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11 仲間の情報

 タケルは一時的に行動を止めた。いや、行動が止まったと言った方がいいか、ぽかんと空きっぱなしの口は動かずに乾燥し始めている。

 大きく開いた両目も口と同じく動くことはない。


「ど、どうしたタケル」


 ハルトの呼びかけにも応じない。そんなタケルを揺すってみた。すると揺すり始めて数秒でやっと動き出した。


「ハ、ハルト君嘘はダメだよ」


 タケルは明らかに動揺していた。目が泳いでいる。


「嘘じゃないんだよね…」


「まさか、ハルト君もB30レベル以上…とか?」


「いや、俺はC48だ」


 ハルトがレベルを言うとタケルは ふぅ と息を吐き少しづつ冷静さを取り戻してきた。


「そ、そうだよね、来たばっかりだもんね」


 タケルは頭を書きながら言った。


「それより、なんでレオンのギルドに入れたんだ?」


「なんでって、レオンに助けられてから成り行きで」


「成り行きで入れるほど容易くないと思うけどなぁ」


「そうなのか?」


 ハルトの一言でタケルの顔つきが少し変わったように見えた。


「うん、噂ではギルドに入ろうとした人全員落としたとか、死人が出たとか…」


 タケルの言葉には妙に信憑性があった。だが、あのレオンがいるギルドだ、優しいとは思うのだが…。

 レオンだけが優しくても他の人は優しくない可用性も十分にある。


「そうなのかな?まぁ、それはいいんだけど、俺そろそろレギス狩らないと」


 タケルはすっかり忘れていたのか、ぽんと 手を鳴らして立ち上がった。


「そうだったね。あ、そうだ、よかったら僕たちも一緒じゃダメかな?僕たちは時間あるし、その方が効率的だと思うし」


 確かにその方がよりスムーズにクエストを進めることができるだろう。

 しかし、荷台を貸してもらえるのにそこまで甘えるのは正直気が引けた。


「そこまでしてくれなくても大丈夫だよ」


「なんだ?俺たちとじゃ狩れねぇってのか?」


 いつの間にか喧嘩が終わっていたのか、ソウタがベッドから喋りかけてきた。


「いや、荷台借りてるし、そこまで甘えられないってうか」


 ソウタは少し表情を曇らせた。


「ていうかってなんだよ、俺たちもう仲間だろ」


 ソウタは言葉を濁らせながら、最後の方は聞き取りにくいほど小さくなりながら言葉を発した。

 だが、初見でハルトの中で評価の低かったソウタがそう言うと少し気味が悪かった。


「気持ち悪」


 ハルトはソウタにギリギリ聞こえる程度の声を出した。

 その声が聞こえたのかソウタは怒鳴り返してきた。


「あ!?今何つった!」


「いや、ここはお言葉に甘えて手伝ってもらおうかな」


「最初っからそう言えばいいんだよ」


 この男はほんとに口の減らない男だ。ハルトは内心で怒りを抑えた。

 だが、仲間だと言ってくれた時は嬉しかった。この世界に来て初めてのリア友と言ったらいいのか、その友達ができて嬉しかった。


 ハルトは既に準備が整っているが、タケルにソウタ、そしてマキは今日はエリカの家で遊んでいたこともあってまだ準備ができていなかった。

 準備が終わり次第またエリカの家に集合という約束をして、その三人は散開した。


 この部屋ニにはエリカと二人、少し気まづかった。


「ねぇハルト」


 ベッドに腰をかけているエリカが床に座るハルトに話しかけてきた。


「床なんかに座ってないでベッドに座ったら?私の家座布団とか無いからさ」


 エリカは優しさで言ってくれたのだろう。だが、今日も膝枕されたハルトの心は少し乱れていた。

 一瞬思考が止まり、そして数秒した後無言だが立ち上がり、エリカに歩み寄るとベッドに座った。


「そういえばさ、私膝枕したのハルトが初めてなんだ」


 いきなりのカミングアウトにまたしても動揺してしまった。


「そうなんだ」


 外見では平常を保っているが、いつ崩れるかわからない仮面だ。


「男の子に膝枕ってしてみたかったんだ」


「それならソウタでもよかったんじゃ?」


「うーん、ソウタはダメ、タケルもなにか違った」


 エリカはそのまま続けた。


「でも、ハルトは合ってる。ううん、ハルトがよかった」


「どういうことだ?」


「うーん、なんかハルトって純粋な瞳をしてるの」


 隣に座るエリカはハルトの方に向き直ると、顔を近づけてきた。


「だけど、どこか物足りないような…でも求めすぎてもない。普通って言ったらいいのかな」


 今のハルトにはエリカが何を言っているのかわからなかった。だが、その最中にもエリカの顔はどんどん近づいてくる。


「ここに来た人たちって、たぶん自分に何か欠けてる人だと思うの。ソウタは多分愛や友情、タケルは憧れ、マキちゃんには友達」


「そっか」


 今のエリカの言葉には納得する部分が多かった。いや、少なからず同じことを感じていたからだ。

 タケルの憧れは、レオンのギルドにいると言ったときの反応を見れば一目瞭然だ。マキの友達もだ、いきなり変態呼ばわりするやつに普通友達なんてできないだろう。


