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20 ゼヌの正体

 ガイルの行動に意味が無いとは思わなかった、だがハルトにはそれが理解出来なかった。攻撃をするならより強力な攻撃をすればいいと思っているからだ。

 ただの鉛玉をぶち込むよりかは魔法を使った方がよっぽど効果的だと思っている。


 だが、ガイルは魔法を使った弾は二発、それ以降は何度も普通の弾を撃ち込んでいる。見ていろと言われたが何を考えながら、何を感じながらこの戦いを見ていればいいのかハルトには分からなかった。

 だが、そんなハルトの事はお構いないと言わんばかりにガイルは次々に装填、射出を繰り返している。


 もう、十発は撃っただろうか、依然としてゼヌは体を治しながらレオンに向かって歩いている。

 やはり何も変わっていない。今までの繰り返しをただひたすらに見ているだけのように思えてくる。


「そろそろかな」


 ガイルはそう呟くと、今度は今まで使っていた弾とは別の、だが特に色の付いていない弾を手に取った。

 ハルトは色で魔法の種類を変えているのかと思ったが、そうでは無いのかもしれない。


 ガイルはそろそろケリをつけるために今まで以上に強力な魔法を叩き込もうとしているのかと思った。


「レオン、最低でも十メールは離れろよ」


 やはりそうだ。そこまで離れないと巻き添いをくらうほど大きな魔法を使おうとしている。ハルトはごくりと唾を飲むと、食い入るようにスコープを覗き込んだ。

 ガイルの自信満々な表情から察するに、この戦況を大きく覆すような切り札なのだろう。


 ドンッ と音が鳴り響き、ガイルのライフルの指す先にいるゼヌは全身から出血していた。何が起こったのかわからない、いきなり全身に無数の穴が空いた。


「これは」


 ハルトの予想通りにガイルのとっておきの魔法なのだと思った。


「これは散弾だ」


「散…弾…?」


 ハルトはその聞いたことあるフレーズを考えた。散弾、弾が散らばる、つまり今撃ち込んだ弾は何も魔法がかかっていない先刻使っていた弾と変わりない、ただ弾の数が変わっただけの普通の弾だ。

 こんな攻撃でゼヌがやられるわけーーー


 ハルトは目を疑った。ゼヌは地面に吸い寄せられるかのように這いつくばっていた。


「なんでだ!?」


「ん?あいつはたぶん高い治癒能力じゃねぇんだよな。あいつの力は魔力を吸収するってところだろうな」


「魔力…吸収?」


「そうだ、ただレオンのナイフは特殊でな。あのナイフの魔力も吸っちまってんならバケモンだぜほんと」


「なるほどねぇ…流石だな」


 ハルトが声を出す前に、会話を盗み聞きしていたジェンが割って入ってきた。


「普通の攻撃じゃないと倒せないってことか。なんならゴーレムに殴らせても魔力取れるかも知れねぇからな」


「そういうことだ。それに、最近の武器にも魔法はかかってるものは多い。魔法がかかっていればそれだけ魔物を倒すのが楽だからな。そんな中で、中だからそのあんな敵は厄介なんだよ。どうしても高い火力が求められる戦いになれば魔法は必要になってくるからな」


