新武器が欲しいです
「なあ、コン」
「なんですか? 大斗」
「そろそろ武器をショートソードから新しい武器に買い替えたいんだが」
俺は最近ずっと思っていたことを口にする。
そう、ショートソードではオークが倒しづらくて堪らないのだ。
まだゴブリンやコボルトは普通に倒せるのだが、ショートソードではオークは荷が重い。
昨日ショートソードで思いっきりオークを切りつけた時にショートソードが根元からポッキリ逝ってしまったのだ。
堅いもの(オーク)を切ってしまったというのもあるだろうが。
それとレベルが上がり筋力がかなり上がったことも影響しているとは思う。
とにかく完全に武器が身の丈に合わなくなったのだ。
さすがにポイント残高が残念な俺だが戦闘中にポッキリ逝くような剣をあまり使いたくはないということでコンに新しい剣をせびることにしたのだ。
「ショートソードで我慢しなさい」
コンの返答は無慈悲だった。
「なんでなんだ、昨日ショートソードが完全に根元からポッキリ逝っちゃったんだよ! そろそろ武器も変え時ってことじゃないか」
俺が必死にコンを説得しようとするが。
「それってただ堅いもの(オーク)を無理やり力任せに切ったせいじゃないですか」
「うう」
痛いところを突かれる。
必死に考えまいとしていたことなのに。
「ここで武器の力に頼っていては剣の腕は上がりませんよ。結局未だ剣術スキルのレベルは上がってないんでしょ」
「ぐぬぬぬ」
またまた痛いところを突かれた。
確かに剣術スキルが未だレベル1というのも関係しているだろう。
この剣術スキルが上がればもっと効率よく剣が扱えるようになり、ショートソードでもオークを簡単に倒せるようになるのは事実だ。
しかし剣術スキルのレベルの上げ方は未だこの世界の者に聞いたことがないので分からないが、敵に向かって剣を振った回数が一定数になれば上がるという方式なのか、剣で敵を倒した数が一定数になると上がる方式なのか、それとも別の指標が有るのか分からない状態なのだ。
もしかしたらこの世界の人に聞けばそのどれか分かりスキルの取得やスキルのレベル上げも大分楽になるのだがなあ。
かと言って現在のレベルや装備で街に行って襲われでもしたら目も当てられないから、このままこの森でじっくりレベルを上げるのが良いのだろう。
というかこんな思考をしている場合ではない。
そう、今はどうにかコンを説き伏せて新しい武器を買うべき時なのだ!
俺は街に行った方じゃないのかという思考を止め。
説得に全力を尽くす。
「だけどスキルレベルの上げ方はまったく分からないんだろう? とりあえず剣術なら剣を使っていれば上がるだろう程度の事しか」
「確かにそれはそうですが、それについてはこの世界の人に聞かなければ分からないことですし、それについて考えることは少ないでしょう」
「そうだな、剣術スキルのレベル上げについてはしょうがないとしたら、ショートソードを止めて新しい武器を買ってそれを使って効率的に狩りをすれば、俺のレベルも上がり、ポイントが美味しいじゃないか」
コンが言及しているのは剣術スキルのことだけだから、それを有耶無耶にして利点だけを並べればコンも動くはず!
