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16 三人パーティー

 南門の前で待つ冒険者の数は二十人、南門の上で戦っている二次部隊の数は全員で六十七人。

 一次部隊は基本的にBレベルになっている人が集まっているだろう。中にはCレベルだが腕に自信のある者はいるかもしれない。


「ハルトは頑張ってるかな」


 二次部隊の攻撃は数分前に始まっている。その中にハルトがいる。

 そのことを考えながらレオンは上を見上げた。


「ハルトって前に言ってた同じギルドこ?」


 そう聞いてきたのは右隣にいたギルドメンバーのヤネシスだ。彼女は戦いになると邪魔になるからと言っていつもポニーテールを作っている。今日もそうだ。

 ヤネシスは魔法使いの道を選んでからまだ半年だが、この街ではもう右に出るやつはいないほどの腕っ節だ。


「そんなやつが入ってたのか。マスターはなんて?」


 今度は左隣にいる、こちらもギルドメンバーのナルだ。常に青いバンダナを頭に巻いているのが特徴の男だが、ナイトをしているのに鎧を着ていないのが何よりの特徴だ。


「マスターは快く了解してくれたよ」


「そっかよかったわね。ハルト?君」


「ギルドに人が入ったのは久しぶりだなぁ」


 ナルがしみじみと言った。


「そうだな、あの時は僕もビックリしたよ。まさか希望者全員が賊だったなんてな」


 レオンは苦笑しながら言った。あの時、三年前の話だ。

 その頃勢いづいていたギルドに入りたいと言ってきた者全員が指名手配の賊だった。それ以来レオンたちのいるギルドにはいい噂が立たなかった。


「ここから立て直せたらいいね」


 ヤネシスは微笑んで二人に向かって話しかけた。


「そうだな」


「だなぁ」


 一次部隊は二十人、ほとんどが別々のギルドか、稀にソロの人もいるが、レオンはこの三人のパーティーで陣形を組んで戦う予定だ。

 三人で話をしていると共通の話題も多く、やはりすぐに時間が過ぎてしまう。


 今、南門が開こうとしていた。ゆっくりと上がっていく門に緊張感を覚える者もいるだろうが、やはり一次部隊に志願するほどの自信がある者には余裕がある。

 南門が開ききった時に銅鑼の音が鳴り響き一次部隊は一斉に走り出した。


 魔王軍までの距離は一キロと五百メートルほどだろう。このペースだとあと一分ほどで打ち合いになる。だが、味方への流れ弾、移動の邪魔をしないように二次部隊が攻撃をやめた途端に魔王軍は遠距離攻撃を仕掛けてきた。