「確かに俺は普通だな」


 ハルトのその一言にエリカは微笑した。


「そうね、ハルトは普通」


「普通だって言われるのもそれもそれで傷つくな」


「そう?私は普通が好き。普通なんて人それぞれだけど、一般的がいいな」


 エリカはハルトから既に顔を離して、視線もそらして話していた。その横顔は何か悲しい過去があると言わんばかりに暗い。


「その理由はまだ言えません。他の人たちにも言ってないしね。けど、きっといつか言う時が来ると思う」


 エリカはもう一度ハルトに視線を合わせると力強く言った。


「私はこの世界で生き抜いて、それで素晴らしい人生だったって周りに言われるようにしたいの」


「バカだな」


 ハルトの一言にエリカは戸惑いの色を見せた。


「人生なんて人それぞれ、だけど、お前の人生はお前だけの、俺の人生は俺だけの、主人公になったからには自分が納得できる生き方をしたやつが勝ち組だろ」


 これは中学校の時の恩師の言葉だ。その頃のハルトは少し荒れていた。それを構成させたのが恩師であり、ハルトの真の道を切り開いてくれた人だ。

 その人の言葉は今でもハルトの心に深く根付いている。


「ま、まぁ、なんだ、お互い頑張ろうな」


 恩師の言葉を丸パクリした上に、妙な空気になり気まづくなったハルトは無理やりにまとめるとエリカの頭をポンポンと軽くなでた。


「そうね、そうかもね」


 エリカは少し考えているのだろうか、左手を顎にあてがって返答した。

 その時、ちょうどハルトがエリカの頭をなでている時にソウタが帰ってきた。


「お、おま、ハルト!何してんだ!」


 ここから先、想像できる面倒な展開にハルトは深くため息をついた。ソウタはエリカのことが好き、それはタケルから聞いていた。

 だからさらにソウタの頭が沸騰する前にハルトは さっと手を離した。


 エリカの方はなぜか少し不満げな顔をしていた。



 エリカの家でハルトはソウタにこっぴどくしごかれると、昼は過ぎているだろう時間からやっと狩りに出た。

 荷台はすでにタケルが持ってきてくれていたので、南門へすぐ向かった。


 門を抜けると昨日と同じく草原が広がっていた、が、少し違和感があった。

 レギスがいないというのはいいとして、何か昨日と比べてこの景色に減ったものがあるような…。


「ハルトさん、何考えてるんですか?」


 話しかけてきたのはマキだ。だが珍しく普通に話しかけてきた。


「いや、なんでもない。さっさとレギスを探そう」


 勘違いだろうと割り切ってハルトは歩き出した。それに次いでソウタたちも付いて来る。

 当然のことだが、エリカは冒険者ではないので家で大人しくお留守番というわけだ。


「うーん、レギスいないね」


「他のやつらが狩り尽くしたんじゃねぇのか?」


 昨日のハルトと同じ考えをするソウタに話しかけた。


「やっぱりそう思うか?」


「いや、知らねぇけどよ」


 どうやらソウタは適当に言ったらしいが、昨日のハルトはそんな適当なやつと同じ思考をしていたと思うと、過去に戻って考えを改めさせてやりたくなる。

 小一時間ほど歩いただろうか、街からは適度な距離離れたがその間にレギスは一匹も見当たらなかった。


「そろそろ街に戻ろう。流石に遠くに来すぎたな」


 ハルトはそう言って半回転する。だが、その途中、意識しなかったからよく見えなかったが、何かが見えた。

 ハルトは恐る恐る横目でその方を見ると、そこは断崖絶壁。街からでも霞んで見えるほど高い。


 だが、その上、崖が崩れたとは言えない、その一部が削り取られたような跡が見えた。

 生き物が何日かかけて掘れば掘れるだろうが、大きさが大きさだ、その部位は端から端までで五十メートルはあるだろう、それに、綺麗に丸い形になっている。


 流石にこんな芸当はそこら辺の魔物ができることじゃないだろう。

 ハルトは崖の上を指さして声を上げた。


「なんだよあれ」


 その声を聞き振り返った三人はハルトの指さす方を見上げた。


「おいおい、なんだよ」


「やばいですね、やばいやつですよね?!」


「ん?誰か見えないか?」


「ちょっと見てみます」


 タケルの言葉にマキが反応して、魔法を使ったのだろうか目を細めて崖の上を見た。


「ま、まさか…本当にやばいやつですよ。皆さん走って街まで戻りますよ」


「何がいたってんだ?」


「いいから!」


 マキは今までに見たことがないような顔で怒鳴った。いや、焦っているから出た言葉だろうが、その額には汗が流れていた。

 ハルトたちは急いで、街まで走った。こんな時こそ遠くに来たことを後悔する。


 仲間が増えたからって遠くには行くものじゃない。だが、ハルトは崖の上にいた者を直視はしていなかった。だが、マキの表情からするによっぽど危険なのだろう。

 そこからはただひたすらに走った。時折後方を見るが特に以上は無かった。

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