black box
自分達白族は黒族と戦争を行っている。此方は和解をしようとはするが話が伝わらず武力行使をして来る。いざと言う場合の事を考えてみれば正しい事だ。相手も同じであろう。だが自分達は黒族を奴隷として使って居た歴史を持つ種族。和解をしたくはないと言うのも当然。嗚呼そうだ、お前達を小間使いとして散々使うさ。
此の戦争に勝つ為、兵糧攻めを予定している。勿論相手が頼る場所は把握済み。しかし、長期戦に持ち込むので此方の食糧が先に無くならぬ様に管理を怠ってはいけぬ。
自分は「食糧保管室1」と書かれたプレートの前に立ち、下のセンサーにカードキーを翳す。ドアは右方向に開き、入ると自動で電気が点く。視界一面にアルミ棚と置かれてあるタッパー。すると一人の、一体のロボットが現れる。
「お早う御座います。管理長様」
口にあたる部分にあるスピーカーから機械音声で聞こえる。
人の頭では限界と呼ばれる物があり、其れを補う為の人工知能搭載の量産型機械人間。上司の軽い説明から人間に作らせたとか。性別は決まってはいない。が、何故か此の一体だけ一人称が「私」であるので他の機体よりも女性らしい扱いをしている。此の感じの機体は管理職用として造られた訳では無いのでオールラウンダーとも言え、非常時には戦闘も行う。
「お早う、087」
声帯を震わせ音を出す。
ナンバー087と挨拶を交わす。自分は此の機体に日々の不満をぶつける為に通って居る。量産型には感情など不要で、取り付けるにも費用は大きく、何を言っても文句など言わせぬし言わないので此方としても都合が良い。
何度か通う内に、此の機体に「お華」と名付けた。87番と呼ぶにも言い難く堅苦しいのでと言った体で。
「なあお華、昨日な、良い事があったんだ・・・」
「はい」
緊急事態に陥るまで愚痴に似た近況をずっと話して居た。
赤
朱
緋
紅
銅
危険や緊急事態を表す色と甲高いサイレンが元々白い部屋を染め上げる。近くのモニターにはスパイの侵入が発覚と表示されていた。
「ふざけんな・・・!」
敵は近くのエリアに潜んでるらしい。俺は扱いが最も得意なエネルギー銃を手に取る。魔法の力を銃の中に注ぎ込み、引き金を引くとエネルギー弾が出る仕組み。拳銃のサイズだから近付いて来ても問題は無い。
「待ってろよ裏切り野郎!」
ミルクの入っていない珈琲を飲み干し全速力で向かった。
敵十人確認
白族一人敵意確認
残り黒族同様に敵意確認
管理長様遠方にて気絶中
敵は二丁のエネルギー銃を所持
此方の物と思われる
援護、後数秒で到着予定
此方、ガトリング用意
装填万端
ナンバー087の目が赤く光る。此処までを管理長が倒れてからほんの僅かな時間でデータとして記録した。
「貴方を守りたい」
本来「開始」と言う所を彼女は其の台詞を言った。
侵入者により心臓部を撃ち抜かれた。其処が壊れれば復旧は不可能。となれば撃った侵入者は此方側。侵入者のグループは即座に囲まれ捕まる。騒ぎは短時間で収まり、裏切り者も消された。
管理長は目を覚ました
朝だ
寝惚け眼を通り越した
即座にベッドから体を離そうとする
だが鉛並みにに重く成っており落下した
訓練で鍛え上げた体は脆くない
途端に鉛からアルミに変わった
部屋を飛び出す
何時もの時間に何時もの場所に付く
呼吸を整える
場所を確認
未だ持って居たカードキーを翳す
中に入ると自動で電気が点く
目の前に居るのは人工知能搭載の機械人間
しかし番号は別の数になっていた
「なあお前。ナンバー087は?」
「壊されたと聞きました」
スピーカーから聞こえた音を聞くや否や又もや飛び出し温まりきっていない体で全速力を出し切る。
次に着いた部屋は「ブラックボックス保管室」。戦場で破壊された機体からブラックボックスを取り出し、此処に保管される。ブラックボックスは手の部分に取り付けられたいるため滅多な事では無くならない。全てのカードキーは対応して、直ぐにドアが開く。小走りで87番を探す。
「此れか!」
USB状の形でパソコンに刺せる。機体が戦いと判断した時から始まる。
『貴方を守りたい』
状況把握の文の中に其れが紛れて居る。感情などなかった筈だ。おかしい。次の文章が表示される。
『貴方が大好きでした』
画面が砂嵐に成ってもずっと同じ場所にいた。
別の病院で一人の元隊員は意識を彷徨わせて眠る。彼は他にも侵入した輩にやられた。
(何で・・・死ななきゃならんのよ・・・)
瓦礫に埋もれる。
(足が全然動かねえしいてえや・・・)
敵が確認の為に近付く。
(血の臭いがするし腕の感覚が全くねえや・・・こりゃ切れてるな・・・)
何かが切れる。心が激しく燃焼し始める錯覚を感じる。
「だが、何で卑しい貴様等に此の命をあげなきゃいけねえんだよーーー!!」
瓦礫を相手の顔面に投げ付け、怯ませて自分の相棒とも言える武器を向け激しいエネルギー弾を放った。
彼の意識は其れから全く無い。
しかし歴史の一コマにさえも載らなかった話
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