無謀なる幻影 7
「貯まらねえええええええええ、なんで、なんでこんなここのダンジョンはポイント貯まらないんだよっ!」
俺は今現在敵を倒しても倒してもほとんどポイントが増えていないという恐ろしい現実に耐えられずに絶叫していた
最初の舌の化け物だけの時は順調にポイントが増えていたのだが昆虫型ばかり出るようになってから、あれからこのダンジョンの4割ほどを攻略してしまっているというのにポイントはほとんど増えていないのだ
なんでポイントが増えないんだと疑問に思うかもしれないがそれは簡単だ
俺はまともな遠距離攻撃という手段を持っていないからだ
そう俺の現在の遠距離攻撃は蛍丸の炎の魔法は多用すればすぐガス欠になり、魔導銃AK-47は撃てば撃つほど弾代がかかるという、この中で俺のできる攻撃手段を選べと言われれば魔導銃AK-47しかないわけで……
アザレスの森みたいにブラックベア―をヘッドショットできるような環境ならば十分に黒字になったはずなのだが、押し寄せてくる奴らにヘッドショットを喰らわせるほどの力量が俺にあるはずもなく、奴らを近づいてくる前に仕留めるためにはもうセミオートというかほぼフルオートで弾幕を張る事が重要なわけで……
どう足掻いても弾代がかかりポイントは全然増えないんです!
あのゴキブリ野郎も虫の癖に無駄に上手い立体軌道でこちらの攻撃をかわしてこちらに近づいてくるし、ムカデの奴も頭吹き飛ばしても胴体が穴だらけでも平然とこちらに近づいて来るわと相手との相性が絶望的に悪いのも要因の一つだろう
このままではこのダンジョンの本命であると思われるミラーハウスに幻惑耐性のアクセサリーなしに突入しなければならないのだ……
というかもう帰った方が良い気がしてきたよ……
ポイントが全然増えないし、レベリングにはなっていると思うけどレベリングだけなら他に良いダンジョンがあるだろうし
どうにかしてコンを説得して他のダンジョンに行くのが正解のように感じられる
コンの方を向くとこちらを心配そうに見つめていた
ちょっと情緒が不安定になっていて絶叫しすぎたせいだな
まあ、俺が絶叫する事なんてあまりない……ことはないな、割と絶叫しているような気もする
獣が出てしまうとどうも我を忘れてしまうからなあ、向こうに居たころよりもその頻度がえらく多くなってしまった気もするが、おっとそれよりもコンが心配するといけないので真面目にしとかないとな
「コン!今すぐこのダンジョンから撤退しよう!ここのダンジョンには俺らはまだ早かったんだ、十分なポイントを他のダンジョンで溜めてからでも遅くない。ここで無理して奥に進んでも得られるものは少ない」
「大斗、そんなに追い詰められていたなんて」
「私が幻惑耐性のアクセサリーを貰ってしまったばっかりに、ここまで悩んでいたなんて」
よし!
好感触みたいだ、このまま適当に畳み掛ければ説得はできそうだ
俺はさらに雰囲気を出すために膝をつき、手で顔を覆い嘆く
「もう、もう耐えられないんだ。虫の魔物の軍勢に目を背きながらコンを見るのが、そして、幻惑耐性のアクセサリーが足らなくて幻惑系のスキルを誰か一人が受けるかもしれないこの状況が、俺らの最大のアドバンテージはカタログであり拠点となるホームだ、それを十二分に発揮できる場合にだけ戦い、不利な状況ではホームに撤退し作戦を考え勝てる準備をする。そして、無理そうなら撤退する、ここで無理する必要はないだろっ!」
決まったな!
