子へ目を通した。


「やはり大異変に関する提案は載せられていませんね」

「姑息な真似を。強引に発言するしかないな」、隣りのアルがろくに冊子を読まずに舌打ちした。


 各天蓋都市(てんがいとし)の市長は連盟の議員として、議事室中央に何段も設けられた正面席に座っている。その数、二百余人というところだ。一番前には市長たちと向かい会う形で議長席があり、傍らには常任理事である七つの天蓋都市(てんがいとし)市長専用の席が並んでいる。バルロイとアルは議事室脇の、意見参考人としての席が与えられていた。


「こう大勢の前ならば僕たちを傷つけることはできないでしょうが、敵が素直に発言させてくれるとは思えません」

「そのためのナオミ嬢だ。連盟創立者の代理人ならば無視することはできんだろう。

 どうした?」


 バルロイは冊子を睨みつけていた。


「気になる審議案が載っていて」、バルロイは惑星外開拓部門への研究費の予算案を指差した。

「やけに割り当てが多すぎます。ファブリナスの市民総生産さえ上回っていますよ」

「そんなに重要とは思えんが……」

「アル。何故彼らが大異変のことを潰したがるのか、考えたことはありますか?」


 バルロイは冊子を置き、顎に手をあてる。アルは首を横に振った。


「隠そうとするのは、それが公にされると困るからです。大異変のことが多くの人々に知られると困る。それが何故なのか、これまではわかりませんでした。ですが……ようやく答えらしきものを見つけましたよ」


 バルロイが続けようとすると、議長が入室してきた。その頃までには、市長たちの席はあらかた埋まっていた。最後に、七人の男たちが議長の隣りの目立つ席へと腰をおろした。《七海神》の一人が議長へ目で合図を送る。議長はすべての扉を閉めさせ、全天蓋都市(てんがいとし)間連盟会議の開始を告げた。


「進行予定の冊子には載っていませんが、《七海神》のほうから提案がひとつ出されています。最初にそれをおこないます」


《七海神》の代表が椅子から立ち上がることもなく、簡単な挨拶を口にした。


「現在、常任理事は我々七つの天蓋都市(てんがいとし)だけとなっているが、経済的地位や都市関係への貢献を考慮して、ファブリナスを加えようと考えている。このことについての承認を他の天蓋都市(てんがいとし)へ求めたい」


 直後、机を強く叩いた音が響きわたり、

「異議あり!」

 怒声とともにデュレイルが席を立った。



 **********



 車を降りたライは連盟の本部を見上げた。


 重苦しい色調のその建物はあらゆる都市の中でも最も高く、先端は雲の上にかすれてしまって見えない。玄関前に長く伸びた階段には植え込まれた木々や花壇が広がり、どれぐらい幅があるのか見当がつかなかった。


 車の中にいるナオが窓を叩く。ライは、後部座席のドアを開けてやった。


「女に開けさせるつもりかよ。気のきかない馬鹿だな」


 ナオが小声で言う。ライは顰めっ面の彼女から目をそらした。もう一台の車からも、ヴァネッサとイアン、リー・インとフォルン、ディアスが降りていた。ヴァネッサが話しかけると、リー・インが小さく頷いた。


 連盟本部を仰いでいたフォルンが嘆息をもらす。


「ここで、すべてが無事に終わるんだね」


 フォルンが海上語で、エイミに言う。


「そうよ。無事かどうかはわからないけど」

「大異変が間近に迫ってることを、みんなに知ってもらうんだ」


 不安そうなエイミに、ライはつけ加えた。


「その前にやることがありそうだぞ」


 ヴィネスが階段の上へ視線を投げた。正装姿の数人の男たちがこちらへ早足で向かって来る。


「警備の連中だ。無視するつもりでいろよ。堂々としていれば絶対に負けないから」


 ナオが言い、ライに右腕を差し出した。なんのつもりかわからずにライが尋ねると、

「俺の手を引いていくんだよ。淑女に一人で階段を登らせるつもりか? 上流社交界の常識だぞ」

 ナオはにこやかな笑みを崩さずに非難した。


「常識知らずで悪かったな」


 手を取ろうとしたライは鋭い視線を感じた。振り向くと、エイミが半眼で睨みつけている。


「いや、これは仕方ない成りゆきで」

「なんで言い訳なんかしてるのよ? 勝手にすればいいでしょ」


 エイミがライの脇腹を強くつねり、そっぽを向く。ライは痛みをこらえ、手袋をつけているナオの指先を取った。


 手を引かれて階段をゆっくりと上がっていくナオは、ライの知る彼女ではなかった。うつむき気味な表情は愁いをたたえており、聡明さを宿した青色の瞳が美しさを強調している。いくつもの宝石をちりばめた礼服の豪華さを抑えつけ、内側から輝いているような印象をライは抱いた。