 ハルトはガイルの力説に感服した。そこまで頭が働かなかったこともあるが、これが冒険者なのかと思うと自分のひよわさが今更ながら痛いほど分かる。


「ってことは、レオンのやつは素手で戦わなきゃいけねぇのか?」


 ジェンは純粋な疑問をガイルのぶつけた。


「まぁ魔法がかかってない武器があれば良いに越したことはないんだがな」


 その二人の会話に、ハルトは少し前の事を思い出していた。ベリー牛の丼をレオンと食べている時のことだ。レオンはハルトの剣を手に取ると首を傾げていた。

 まさかと思い、ハルトは口を開いた。


「魔法のかかっていない武器、これはそうじゃないですか?」


 ハルトは自分の腰に下げてある剣を手に取ると、腰まで起き上がっているガイルに手渡した。

 ガイルはハルトの愛剣を手に取ると、首を傾けなからその刀身を指先で撫で始めた。


「うーん、かかってはねぇな。いい武器だ。けど、駆け出しのハルト君が使うにしては難しいな」


「えっ?」


「魔法がかかってない武器なんて最近じゃ使う人が減ってるんだよ、それも駆け出しで使う人なんて珍しい。初めは魔法慣れした方がいいかもと思ったのさ」


「魔法…ですか」


「まぁそんな事はどーでもいんだけど、レオンのやつが大人しく剣を使ってくれるのか…」


「それはどうゆう?」


「あいつは剣を使ったらいけねぇんだよ」




 ゼヌは相当量の魔力を溜め込んでいたのだろうか、ガイルがいくら攻撃しても再生を繰り返している。

 それに、魔法が使えないとなるとそこはもうナルの領分だ。レオンよりナルの方が適任だろう。


 だが、ナルは出血が酷かった。今戦わせて仮に一撃でも貰ってしまえば今度こそあの世に行きかねない。

 仲間にそんな無茶はさせられない。そうなるとレオンがゼヌの相手をしないといけなくなる。


 他の冒険者たちもそろそろミノタウロスを倒す頃だろう。もうすぐでこの戦いが終わる。後はレオンがゼヌを倒せば、それで街は救われる。


「よしっ」


 レオンは小さく気合いの言葉を自分にかけた。足の傷はガイルが時間を稼いでくれたおかげで殆ど治っている。

 今度はレオンの方から飛び込んでいった。


 ゼヌの治癒能力の根源が自身の中に溜め込んでいた魔力だと分かったなら、その魔力が枯渇するまで傷を負わせればいいだけだ。

 レオンは徒手空拳でゼヌの懐に飛び込んだ。そこから素早く三発拳打を入れて足払いをしようとした。


 だがゼヌは倒される耐性ができていたのか、強く踏ん張り倒れることは無かった。レオンはこのまま近接しているのはまずいと思い、距離をとった。

 ゼヌの学習能力は凄まじいものだ。もしガイルが攻撃し続けていればいつかはかわされるだろう。


 ゼヌに一度見せた攻撃は使えないと考えた方がいい。同じ攻撃を耐用されて、カウンターでももらってしまえば終わりだ。仮にかわせれたとしても、少しでも掠ってしまえば大怪我に成りかねない。

 レオンは一歩左足をさげて腰を落とした。


 レオンはこのままゼヌを迎え撃つつもりだ。ゼヌの方は獰猛な野獣の如く、両手を地面に着きながら四足で疾走してきた。

 ゼヌが走り方を変えてきてもレオンは無反応を貫いた。


 そしてゼヌが一歩力強く踏み込むと、上体を起こして左拳を握りしめた。

 だが、まだレオンは動かない。


 ゼヌは握りしめた拳を全力で突き出してくる。その刹那、レオンは右手でゼヌの拳を払い除け、さげていた左足で一歩踏み込み、左手を突き上げた。

 その手はゼヌの顎に直撃し、ゼヌは仰け反りながら勢いに流されていく。


 レオンは仰け反るゼヌの体を左手で更に反らせて、右ひじで喉を潰しにいった。それと同時に右ひざでも後頭部から蹴りを入れる。

 その上下からの攻撃でゼヌの首を完全に潰した。


 コキッ というと音共にゼヌの腕がだらんと垂れる。レオンは攻撃し終えると、ゼヌの進行方向とは逆に移動した。

 この一連の流れは約二秒、その中でレオンは的確に二回の攻撃をゼヌに浴びせた。


 普通の人間ならできないだろう動きだがトリックは簡単だ。まず時間をかけて魔力を溜めて、魔法を発動する。その魔法で反応速度を強化する。そして攻撃する時には普通の拳打や蹴りという単純なものだ。

 だが、次はもうこの手は使えない。レオンがゼヌから距離を取りながら考えていると、街の方から自分を呼ぶ声が叫び声のように聞こえてきた。


 街の方を振り向くとハルトだろうか、何かを片手に持ちながらレオンと連呼している。

 目を凝らしてよく見てみると、その手に持っているものはハルトの愛剣だ。


 ガイルも近くにいる、察した。レオンに剣を使えということなのだろう。

 武器を渡されるのはありがたいが、ハルトの行動には今までの戦い以上に思考をフル回転させた。

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