プロローグ
高校生活をしてる上で自分のステータスは平均値以上だと思っている。勉強に、部活は普通にこなして平均だが、彼女がいる。付き合ってまだ半年だが彼女がいることで平均値は上がった、そう思えた。
「彼女彼女って、非リアな俺たちからしたら羨ましい限りたぜ」
教室にて、休憩時間によく話しかけてくる前席の友達が振り返り話しかけてきた。
「いいだろ」
俺、ハルトは軽くドヤ顔をしながら胸を張った。
「そんな事よりさ、知ってるか?この高校の七不思議」
七不思議なんてどこにでもあるどっかの誰かがでっち上げた噂だと思っていた。
「何だそれ?」
「知らないのか!?科学室の走る人体模型、美術室の泣く石膏像、その他もろもろあるんだけど、一番気になるのが異世界転生魔法陣!!」
その友達は語尾を強めながら言い切った。正直、異世界転生魔法陣なんて言われてもどこのファンタジーかと言いたくなるが、その衝動を抑えて喋った。
「その七不思議がどうかしたのか?」
「そうそう、走る人体模型とかは正直どうでもいいんだよ。最後の魔法陣!あれを実際にしてみたくてな!」
「は…?」
到底無理だろうことに挑もうとする友達に冷ややかな目を向ける。
「まぁまぁ、そんな顔すんなよ。一応それなりの算段はあるんだよ。」
「無理だろうけーーー」
「まっ、今日の夜10時に学校集合で」
ハルトの言葉をさえぎりそいつは無理やり予定をねじ込んで来た。
今夜のことは一概にあいつが悪いとは言えなかった。話に乗ったのは自分だし、それでドタキャンするのも気が引けた。だがら来てしまった。
「よーう、待ったか?」
「いや、さっき来たばっかりだ」
友達の方を見ると、なにやらリュックがパンパンになるまで詰め込んできていた。
「よし、いこうか!」
向かった先は本校舎2階にある科学室だ。通常この時間帯はどこ教室も鍵がかかって入れないが、今日は開いていた。音を立てないように慎重にドアを開け、中に入る。
科学室の中は固定された実験机にイスがちらほらと置いてあった。
「どの辺にしようかな…」
「奥にしないか?見回りの人が来たら大問題だぞ」
「それもそうだな」
2人は一番奥の実験机の前に立った。
「で、どうするんだ?」
「まぁ、待てって」
そう言うとごそごそとリュックの中からいろいろと取り出した。中には気持ちが悪くなるようなものから、気になるものまで、興味をそそる物が沢山出てきた。
「まずは、試験管に水を入れて、そんですり潰したヨモギとコウモリ、トカゲを入れて混ぜてーーー」
ヨモギまではよかった、だがその次から次へと入る物がえげつない。
そして、最後に入れたネズミのしっぽを乾燥させて粉上にしたものを入れた時にはもう、カオスだった。
「よし、あとは魔法陣を描くぞ!」
試験管の口を指で塞ぎ少し隙間を作ると意気揚々と実験机の上に液体を流し始めた。
ハルトはそばで見守りながら見回りの人が来ないか警戒していた。5分程が経った時。
「できたぞ!」
その声を聞き近寄ると実験机にはそれっぽい陣が描かれていた。
その陣を見ているといきなり机が軋んだ。
(まさか本当に魔法陣が!?)
「お前も乗れよ」
その声でなんで実験机が軋んだかが分かった。本当に魔法陣が起動してとか思ってしまった自分が恥ずかしい。
ハルトは友達にうながされるままに実験机に飛び乗った。
「じゃあこれ持ってくれ」
渡されたものを両手でつかむと何やら古そうなじゅうたんの角だった。それを二人で広げて陣の上に敷いた。
「乗ろう!そしたら異世界転生だ!ワクワクするなぁ」
友達は目をキラキラと輝かせながら陣の上に乗った。それを見てハルトも慌てて乗る。
だが。
何も起こらなかった。それどころかじゅうたんに染み込んだ液体が靴下を通して足裏に当たり気持ちが悪かった。
「結局なんにもならないな」
初めからわかっていた、けどこいつのテンションの高さに本当にそうなるといいな。そうなったら面白いと非現実的な考えを持ってしまっていた。
「なんでだ…陣が悪かったのか…!?これじゃ俺の異世界ライフが…」
友達はがっくりと肩を落とすと悔しそうに実験机を降りた。
「まぁ、気を落とすなって、七不思議でもこの学校までに過ぎないだろ?こんなちっぽけな学校の不思議で異世界に行けられた方が不思議だよ」
「それもそうかもな」
ハルトも降りようとした、その時だった。
足元、じゅうたんの下がピンク色に輝き出した。
「うわっ、!何だ!?」
ハルトは驚きのあまり降りようとしていた足を戻してしまった。
すると光は更に強くなりじゅうたんの下に書かれていた魔法陣がピンク色に光浮かび上がってきた。
「ま、まさか…陣が起動したのか!?」
「え、お前だけ行くのか!?ずるいぞ!俺も連れてってくれ!」
お互いにお互いの手をとるために手を伸ばすが透明な壁によって阻まれて届かない。
そして陣は高速で回転して轟音と共にハルトの体を包み込んでいった。




