1.異世界召喚の典型の回
俺はロリコンだ。
冒頭間違えた、俺は間宮薫太。属性・ヒキニート。いや、一応まとめブログの管理人としてアフィリエイト収入はあるから、一応ブロガーみたいな属性になるんだろうか。でも、やってる事はヒキニートと変わらないので、ヒキニートで良いんだと思う。
さて、そんな俺が今何をしているかというと……。
「良くぞ参られた、勇者よ! さあ、旅立つのだ!」
王様に旅を強要されている。
いや、いや、いや。
はいとは言えませんわ、これ。
まとめブログの更新が一通り終わって、ソシャゲのイベントを一応安心できるところまで走って、午前4時になったのでそろそろ寝ようかと思って、布団に横になったら、王の間だった。玉座の前だった。異世界召喚モノの冒頭だった。
うん、ぜってー、やだね。
「無理です俺別に暇人じゃ無いんで」
「いやいや大丈夫だ勇者よ! 特に難しい事は頼まないから勇者よ!」
「すいません帰って良いですか眠いんで」
「帰っちゃ駄目だ勇者よ! 凄い言い伝えとか、皇室典範とかで旅立つのが決まってるのじゃ勇者よ! せめて話だけでも聞いてください勇者よ!」
王様は玉座の上でじたばたしている。扉も固く閉ざされている。これ、多分何回『いいえ』を選んでも、強制的に見せられるタイプのイベントなんだろうなあ。仕方ない、話だけでも聞いてやるか。俺は、溜息をついてその場に座り込む。……と、足元に魔方陣が描かれていることに気づいた。
「うわ、本当に異世界召喚なんだ」
「そうじゃ、4人の魔道士達の力で、勇者を呼び出したのじゃ!」
「4人の魔道士……って、わわ!?」
ローブを着た少女が4人、俺の座ってる魔方陣を取り囲むように倒れている。
いや、少女というか……幼女じゃないか!
「お、おい、大丈夫か!? くそお、悪の王め! なんかチート的な力で殺してやる!」
「ち、違う! 早とちりは止めるのじゃ勇者よ! 別にワシが魔道士を殺したとかそう言う訳では無いのじゃ勇者よ!」
俺が拳を作るのを見て、王様は、はわはわ言いながらのけぞっていた。むう、違うのか。
天が人類に与えた宝《treasure》とも言える幼女を乱暴に扱うような男だったら、自己流瞬獄殺の餌食にしているところだった。
「大丈夫じゃ勇者よ。彼女らは力を使い果たしてしまったに過ぎん。ゆっくり休めば、また元気になるのじゃ」
「つまり俺は、この幼、少女達に召喚して貰ったのか」
「そうじゃ」
「と言うことは俺は、彼女達から生まれたも同然って事か……!」
「うーん、何を言ってるかは良くわからんが、そうじゃ」
何と言うことだ。
「幼女に母親になって貰う」と言う終生の願いが、今ここに叶ってしまった!
ビバ、異世界召喚! サンキューマイゴッド! なんだ、このロリコンに優しい世界! 後で幼女達の顔と名前を教えて貰おう。
なるほど、段々分かってきた。
この世界は、異世界だ。現実と違う、ロリコンの、桃源郷だ。ひゃっほう! 楽しみすぎる!!
ともすれば、もう嫌なんて言わない。言う訳がない!
俺は、勇者として、幼女ハーレムを形成すると決めたのだから!
「……で、俺に何しろって言うのよ」
「え~っ、なんか急に素になったな。オホン、実はこの世界は魔王に狙われておるのじゃ。そして、古からの決まりにより、魔王討伐をする勇者を召喚したと言うわけじゃ」
「オッケー、テンプレなやつね。考えなくて良いやつだ」
つまり、この小説はあんまりシリアスな殺し合いとか考えなくて良さそうな奴なわけだ。
真面目に読者をやってない俺には、凄い安心するな。
「で、俺のチート能力って何よ?」
「……ん?」
「なんかさ、こう、あるでしょ? すげえ成長するとか、鑑定能力あるとか、あ、女の子の頭撫でたら惚れられるとか」
「そんな便利な能力あるわけないだろ勇者よ。勇者の特徴と言えば……おお、そうじゃ! MPが凄い高いのじゃ!」
「MPが高い? へ、へー? なんかあんまり聞かない奴だけど……と言うことは、すげえ魔法が使えたりするんだな!」
「ちょっと待たれよ。……ふむ、ワシの鑑定の結果、勇者の覚えている魔法は、グラヴィティバーストだけのようじゃな。今後も、他の魔法は特に覚えん」
「ええっ、それだけ……? で、でもグラヴィティバーストって、凄そうだな……よし!」
俺は立ち上がり、その辺の壁に向かって手のひらを開く。
試し撃ちだ。……自然と、頭の中に呪文が現れた。これは……いける!
「や、やめるのじゃ勇者よ!」
「昏き夜の彼方から来訪せし暗黒の邪神よ、この右腕より発せられし漆黒の波動を捧げる……!」
王様の悲痛な叫び声が聞こえる。
右手にどこからか現れた闇のパワーが集中していく。そして、次の瞬間、俺は一気に、魔力を解放する……!
「奏でろ、冥界魔法“グラヴィティバースト”!!」
そして、漆黒の光が部屋を包み込み……!
……元に、戻った。
「……あれっ」
何も起こってない。
イメージ通りだったら、目の前の壁は木っ端微塵、ついでに延長上にある魔王城も灰になっていたはずなのだが。
マジで、何も起こってない。
「なあ、魔法、なんか失敗したみたいなんだけど……」
「……いや、魔法は成功している。成功はしているが、その魔法は……」
「何なんだよ」
「その魔法の効果は、“タンスの裏から1ゴールド出てくる”と言うものなんじゃ……!」
な、な。
「な、なんだってー!?」
ブクマが御座いますと、捗るのです。