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三年生 カースト



 三年生になった。


 クラス替えはないので一見、一階層上に上がっただけで何の変わりもなさそうに見える私達のクラスだが、雰囲気が以前までと異なっていた。


 学年内でカーストが大雑把だが、現れ始めたのだ。


 基準は家の規模らしい。


 その結果、気づいたときには私はその頂点に君臨していた。

 三大資産家の一角である西四辻家の令嬢なのだから当然といっては当然なのだが。


 廊下を歩く度にすれ違った知らない人から頭を下げられるのはなんだかムズ痒い。

 それに今まで仲良くしていた人達にそんな態度をとられることもあり、精神的に来るものがあった。

 中には取り巻きになろうとする人もいたが、それは全力で断った。

 ただでさえ人間関係がめんどくさくなってきてるのに、更にややこしくなるのは絶対にゴメンだ。


 本当、今まで通り普通に接してくれる詩音が私の心のオアシスだ…。詩音が属する梳宮家もかなりの名家だから改めて畏まる必要性がないのだろうが、非常に助かる。


 ていうか、まだ小学生なのに人間関係が既に大人だった前世よりめんどくさいってどういうことなんだ。


 お金持ちなのも考えものだな。


 贅沢な悩みと知りながらも、深々とそう思わざるを得なかった。






 勿論、急激な環境の変化は私だけではなく姉妹達の元にも訪れていたらしく。


「―――なんか最近周りの人の態度が変……なんだよね。変にかしこまってる感じがする」


 真昼がこの話を切り出したのは、夕食後のティータイムのときだった。会談とやらでどこかへ向かっていった父を除く全員が揃っている。


 朝日は、母の淹れてくれた紅茶のカップを優雅な手付きで傾けた。一口飲んでから、ため息を吐くように呟く。


「うん……それ私も。常葉ちゃんと翔子ちゃんはいつも通りなんだけど、他の人達との間が遠くなったっていうか……」

「そうなの? 私はいつも通りだけど」

「友達がいない夜瑠には分からなくて当然だろうな」

「それは私に喧嘩売ってるの、夕?」

「いや、ちょっ……!?」


 ボソッと聞こえないように呟いたはずなのに、しっかり拾われていた。

 弁解する間もなくガタッと椅子を引いた夜瑠、今にも私に飛びかかろうとしたところで母がバンと手を叩いた。


「座りなさい?」


 笑顔の母からは想像できないほどの低い声に、腰を上げかけていた夜瑠はビクッと体を揺らし、渋々と席に座り直した。


 助かった……。

 って、うわ、何か凄い恨みがましい目で見られている。

 うん……見なかったことにするか。


 しつこく怖い目を向けてくる夜瑠をなるべく見ないように奮闘していると、対面に座っていた奏時がおもむろに口を開いた。


「まぁ、あんまり気にしないことだな。僕も一時期、同級生から距離を取られてた時期があったけど、意外とすぐに落ち着いたから。きっと今回もすぐに落ち着くと思う」

「そうなのか?」


 私にとっても渡りに船だったので会話に乗ると、奏時は真剣な表情から一変。一瞬だが、だらしなく表情を崩したのは、きっと私の見間違いだろう。むしろそうであってくれ。

 

「ああ、だから夕立達は普段通り過ごしておけばいいと思うよ。下手に行動する方が厄介なことになる可能性が高いからね」

「そっかー。よかったぁ……」

「ずっとこのままだったらどうしよって思ってたけど、本当によかった」


 元より友達が多かった朝日と真昼の二人はよほど不安だったのか大きく安堵の息を漏らす。


「ふぅん。よかったわね」


 そんな二人を夜瑠は寂しそうな目で見ていた。


 その目は、ボッチだった前世の私に似ていて、どこか親近感が湧いた。


「……友達作れるようにがんばろうな? 私も協力するから」

「別に友達なんていらないわよ。結局のところ赤の他人じゃない。今回の事だってそう。勝手に家比較して距離を取っていく奴らと馴れ馴れしくしようとなんて到底思えないわ」


 あー駄目だ。これは完全に拗らせてしまっている。

 このパターンは何言っても反論されるやつ。ソースは前世の私。


 さて、なんて返したらいいものか。


「ただいま……アフターディナーティーかい?」


 反応に困っていると、父がちょうど良いタイミングで帰って来た。私は逃げ出すように父に駆け寄った。


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