臭悪なる深淵
「ぐ、グロい……」
俺は襲い来るグロくてキモい存在に目を背けながら魔導銃AK-47のトリガーを引く。
見ていないのでどこに当たっているかは分からないが、何かが倒れる音がしているから倒せているのだろう。
しかし、ほとんど敵を見ないで適当にトリガーを引いているので凄く勿体ないのだが……
「大斗、ちゃんと前を向いて敵を倒してください、弾が凄く勿体ないです、弾もちゃんとポイントが必要なのですよ」
後ろからコンが文句を言ってくる。
当たり前の事を言っているようにしか聞こえないだろう、しかしながらその言葉に少しの説得力も残念ながら感じない。
なぜなら後ろと言っても俺から50メートルも後ろに離れているのだからな!
ちなみに離れている理由はグロくて、とても見たくない、そして、臭いがきつすぎるとの理由だ。
無論、エリアもコンと一緒に50メートル後方にいる。
エリアの方は俺と一緒に戦うと言っていたのだがコンが戦闘経験が俺には足りないだとかレベルを上げるためだとかグロ耐性付けるためだとか言って、コンに説得(物理)されてしまい俺一人だけが前方で戦うことになってしまっているのだ。
こいつらのグロさには大分耐性?が付いてきたような気がするが(まだ直視はできない)、臭いだけは耐えられそうにない。
え?
それじゃ全然耐性付いてないだって?
じゃあ想像してみてください
山の中に放置された犬の腐乱死体、周りには肉つきの骨が散らかり、ハエがたかり、シデムシが肉を貪り、ウジが這い回るあの光景はひどいものですよ?
そして極めつけはあの臭いです
1週間放置した生ごみの臭いをかいだ事がありますか?
あれよりも遥かにひどいですよ……
なんというかあれよりもさらに獣臭く、臭いが濃いですよ?
それがゾロゾロと大量に近づいて来るとか……とてもじゃないけどまともな人では相対することはできないだろう。
なんか考えただけでも気分が悪くなってきたわ。
ここは過疎ダンジョンの一つ、臭悪なる深淵。
一番近い村から山を3つ超えないといけない
三級ダンジョンである
ダンジョンの魔物の素材が売れない
魔物の強さはまったく大したことないが数が異常
物理攻撃が効かない厄介な魔物が居る
グロすぎてヤバい
何より臭いで死ぬ
などと全く美味しくなくて誰も行こうとしない過疎ダンジョンである
なぜこんな所にいるかというとエリアが仲間になり、色々入り用になりほとんどなくなってしまったポイントの補充のためだ
偽装スキルという人の目を誤魔化せるスキルも手に入れたので俺は常識とこのスキルさえあれば街に行っても大丈夫だとコンに説明したのだが、コンはポイントがないのが心配なのとエリアとの連携を確かめるのが先だと言ってダンジョンにいく事に……。
そして、俺たちの戦いはとてもじゃないが人に見せられない、人が居ると厄介事しかやって来ない、人が居るダンジョンは魔物の数が少ないので効率が悪い等の理由から過疎ダンジョンに行くことに決定し、エリアの案内で一番近い過疎ダンジョンのここに来たのだ。
一番近い過疎ダンジョンに行くのは賛成だ、賛成なんだが……どうしてこんなダンジョンに行こうと思ったんですかエリアさん!
普通に考えればここは止めようとか思いませんか?
俺らゾンビ用の臭い対策とか何もしていませんよ?
コンは狐だからここは確実にキツイとは思わなかったんですか!
案の定コンは速攻ダウンし、俺も何度か吐いた、エリアさんは慣れていて平気だと言う顔だった。
エリアさんはできる人だと思ったのだがもしかたら天然さんなのだろうか?
ちなみに俺らはエリアに自分たちがどういう存在なのか、そして、カタログについての説明を終えた。
こんな話は荒唐無稽だろうにエリアは意外にもすんなり理解してくれた。
小声で「これが師匠が言っていたチートというやつか……」とか「これはまさか私もハーレムの一員に……」とかなんかよくどこかのweb小説にありそうなことを言っていた様な気がしたが気のせいだろう、小声だからよく聞こえなかったしな。
とりあえず全部は話していないがこれでエリアも俺たちのパーティーの一員だ!