「お勤めご苦労様です。下に停めてある車を駐車場のほうへ回しておいてください」


 五人の警備係へ、先にナオが言葉をかける。何事もなかったように進むナオとライへ道を譲りかける男たちだったが、


「お待ち下さい。只今連盟の会議がおこなわれていまして、関係者以外の方は建物に入ることをご遠慮していただくようお願いしているのですが……」


 その中の一人が思い出したように言ってきた。ナオの手が載った掌に抵抗を感じ、ライは足を止めた。


「わたくしをご存じないのですか? 貴方、このお仕事を始めて間もないのですね。わたくしの名はナオミ=オールドリッジ。祖父であるエルモアの代理人として、本日は参りました」


 警備の男たちを見回しながら、静かに告げるナオ。男たちは戸惑い、互いに顔を見合わせていた。


「貴方がたではお話になりません。警備主任をお呼びなさい」


 やわらかだが、拒否を許さない声だった。



 **********



 ナオを前にして、議事室の厚い扉が警備の男によって開けられる。最初に足を踏み入れたライは目を疑った。


 大勢の男たちが議場の一画にかたまっている。議席の間の通路が埋まっており、口々に何事かをどやしつけている。騒ぎの中央に、背の高いアルとデュレイルの姿が認められた。


 ハミルへ進もうとするデュレイルを、アルとバルロイが押さえつけていた。なにを喚いているのか、ライたちのいる入口あたりでは聞こえなかった。


「みなさん。どうかお静かに」


 澄んだ声が響く。ライが見ると、いつの間にかナオが議長席のマイクの前にいた。ナオがもう一度同じ言葉を繰り返すと、やかましかった議員たちが静まり返った。


「ナオミ嬢だ」

「まさか……。どうして今頃?」


 そんな囁き声がそこかしこから聞こえる。


 ナオは一礼してから、議場にいる面々を見回した。


「皆様、お久しぶりです。二年もの長い間、公式の場から退いていたことをお詫びしなければなりません。身勝手であることは承知していますが、詳しい事情は後にさせていただきます。

 本日こちらに参ったのは、皆様に聴いていただきたいことがあるためです」


 顔色を青く変えたハミルが口を挟む。


「議長。ファブリナスの常任理事任命の審議を先に。ナオミ殿、物事には順序というものがあるのでは?」

「わたくしはお祖父様の代理人としてこの場にいるのです。世間話など口にするつもりはありません。今からお話しすることは、本日予定されていたあらゆる審議に優先します。

 ここのところ群発している地震については皆様もご存じのことでしょう」


 ナオはそう前置きしてから、一連の出来事を語り始めた。 


 ニールの死と、残された情報。深海都市で教えられた歴史の真実と、《七海神》が天蓋都市(てんがいとし)ディアラインを使って罠を張ったこと。ライたちとともにファブリナスを出てから見知ったことを、ナオは手短にまとめていた。


 深海人に触れた時にリー・インとフォルンは議場に招き入れられ、正面に並んだ。二人の深海人はなにか苦いものに堪えるようにして、居並ぶ天蓋都市(てんがいとし)市長たちを見据えていた。震えているリー・インの手を、そばに立つイアンが握っていた。ライとエイミ、ディアスとヴィネス、ヴァネッサは議長席の横にいた。ナオを挟んで、《七海神》と向かい合う形だ。


 ナオの話が終わると、《七海神》の一人が手をあげた。


「いくらエルモア氏の代理人とはいえ、今の暴言は許せんな。

 何故我々がそんなことをする必要があるのだね? そのような大異変が前もってわかったなら、回避するために皆で協力するのが普通だろう。連盟の常任理事である我々が、人々を滅亡へ導くような真似をするはずがないではないか」


 余裕のある物言い。ナオは言葉に詰まったようだった。


「それに関しては僕が答えよう」、バルロイが手近な席のマイクを取った。「冊子にもある、宇宙開発への予算。これは多すぎる。大きな天蓋都市(てんがいとし)の数年ぶんの総生産に匹敵している。そして、僕がファブリナスの研究所にいる時に、宇宙開発局の人間と仕事をしたことがあった。非公開ながら、惑星外植民船の復旧がかなりの段階まで進んでいるという話を思い出したよ。