 炎、氷、風、投てきなどの攻撃仕掛けてくるが、そんなのは予想の範疇だ。


 一次部隊の冒険者たちは散開して仲間の邪魔にならないように走る。


「レオン、私たちは真っ直ぐ行くよ」


「了解」


 ヤネシスは性格上曲がったことが嫌いで、この場面でも直進を選んだ。

 だがその選択は良かった。他の人たちは散っていったために直進する者はレオンたちを残して数人しかいなかった。


 先頭にはヤネシス、後ろにナル、レオンの順番で走っている。ヤネシスは魔法使いなのに前線に出て戦う珍しいタイプだ。

 そのためこのパーティーで戦う時は、魔法使いが前に出て、ナイトが何を守っているのかわからなくなり、レオンは後方から攻撃する形になってしまう。


 変わった陣形だが慣れてしまえば簡単だ。

 魔王軍からの攻撃をさばきながら直進を進める。距離は五百メートルほどだろう、ヤネシスが詠唱を始めた。初っ端から大型の魔法を使うのだろう。


「ーーー大地の精霊の元に。行くわよ!」


 ヤネシスは掛け声と共に両手を地面についた。走っていた勢で止まれずに滑りながらだが地面に手をついた。

 そして地面が揺れだした。まるでヤネシスが地震を呼んだように思われるがそうではない。


 この魔法はゴーレムを作り出す。ゴーレムは作り出した者を主と認め、その主の命令に忠実に従う石人形のようなもの。

 ヤネシスはこのゴーレムと、自身の強力な魔法攻撃を使って前線での戦闘を可能にした。


「ナル、魔力は無駄にするなよ」


「わかってらぁ!」


 ナルはナイトであるがその身に纏うのは普通の服、その理由はナルがナイトでありながらある一つの魔法を使うことができるからだ。

 ナルの魔法は自身を硬化させるという単純な魔法だが、ナイトの職業に着くと魔法を覚えることができない。


 だがあらかじめ魔法を覚えておけば使うことはできる。そうすることで鎧を必要としないナイトになることができる。

 ナイトの鎧は重くなれば六十キロを超える。その重さに身を包みながら仲間を守るのは大変だ。


 だが、いくら硬化をしたとしても痛みは蓄積されていく。これが鎧の無いナイトの欠点だ。

 ナルは魔法を発動させたのか、全身の色が漆黒に染まっている。


 ヤネシスとゴーレムが魔王軍とぶつかる時にはもう他の仲間たちも魔王軍と戦っていた。

 ナルはヤネシスの元に駆けつけて、ゴーレムと共にヤネシスを守りながら戦っていく。


 レオンの役目は基本的には二人を遠距離からサポートすることだ。二人とゴーレムの中に入れば守られる人数が増えて逆に戦いづらいからだ。

 レオンは弓を手に取ると背中にかけてある矢を取り引き絞った。


 二人とゴーレムまでの距離は五十メートルほどだろうか、この距離なら矢を外すことはまず無い。それでいて敵との距離も取れている絶好の距離だ。

 レオンは矢に無詠唱で魔法をかけるとヤネシスに迫ろうてしているコボルトに放った。


 レオンの矢は真っ直ぐにコボルトに飛んでいきその脳天を貫き、更に飛翔した矢は魔法によって軌道を変えて近くのゴブリンやコボルトの頭や首、心臓を刺し進んでいった。


「ふぅ…」


 レオンが一息つく頃には五匹ほど仕留めていた。コボルトやゴブリンは真っ赤な鮮血を倒れた後も噴き出している。

 この調子で倒し進めれば三十分もしないうちに魔王軍のほとんどは倒せれるだろう。


「二人ともペース配分考えて戦えよ」


 レオンの声に返事はしなかったものの、ナルは手を上げ、ヤネシスはアイコンタクトで返してきた。


「ひ、ひぇぇぇ、や、やめ、うわぁぁぁあああ」


 明らかに人間の声だということがわかった。大方腕に自信があった冒険者が実力不足でゴブリンやコボルトにでも襲われているのだろうと思い、矢を構えながら声のする方へと体を向けた。

 その冒険者の周りにはゴブリンの死体があり、倒し終えたのかと思ったがそうではなかった。


 相手にしていた魔物はゴブリンでもコボルトでもなかった。それはレオンでも見るのは初めての魔物だ、たぶん図鑑にも載っていないだろう種類だ。

 ヤネシスが作り出したゴーレムと体格はそっくりだが、ゴーレムのような石造りではなく、しっかりとした筋肉がついている。


 その魔物の上腕筋はゆうにレオンの顔よりは大きいだろう。そんな魔物は目は虚ろで何を見ているかわからなかった。だが、冒険者をなぎ払い、殴り、蹴り飛ばし、その怪力を振るっている。

 行動は単純明快で、見ている通りに冒険者を倒すだけ、街に近づく気配が全くなかった。


「なんだあいつ」


 ナルはいつの間にかレオンの近くまで戻ってきていた。


「いやわからない。けど強いぞ、たぶんこの魔王軍の中で一番か二番か」


「まっ、俺がやってくるよ」


 ナルは解けていた魔法を再度かけ直すと、口の端を軽く上げながら大型の魔物めがけて走り去っていった。


「ナルのやつまた一人で行ったのね」


 ヤネシスは更にもう一体ゴーレムを作り出して周りにいた雑魚の相手をさせていた。

 そこで身軽になったヤネシスはナルには遅れたがレオンの元へ戻ってきた。


「僕とヤネシスはナルの援護をしよう。魔法はヤネシス、僕は弓を使う」


「了解」


 ヤネシスは唇を一周舌で一舐めすると片手に三個ずつ小さいが炎球を作り出すとナルの走った方、魔物の方へと放った。

 合計で六個の球はヤネシスの魔法で自由自在に操ることができる。通常魔法は放ってしまえば直進しかしないが、更に魔法をかけると、人によるが魔力が枯渇するまで操作することも可能になる。


 ナルはすでに交戦中でむやみに魔法を使えば流れ球がナルに当たる危険がある。ナルに当たらないタイミングで相手の一瞬の隙をついて攻撃するというかなり難しいものだが、ヤネシスは難なくこなしていった。

 五発、六発目も無事に当てると更に六個球を作り放った。


 ナルの方は魔物の攻撃をさばきながら的確に攻撃を当てていく。

 これではレオンの出番がなかった。その魔物は二人に任せて他の魔物を倒そうと視線を逸らした刹那。


「ぐっ…はぁ、ぶはぁ…」


 声でわかった、ナルのものだということが。レオンは視線を戻すと、そこにはナルが腹を抑えながら悶絶していた。


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