とりあえず、今日は宴だな!高くて美味そうなものをカタログで買うことにしよう、それとエリアの武器を買っておかないとな・・・
と一夜を過ごしたのだが宴にちょ~っとお高い料理を買いすぎたりエリア用の部屋に諸々の家具を購入したりしていたら気づいたら、まだエリアの武器を買っていないのにすっからかんに…という訳なのだ
「ヴヴァァァ゛アヴァウァヴァヴァヴァ!!!」
不快な音が俺の耳を汚してくる、聞くだけで気分が悪くなり吐き気さえしてくる
まあ、吐き気はここに来てからずっとなんだけど感覚的にはさっきまでとはちょっと違う感じがする。それにあの不快な音を聞いてから込み上げてきたからおそらくは…
嫌々ながらゾンビの方を向いてみるとAK-47でずたずたになりながらも様々な部位を引きずりながらこちらへとゆっくりゆっくりと近づいてきている。
物凄く見たくない光景を完全に直視してしまったが、あの不快な音の原因はこいつらではない、見たくはないが我慢しつつ探すとゾンビたちの上空にさっきまでは存在しなかったであろう半透明な足のない何かが複数浮かんでいるのを見つけた。
事前にエリアに聞いていた話からするとホラー系の定番モンスターのゴーストだろう
なんだただのゴーストかと思うことなかれゴーストについては特別な性質を持っている、ゾンビたちについては物理攻撃、メイスで頭を殴り潰したり、剣で首を斬り飛ばしたりといった方法でも倒せるが、ゴーストはメイスで殴打しようとしたり剣で斬ろうとしてもすり抜けてしまい、普通の攻撃ではダメージを与える事が出来ない、さらに厄介なことにやつらは状態異常攻撃や精神攻撃をしてくるのだ。
これらについては耐性スキルを習得する(普通にしていては上がらないので無理)、耐性スキルを持つ装備を使う、回復魔法や薬により対抗しないといけない
何の準備もせずにゴーストに戦いを挑んでしまうと「かなしばり」を受け動きが遅くなった所をさらに「テラ―」で恐慌状態にされまともに戦えなくなった所をゾンビの群れが襲ってくるといった感じになるそうだ
素晴らしい程の極悪コンボだ
きちんとした装備をすれば防げるが魔法という攻撃手段を持っていない場合は対ゴーストのために特殊な武器を使うか、聖水を武器にかけておかないとゴーストは倒せないらしい。準備に掛るお金はけっこうな金額になるらしい
そういうわけでゴーストやゾンビなど弱いモンスターしか出ないここは、モンスターのドロップも美味しくない、準備に結構なお金が掛ると碌な条件が揃っていないのだ。加えて先にも言ったようにここに来るのが大変で道中戦うモンスターの方が厄介という
ほんとこんなダンジョン誰が来るというのだろうか…
まあ、誰も来ないからこそ、こうやって大っぴらに戦えているんだけどな
俺はゴーストを見据えながら腰に差してある蛍刀を抜く
「火纏い!」
掛け声と共に蛍刀の刀身が赤き炎に覆われる
この状態は火の魔法で覆われているので物理攻撃が効かないゴーストを斬り倒すことができる、簡単にいうとよくラノベで出てくる魔法剣!っていうような状態だろう
近づいてくるゴースト数匹を一振り、二振りと軽く斬り払うとゴースト達はたった一撃で消滅していく、凄く嫌らしいダンジョンではあるが所詮は三級ダンジョンということか
このまま向かって来るのを斬り続ければ楽にゴースト達は簡単に殲滅できるし、ゾンビは遠距離で仕留めれば楽勝でこのダンジョンを攻略できるだろう、この具合ならボスの方も大したことではないだろう
俺がそう思っているとゴースト達がなかなか近づいて来ない事に気づく、簡単に倒された事に警戒した?