 僕の勝手な推測だか、《七海神》は前々から大異変のことに気づいていたのじゃないか? 回避するための方法としての惑星外脱出。そのための船にはすべての人々が乗れるわけではない。だから、大異変の近いことが公になるのを恐れていた。違うか?」

「……だとすれば、口を封じられたのはニールおじさまだけじゃない」


 エイミが呟く。ライは無言で頷き、唇を噛みしめて、《七海神》を睨みつけた。


「論理的整合性のない、馬鹿げた結論だ。宇宙開発への予算の増大は、惑星外探索を本格的に始めるためのもの。

 お聞きのみなさん、今のような荒唐無稽な話を信じられるだろうか?」


 別の《七海神》の一人が答える。


「いきなり、大異変が近いなんて言われてもなぁ」

「我々の先祖が先住民族と戦争したなど、聞いたこともないぞ」

「ナオミ嬢とか言ったが、何故あんな若い娘が偉そうにしているんだ?」


 天蓋都市(てんがいとし)の市長たちの間から、懐疑的な声が起こる。なにかが爆発するような音がし、全員の視線を集めた。振り下ろされたデュレイルの拳が机を割っていた。


「このわからず屋どもが! 《七海神》が彼らを亡き者にしようとしたのは間違いないのだぞ。そうだったな?」


 デュレイルは、天蓋都市(てんがいとし)ディアラインの市長に証言を求めた。が、ディアラインの市長は「覚えがない。彼らの船を海賊と勘違いして、うちの都市軍が攻撃したのは確かだが」、《七海神》の反応をうかがうように答えた。


「まったく、人騒がせな連中だ。その深海人という二人も、金をかけて変装させたのだろう。空想物語の売り込みなら、どこかの放送局でおこなってくれ。必要なら、案内状を書いてあげよう」


 薄い笑いを作るハミル。


 文句をぶつけようとするライより先にナオが言った。


「調子にのるのもたいがいにしやがれ! 証拠がないと思って、いい気になってんじゃねぇや。

 お前らも、こんな詐欺師連中の顔色ばかりうかがってどうすんだ。自分の意見を守ることもできないで、天蓋都市(てんがいとし)をひっぱっていけんのかよ?」


 声のあまりの大きさに拡声器が高く唸り、ライやエイミは耳を押さえた。市長たちは唖然として、令嬢の仮面を捨てたナオを見つめていた。


「尻尾を出しましたな。ナオミ嬢ならば今のような乱暴な言葉はお使いにならないはず。警備班、ナオミ嬢の名を語るこの不届きで下品な女を拘束しろ」

「なんだとっ!」


 ナオが、ハミルのいる最前列の席へずかずかと歩んでいく。ライは駆け寄り、彼女を羽交い締めにして引き留めた。


「落ちつけ、ナオ」

「邪魔すんな、ライ。おい、さっきの下品な女ってのを訂正しろ」


 ナオの肘鉄がライの胸を打つ。ライは絶対にナオを放さないつもりだった。


「下品な奴をそう呼んでどこが悪い。おおかた、我々を脅して金を巻き上げようという魂胆だろうが、ナオミ嬢の真似で騙し通すなど貴様には無理だ」

「俺は本物だ。ライ、放せ」

「まだふざけたことを。警備班、何をしている。早くこいつらをつまみ出せ」


 警備の男たちが動き、エイミたちのいる場所へも向かっている。


「議場を乱すとは常識知らずな連中だ。その大異変とやらを最初に言い出したニールとかいう男も薬か酒で頭をやられ、そんな現実離れしたことを信じていたのではないか」


 ライの頭の中でなにかがぶち切れた。ライはナオを捨て、ハミルの胸倉をつかんで引き寄せていた。


「親父が……なんだって?! この野郎!」

「事実を言ってなにが悪い。我々は狂人の戯言につきあうほど暇ではない。全人類を滅ぼしかねない大異変など、子供でも嘘だとわかるぞ」


 ハミルは抵抗する気配をみせず、目線を横へ投げただけだった。ライはそのままハミルの身体を引き上げた。不思議と、重さを感じなかった。


「連盟の会議中にこのような狼藉を働いていいと思っているのか? この手を放して、すぐに立ち去れ。そうすれば見逃してやる」

「この……」


 殴りつけようと、ライは右手を引いた。ハミルの口元が歪んだように思えたが、どうでもいいことだった。


「ライ、駄目よ!」


 エイミが叫ぶ。ライはありったけの力と怒りをこめて、右手を振るった----瞬間、左手が鋭い痛みと痙攣に襲われ、ハミルの身体を落とした。左手の甲に、小さな矢が刺さっていた。抜くと血が流れ出たが、小刻みな震えと痺れはおさまらなかった。