「くっ、確かに剣術スキルについてはどうにもならないから、そうなればあなたの言っていることは正しいと思いますが」
「だろ」
俺は満面の笑みで答える。
「ですがあなたのその笑顔がウザいので購入は拒否させていただきます」
「おおい」
コンがにやにやと笑いながらこちらを見てくる。
どうしてうちのコンはこんな子に育ってしまったのでしょう。
とかいつもごとく関係ないことを考えていると。
「冗談ですよ、新しい武器を買うのでしたね。武器の種別はどうします? 剣ですか? それとも新しく遠距離武器など買いますか?」
「う~ん、やっぱ欲しいのは銃とかだな、AK-47みたいなのない?」
銃と言ったらやはり有名どころのAK-47かトカレフは射程が短いし、ドラグノフは狙撃銃だし、ウージーは射程が短いからなあ、やはりAK-47が良いだろう。
まあ、俺はそこまで詳しくないので知っている有名どころの銃を適当に上げて見ただけなんだけどね。
「そうですね、銃はAK-47のようなタイプの物で魔導銃にしますか? それとも普通の銃にしますか?」
「え? 銃に魔導銃とかがあるの?」
「はい、ありますよ。大体魔導銃の方が火力は高いですし、発射速度も断然上です。まあ、耐久力はありませんが」
「おおお、凄いな、なら光線銃とかあるの?」
「光線銃ですか、確かにありますがあれは他の銃に比べ少し高いうえにスペックはそこまでのものでもないので」
「そうなのか、ロマン武器だったのに」
「購入は魔道銃AK-47でよろしいでしょうか? それとも詳細なスペックも聞きますか?」
「う~ん、性能は良さそうだけど魔導銃とか高そうだからな、スペックは専門用語聞いても分からんからスルーで値段だけお願い」
「分かりました。魔導銃AK-47は2300ポイントです」
安いのか?
ぶっちゃけ買っているのが10ポイント以下の買いものばかりだから、正直よく分からん。
コンが止めた方がいいとか言わないので狩りで十分使えるものなのだろう。
悩むのを止めとりあえず購入してみる。
「購入で!」
「はい、購入が完了しました」
カタログから光が放たれAK-47が現れる。
ヤベえ、カッコイイ!
俺は素早くAK-47を取り上げ、構える。
ヤバイ、ヤバイ、興奮するわ~。
男ならやっぱ一度は剣とか銃とかに憧れるよな!
さっそく試射してみたいんだが、『ホーム』の中ではさすがに怖いので外に行って試射しよう。
俺はすぐにコンに声を掛ける。
「コン、今すぐ外に試射しに行くぞ!」
「あなたはおもちゃを買って貰った子供ですか」
コンは呆れつつ、俺の背中に飛び乗って来る。
俺はそれを確認すると。
「ホーム!」
俺たちは外を確認せずに外に出た。
「よっしゃああああああ、試射するぜええええええ」
俺はテンションを上げAK-47を構えてトリガーを引く。
が何も出なかった。
「あれ弾が出ないぞ?」
俺がおかしいなと銃口を覗きこむ。
「何を言っているのですか大斗はセーフティーを解除してないでしょう」
そうだった。
当たり前な事を興奮していて忘れていたみたいだ。
俺は改めてセーフティーを解除し、AK-47を構えトリガーを引く。
トリガーを引いた瞬間白い何かが高速で銃口から連続して出て行くのが見られた、しかも発砲音などはなく、弾が風を切り裂く音しか聞こえないし、反動も全くなかった。
おいおい、魔導銃って発砲音も反動もないのかよ。
思った以上の性能に俺は驚きつつ、取り敢えずAK-47を撃つのを止めた。
「どうでしたか? 魔導銃の試射の感想は」
「ああ、なんというか発砲音も反動もないから、俺が持ってたエアガンを売ってるのと変わらないな」
「そうですか、まあ、エアガンを撃ったことある人は魔導銃を撃つとよくそう言われますね」
なんか撃った感触はなんとも言えなかったなあ。
まあ、それはいいとして火力の方はどうだったのだろう。
俺は的にしていた木々を見に行く。
木々は穴だらけだった。
そう、穴だらけなのは良いんだが。
これは何なんだ?
木々には10cmの穴がいくつも開いていた。
10cmだぞ!
10cm!
おかしいだろ!
明らかに銃口よりも大きいじゃねえか!
しかもこれは木を貫通している。
どんな威力しているんだよ。
俺は魔導銃AK-47の威力にドン引きしつつ、俺は顔がニヤけるのを止められない。
ここまでの武器が手に入ったのだ。
しかも、俺がショートソードでちまちましていたのが馬鹿らしくなるほどの物だ。
これからの狩りが格段に楽になるだろうと思いつつ。
魔導銃AK-47を肩から下げ『ホーム』へと戻った。
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