その程度の考えができる程度の知恵はあるということか、良く考えれば「かなしばり」や「テラ―」など魔法を使えるしな
ゴースト達は少し後退し青白い何かを一斉に放ってきた
あれは聞いていた「かなしばり」か「テラー」だろう
しかしながら俺からしたらあまりに遅すぎる攻撃だ
何の問題もなくかわすことができるであろう
しかしながら一般人からするとけっこう厄介なんだろうな
俺は「火纏い」を解き遠距離攻撃へと切り替える
「火砕弾!」
火の弾が俺の周囲に数個現れゴーストたちへと飛んでゆく、その速度はそこまで早くないのでゴースト達は余裕を持ってかわそうとするが
「バースト!」
俺がそう言った瞬間に火の弾は爆発し周りに居たゴースト達と下に居たゾンビ達を焼く
そして、俺は油断してしまったのだ…
これでゴーストたちの大半を倒したかなと
それは大きな間違いだった
それは少しの時を置いて俺に襲いかかった
『肉の焦げる、香しくも、どこか異なる臭いが』
「死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬ、死ぬ、もう無理!」
俺はこれ以上は絶対に耐えられないと全力で臭いの元から逃げ出し、己の全てを解き放つために草むらへと全速力で駆けこんだ
「やはりやってしまいましたね…」
「まあ、起こるべくして起こったとしか言えないですが」
エリアとコンは大斗の様子をはるか50メートル後方から見ていた(さらに風の結界を張っている)
大斗は魔法を使うことはできないのでゾンビやゴーストに近づかずに倒す方法はAK-47か蛍刀による魔法しかないのだ
しかしAK-47は残念ながら物理攻撃なのでゴーストが出てくると蛍刀を使わないといけなくなるわけで…結局の所ゾンビに対して蛍刀の火属性の魔法を使ってしまい、凄まじい異臭をだしてしまうと
これは起こるべくして、起こったとしか言えない、この二人が事前にその事を伝えなければだが…
「コン、やはりさすがに大斗に申し訳ないと思うのだが、いくら冒険者や戦闘を行う者の祝福とはいえ、あの数はいくらなんでも度が過ぎている」
エリアがじろりと睨んで来てわずかにコンが後ずさる
「さ、さすがにあれはひどいと思うので大斗が戻ってきたら精神耐性と悪臭を防ぐアクセサリーか何かを購入しましょう!」
コンが若干焦りながらそう言った瞬間『がしっ!』とエリアがコンの肩を掴む
にこやかに笑ってはいるがなぜか恐怖を感じるような笑顔だ
これはヤバいそう感じたコンは逃げようとするがエリア手は絶対に離さないと言わんばかりの力で掴まれており簡単には振りほどくことはできなかった
こうなれば最終手段だとコンが魔法を使おうとするよりも早くエリアが動いた
「コン! 大斗がかなり苦しんでいるすぐに行こう! 水鎌!」
さすがSランク冒険者といった状況判断でコンが魔法を発動するよりも早くコンの張った風の結界が破られ、決して清浄とは言い難い空気、アンデッドの悪臭が…
「ぎゃああああ、エリア、ヤバい、ヤバいです、外の悪臭が中に入ってきている、早く風の結界を張り直さな…うぅ」
エリアを止めようと声を上げるが段々と増していく悪臭に会話も難しくなっていくが、最後の力を振り絞り
「エ、エリアぅぅ、新入りのぅぅ、くせに後で覚えてぅぅ、おきなさ…ぅぅ」
その言葉に待っていましたとばかりに朗らかな顔で
「コン、心配することはない! 大斗の了承はすでに得ている!」
あいつ後でコロス、二度と尻尾など触らせてやらないと殺意の籠った目で大斗を睨めつけるがすぐに悪臭によりぐったりとなる
「師匠が言っていた、こういうのを死なばもろともというのだったな! 勿論私も臭い対策はしていない! 3人一緒だな! 一人じゃなくて…三人、なんて良い響き…ふふふ」
最後の一言を聞き終えることもなく気絶したコンが言うまでもなくアイテムを買うために強制的に起こされた事はおわかりの事だろう
こうしてコンと大斗の心に刻まれたであろう冒険者の祝福は幕を閉じたのであった
現在のカタログポイントは65727となっています。
ずっと何の連絡もなく休止していてすみませんでした
それなのに感想で応援などありがとうございました
かなりの遅筆なのでゆっくりとしたペースですが書いて行こうと思います
プロットはあるんですが細かい設定忘れ過ぎていくつかの伏線ガン無視で進んでいくことになりそうですが(白目)