「即効性の毒だがすぐに消える。そんな男を殴って、自分たちの立場を悪くするよりはましだろう」


 冷ややかな声とともに、一人の青年が議場中央の階段をおりてくる。ライは目を疑った。


「キザイア……あんたが何故ここに?」


 キザイアは束ねていた亜麻色の髪を解き、サングラスをはずした。


「俺をコケにした奴にお礼をしにな。いいものを聞かせてやろう」


 キザイアが取り出したのは、小さな録音機だった。キザイアがそれをマイクへ近づけ、再生を始める。


『……依頼内容を確認しましょう。ニールという男を殺し、研究に関する資料をすべて破棄する。これでいいですね』

『破棄する前に一度私の目を通すように。少々無理をしても構わない。こちらには《七海神》がついているのだからな……』


 雑音が混じっているが、キザイアとハミルの声だ。一同の視線がハミルに集中した。


「ば、馬鹿な。これはなにかの間違いだ。私は《七海神》の名前までは出していな……」


 まくしたてたハミルが慌てて口をつぐむ。だが、手遅れだった。


「そう。あなたは《七海神》のことなど口にしなかった。ついでだが、契約の時には録音機など持っていなかったよ」


 そう告げるキザイアは、ハミルの声色を演じていた。ライはエイミからもらったハンカチで左手の甲を押さえながら言った。


「ありがとな。助かったぜ」

「貴様を助けたつもりはない。 俺は、あいつへ報復しに来ただけだ」


 サングラスをかけなおすキザイア。口元に微かな笑みがうかんでいるようにライには思えた。


 ハミルは蒼白な顔で立ち尽くしていた。言葉が出てこないのか、口を何度も開けたり閉じたりしている。


「これではっきりしましたね。私はエルモアお祖父様の代理人として、《七海神》の解散を要求します」


 議長席に戻ったナオは冷静さを取り戻していた。七人の常任理事市長は慌てる様子も見せず、互いに何事かを目で合図しあっていた。六人の目線が選んだ《七海神》の一人が立ち上がり、咳払いをした。貫禄のある初老の男だ。


「どうやらナオミ嬢は政治に関して経験不足のようだ。秩序の維持という観点から、なんの対策もなしに常任理事を解体しても混乱を招くだけでしょう。第一、我々はハミル殿が画策した事件になんの関係もないのですよ。《七海神》の名をあげて我々を陥れようとするのはよくあることです」


 何事か反論しようとするハミルだったが、他の六人の常任理事市長に無言で脅迫され、黙ってしまった。


「やはり祖父殿とは格が違うようですな。代理人としての権限を無闇に用いられるのはご遠慮願いたい」


「----ならば、私が提案しようか?」


 聞き覚えのない声だった。ライは声の主を探した。正面の大きな扉から伸びた中央通路を進んでくる人影があった。


 身長はアルよりわずかに低いが、身体つきが細いせいでアルよりも背が高く見える。壮年の、色の白い男だった。


「お祖父様? どうしてここへ? あれほど連絡がつかなかったのに」


 驚きと喜びの声をあげながら、ナオはその男に抱きついた。


 壮年の男----エルモア=オールドリッジはナオの頭を優しくたたき、

「今日の連盟会議で私の孫娘たちがひと騒動起こす、と教えてくれた者がいてな。惑星の裏側から急いでやってきたよ。

 知らせてくれたのは君だな。恩にきるよ」

 キザイアに礼をのべた。


「キザイア、ナオが初代連盟議長の孫娘だってわかっていたのか?」

「下手な変装だったからな」


 ライの質問にキザイアは顔をそむけたまま答えた。


「さて、会議を続けようか。長くなりそうだから、全員に新しい飲み物を。それから、報道関係の者たちを集めておきなさい」


 誰にともなく告げ、ナオを離したエルモアはライの肩に手をおいた。


「私も独自に地質の調査をおこなっていた。君の父親が採取した情報と合わせて、片をつけようではないか。君の父親がやっていたことはとても素晴らしいことだよ」


 ライは返事をしようとしたが、言葉が出てこなかった。


「……はい」


 胸の奥からこみあげる熱いものと一緒にその一言を絞りだした時には視界がにじんでいた。エイミやナオがこちらを見ているようだ。ライは涙を拭い、握手を求めるエルモアに応えた。


 その日、連盟会議が終わることはなかった----




(つづく)

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