1/28
プロローグ
白い雲のうかぶ空は高く、どこまでも澄んでいた。
果てしなく広がる海は深みのある青に映え、空との境界をなだらかに描いている。
騒ぎ立てるものはなにもない。静かで穏やかな、永遠に変わることのないような世界。
それでも、動くものはある。
生きているものたちが、いる。
空を渡る風が雲を運び、波のうねりが大海を揺らす。
大きく傾いた二つの太陽が空と海とを濁った血のような、翳りのある朱色に染め、空と海との狭間に沈もうとしている。
太陽を追うようにして天から下りる紫色の帳。はりついた星々は徐々にその数を増し、波の響きが絶えることなく囁きあう。
ゆるやかに----
そして、確実に----
時は、止まることなく流れていく……。