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1.「メルヘン」と「メンヘラ」

え~、今日はカタカナ比較学の第一回目の授業なので、だいたいこの学問のことについて説明しておことうと思います。

 私の書いた教科書の最初の部分、8ページまでですね。

 「なぜひらがなではいけないのか」というところですね。

 それには、まず「ひらがな」と「ヒラガナ」を比べてみることから始めましょう。

 まあ、教科書を読んでいたらわかるんですけどね、誰か予習して来たかな?

 ……

 誰もいないようですね。じゃあ、説明してしまいますけどね。まず、ひらがなは丸みがありますね。カタカナにはそれがない。そこが大きいポイントですね。よけいな丸みがないという考え方ですね。文字の形にこだわりを持たせず、読みに徹しています。形状的なことについては検討の余地を与えないと申したら良いでしょうかね? 音だけに特化して、比較できるということです。

 ここまでいいいですか?

……

 じゃ、先に進めます。

 今日比べてみるのは、「メルヘン」と「メンヘラ」です。

 これは無作為に選んだ二つの言葉ではありますが、「メ」で始まり、四文字で完結しているという共通点があるので、なにげに漠然としたつながりが発生しており、その結果頭に浮かんだわけです。この「なにげ」という感覚が実は、この学問にとっては非常に大事なところであります。というのは、何かしらの意味不明の物がその二つの言葉を、まずここに登場させたということによって意味を生じるわけです。これを「無作為の意味」と言います。この場合の「物」とは何でしょうか。それは、感覚、意識、記憶というような脳内イメージといってよいかと思われます。

 ここ重要ですよ。「無作為の意味」という言葉はメモしておいてくださいね。

 余談ですが、私が「メモ」と言った時には、パソコンなどの電子媒体を使わず、筆記用具を使って、手を使って実際に文字を書くことをお勧めします。推奨であって、強制ではありませんが。

 いいですか? 次に進みますよ。

 では、まず「メ」に注目しましょう。

 この二つの言葉の「メ」は「メンタル」の「メ」と考えてまず問題ないかと思います。ですが、「メルヘン」という概念が生まれた歴史を考えますと、この時代には「メンタル」という意味は含まれなかったということは明白なわけでして、また、メルヘンの語源はドイツで生まれたと考えられますが、メンタルを精神的とか心的と日本語に置き換えてからドイツ語に置き換えた場合、言葉としての関連はまったく生まれないわけです。

 つまり、この場合、「メンヘラ」なる言葉が先にありきの、単なる「メ」という発音からくる連想ということになります。そこにこじつけて論じるという行為が、この学問の特におもしろい部分と思われます。

 さて、「メンヘラ」の場合は、「メン」までが「メンタル」を指すと考えられますので、「ン」は「メ」の付随語、あるいは、接尾語のような役割を果たすものと考えて下さい。「語」というのが少々大げさであるとも思いましたので、私は「付髄文字」「接尾文字」と呼んで区別しております。特に詳しく説明する時には「付随カタカナ」「接尾カタカナ」として表現している部分もありますが、大きな違いはありません。そこ、ニュアンスで区別してもらってけっこうです。

 次、「メルヘン」の「ル」にいきますよ。

 これは、皆さんがそれぞれにこじつけて下さい。

 と申しますのは、言葉の中に遊びの部分を持たせるということをしたいんですね。解釈の仕方に自由度が生まれますと議論が生まれます。その議論部分、それぞれの視点を盛り込める部分を残しておきたい、ということです。このような文字を「発想自由文字」と呼んでいます。

ちなみに、教科書の中では「ルンルン」の発想としてあります。まあ、深い意味はありませんが、なにか心浮き立つこと、楽しいことと解釈していただいて結構です。

 皆さんも何かを発想しましたら、必ずその解釈までを考えておいてください。そこが重要です。

 「へ」は「メンヘラ」「メルヘン」共に、三番目に置かれた文字になります。つまり四文字中二文字の音と場所が同じということが、この二つの言葉の共通点として非常に大事な部分と言えます。この共通点を示す時「音位置共通値」を用いることを推奨しております。この場合は四文字中二文字の音と位置が同じなので、「4-2-2」と書きます。読み方は「ヨンニイニイ」となりますね。

 よろしいですか? 試験では他の言葉での音位置共通値を求めることになるので、メモしておいてくださいね。


次、「メンヘラ」での「ヘラ」とはなんでしょうか。これは感覚語に近いもので、「揺らぎ」の表現ではないかと想像できます。音のはずみが軽く感じられることから、軽く語るという目的を含んだものなのでしょう。一字ずつ分解しますと、「ラ」は「メン」の場合の「ン」と同様の働き、つまり付随文字、接尾文字のような役割を果たすものと考えてよいかと思います。

 「メルヘン」、「メンヘラ」この二語を続けて発音した時、その二つの言葉の関連によって導き出される言葉は何でしょうか。それは「妄想」「発想」「想像」「空想」などではないでしょうか。これも脳内イメージですが、この脳内イメージを捕まえて下さい。このようなイメージを文章として、物語として組み立て、物語としての形を取ったものが「メルヘン」。これらの脳内イメージに支配され、動かされてしまう人間が「メンヘラ」と言えるか、と思います。

 これは教科書に書かれた結論になりますが、ここのところ、別の発想を持つ人もいるでしょう。そのような場合は、それを課題にして、それについてレポートにまとめて下さい。いいですか、それはまず一つ目の課題。

 その他、この授業を通して皆さんにまとめていただく課題をいくつか挙げておきます。

ひとつは、比較したい言葉を探すこと。また、これから毎回の授業で取り上げた文字について、別の感想を持った人はそれをまとめること。

 何か、質問がある人?

 はい、橋本君。

 え? 物の名前の比較でもいいか? たとえば? テーブルとツクエ? ええ、まあ、比較できるんならしてみてください。

 はい? 短い言葉でもいいか? え? アセとアリ? いいですよ。短い物から始めてみるというのは、一つの方法ではありますね。

 はい? メルヘンの「ル」は「ルルルル~♪」でいいか? もちろん、いいですよ。その場合の解釈は?

「鼻唄をくちずさむような浮かれた感じ」ね、いいじゃないですか。「ルンルン」にちょっと近いといえば近いけどね。ルという音が生む感覚なのかもしれないですね。うむ。これは一語についての考察を深めるね。そうこともね、今後、一緒に考えていきましょう。

 他に?

……

 もう、質問は出ないかな? じゃあ、次回は「オセアニア」と「オノマトペ」についてやります。音位置共通値は5-1-1ですね。その後、文字数が違う物、共通点が見つからない文字についてどうやって比較していくかについても勉強していきますので、お楽しみに。

 では、今日はここまで。




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