清々しいほどの正論であり、物凄く卑怯な戦法だと言われても仕方がないかもしれない
だが効率的にはこの戦法が俺らのできる最高の戦い方だろう
「そ、そういえばそうですね、もう幻惑系スキルの怖さも体験しましたしこれ以上先に行っても行かなくとも特に問題ないですね」
「確かにここのダンジョンの怖い点は大体体験できたから準備が完全にできてない状態でこのまま、このダンジョンの本命であるみらーはうすとやらに行くのはダンジョンを舐め過ぎているか、すまない、私も少し冷静ではなかったみたいだ」
「いやいや、俺も虫の魔物が出始めた時点でポイントが全然増えていなかったのにそのまま進むことに反対しなかったし」
「そうですね、大斗の遠距離攻撃はポイントを使う魔導銃AK-47しかないのに私とエリアで処理しきれないあの虫達が出た時点でそれを考えるべきだったかもしれません」
「すまない、私がこのダンジョンに行こうと言っておきながら冷静に判断できていなかった。先輩冒険者として色々な事を教えると言っておきながらやはりあまり役に立っていない気が」
「だ、大丈夫だよ!エリアから色々と一般常識を学んでいるおかげで今からでも街に行っても問題ないくらいのレベルになっているから」
「「それは早い!!!」」
「え?」
コンとエリアからすると俺はまだまだ一般常識を学びきれてないのだろうか、まあ、こうやって人気のないダンジョンをゴリ押しの様な感じで攻略している時点で常識がないと言われても仕方がないのは確かだが
「そ、それよりも大斗がこのままでは厳しそうだから戻ろうと思うけどエリアはどう思いますか?」
「そ、そうですね、私もこれ以上はリスクを伴う可能性もありますから戻るのには賛成ですよ」
「え?」
二人がこうも簡単に撤退に賛成するなんて、エリアはともかくコンがすぐに賛成するのは怪しい気がするが……ここに長居も先に進むのも嫌なので良いか
「反対なのですか?」
「いやいやいや、勿論賛成ですよ、というか俺が発案者みたいなものだから反対するわけないじゃないですか」
コンがこちらを不審そうにエリアも不思議そうにこちらを見ている
いけない、いけない、二人の意見が変わる前に撤退しなければ
「ははは、先頭は任して下さいよ」
誤魔化すように魔導銃AK-47を構え気配察知を発動させ敵が近くに居ない事を確認し角を曲がると――
まさかこんな仕掛けとか有りかよ
このダンジョンの捻くれ具合は凄まじいとかいうレベルではないな
しかしこれはヤバいかもしれん
これが戻る道にずっと書いてあるとすると――
耐えられる自信がないぞ
『プークスクス、お帰り、お帰りなんデスカ?
この程度の子供だましダンジョンを攻略できないとは
冒険者様は低ランクだったみたいデスネ
命は大事ですからとっとと逃げ帰るデスヨー』
ちなみに次の曲がり角にもその次の角にもガラスの壁の内側に赤い文字が書かれていた
おそらくは俺たちが通り過ぎた角すべてに書かれていると思った方が良いだろう
「大斗あれを見てください」
俺はコンの指さす方を見るとこのダンジョンで始めてみたゴブリンが何かの板を持ってこちらを見て笑っている
すぐに鷹の目を発動し板に何が書かれているか確認を――
『帰っちゃらめ~』
「「「…………」」」
「なあ、俺これが続いたら耐えられる気がしないんだけど」
「奇遇ですね、大斗私も耐えられる気がしません」
「だ、大斗もコンも落ち着いてください。ここまでするダンジョンは聞いたことも見たこともありませんが、このままでは相手の思う壺になります。ダンジョン内では平静を保つ事がなにより重要ですから!」
完全に頭に血が上っているだろうと思われる俺とコンを必死に止めようとしているみたいだが、エリアもけっこうイライラしてそうだ
ここまで喧嘩を売ってくれたんだ
このダンジョンが無事で済むと思っていないだろうな、おい
こちらも徹底的にこのダンジョンにめちゃくちゃにしてやるよ
この赤い文字のおかげでとても良い事も思いついたしな
「さすがにここまでされたらこちらもやり返さないとすまないよ、この先のミラーハウスを簡単にそして徹底的に破壊もとい攻略する案があるけど聞く?」
「もちろん!」
「ええと、それが有効ならそれでも良いと思いますが」
「よし!じゃあ決まりだな、コンはスプ○トゥ○ンってゲーム知っているか?」
現在のカタログポイントは10342となっています。