表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/67

二年生

 二年生へ進級した。

 とは言えども、四年生まではクラス替えはないし、教室は一階上がっただけで基本的に同じ作りなので、あまり実感が湧かない。

 実質四学期へ突入したと言っても過言ではないだろう。


 現に進級してから数日が経つが、日常にこれと言った変化はない。変化らしい変化と言えば、奏時そうじの様子が変なことぐらいだ。非常にどうでもいい。


 助けてもらった借りもある為、彼が困り事があって変な行動をしているなら助けるのだが…。


 だけど様子を見てる限りそんな感じじゃなくて、あの様子はどうも…………。


 前世の記憶をリセットしたいと時々思う。男だった経験から、男の行動ってやつが良く理解できてしまうものだから妙に察しがついてしまう。


 十中八九、奏時は私に惚れてるのだと思う。断じて自惚れではない。


 幸いなのは奏時がその感情の正体に気づいていないことだろう。出来れば気づく前に他に良い人を見つけて欲しいものだ。


 奏時は良いやつだ。だから、惚れるなら元男な私ではなく、可憐な令嬢にして幸せになって欲しいと切実に祈っている。


 何も考えずのほほんと日々を過ごすラブコメテンプレの鈍感系主人公が羨ましく感じた。


 大分思考が脱線したが。

 まぁ、つまり私が言いたいことを要約すると、平穏な日常が徐々にめんどくさい方向へと向かってきた、ってことだ。

再来週には遠足があるし、また忙しい日々が始まることだろう。色々と大変そうだ。





「おはようございます、夕立さん」


 指でクルクルとペンを回していると、今登校してきた隣の席の子に話しかけられた。

 今世出来た私の数少ない友人の一人、梳宮くしみや詩音しおんだ。


 旧華族の名門である梳宮家の分家のお嬢様、そんな肩書を持つ彼女とは意外と仲良くやっていけていると思う。



「うん。おはよう詩音」

「はい」

「……」

「……」


 会話終了。

 これが私たちの普段の会話内容だ。そう、詩音とは挨拶と用件があるときくらいしか話さない。

 それは友達間の会話としてはやや物足りなさを感じるのかもしれない。


 だが、今時の女子の話題に付いていける自信がない私としては、無駄話がなく、重要な用件しか話さないこの関係が案外気に入っていたりする。





 暫くすると狩野かの先生がやって来て授業が始まった。

 今日の一発目の授業は算数。授業の中では最も不人気な教科だ。

 しかし。今日は皆やる気に満ち溢れていた。目がギラギラと輝いている。

 それもそのはず。

 今日は一年生が授業見学に来るのだ。


 初めてできた後輩に格好良いところを見せたい。


 そんな思いがあるのだろう。


「―――えーと。ではこの問題わかる人? うおっと!」


 普段なら半分くらいしか上がらないのに今日はほぼ全員が挙手した。

 その光景に先生は驚きながら、歓喜混じりの声を上げる。


「では、西四辻真昼まひるさん。お願いします」

「はい! 5です!」

「正解です」


 パチパチと拍手が鳴り響き、真昼が照れ臭そうに頬を紅色に染めながら着席する。

 今回選ばれなかった生徒達は、次の問題はまだかと獲物を狙う肉食獣の如く待ちわびる。


 まだ一年生がやって来ていない状態でそれだ。安易に想像できるように、一年生が教室に入って来てからは非常に騒がしくなった。


 自分に注目させたいのか大声を一定の時間おきに発するやつ、立ち上がるやつ、両手を上げるやつ、とその行動パターンは様々だ。


 場は既に戦場と化していた。



 無論、私はその戦場に加わることはなく、頬杖をつきながらのんびりとその光景を眺めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