重要な案件
「せいっ!」
俺はゴブリンに奇襲を仕掛け槍を持っていたゴブリンの首を切り裂く。
ゴブリンたちがこちらに目を向けるが次の瞬間ゴブリン達の後ろの草むらが揺れる。
ゴブリンたちが後ろに注意がそれた瞬間俺はもう1体ゴブリンの首を切る。
残ったゴブリン2体は俺に襲いかかってくるが遅い。
振り下ろされる棍棒をショートソードで受け止め、ゴブリンの鳩尾に向けて左足で蹴りあげる。
ゴブリンは叫び声を上げながら転がる。
俺はすぐにもう1体のゴブリンの方に目を向けるとこちらに向かって槍を突き出してきていた。
俺はそれをショートソードで軽く穂先をずらし、素早く懐に入りゴブリンを袈裟切りする。
そして俺は転がっているゴブリンにとどめを差す。
「ふぅ、なんとか4匹のゴブリンの群れでも楽勝に狩れるようになったな」
俺の初戦闘から3日が過ぎだいぶゴブリン狩りにも慣れてきたので今日から4匹のゴブリンの群れにも挑戦してみた。
最初は2匹のゴブリンを相手にするのは手間取ったが1対1でも簡単にあしらえる敵だけあって簡単に狩れるようになった。
これで少しは効率よく狩れるようになっただろう。
それとレベルも勿論上がったがステータスに新しくスキルが追加されていた。
これが今の俺のステータスだ。
名前:犂宮 大斗
年齢:18
レベル:9
<固有スキル> なし
<スキル> 剣術 Lv1
新しく剣術スキルLv1というのが表示されている。
コンに聞いたのだがこのスキルというものは生まれた時に元々あるものもいるが、大体はそのスキルに関することをしているとスキルを取得できるらしい。
ちなみにこの剣術スキルの効果は剣をちゃんと習っていないものでも補正が付いて剣を上手く使えるようになるらしい。
それとLv1と書かれているがこれはスキルにはLvが1から10まであり、魔物を倒すことで熟練度が溜まり一定までいくとLvがアップするらしい。
レベルも上がりスキルも取得したおかげでもはやゴブリンは楽勝で倒せるようになっている。
え?
ポイントはどれくらい増えただって?
ポイントはなな、なんと932ポイントです。
昨日の時点で500ポイントを超えていて気闘術の本を買えたのだが昨日は疲れていてすぐに寝てしまったため買っていなかったのだ。
だから今日は早めにゴブリン狩りを止めて気闘術の練習をしてみようと思っている。
そろそろ時間的に昼ごろだから止めようかな。
「コン、近くに狩れそうな数のゴブリンはいるか?」
「残念ながら居ませんね」
「それじゃあ今日の狩りはこの辺で止めて気闘術の本を買って気の扱い方の練習をしよう」
「分かりました」
俺たちは狩りを止めて『ホーム』で拠点に帰ることにした。
取り敢えずご飯を食べて休憩した後、気闘術の本を購入する。
本のタイトルは『馬鹿でも分かる気の扱い方 初心者セット版』
初心者セット版と書かれていることから何かがついているのだろう。
パラパラとページをめくっていくと最後のページに薬の錠剤みたいなものが付いていた。
なになに、気の覚醒用の薬か
この薬を飲むと気が扱いやすくなるらしい。
それでコツを掴んでもらって気の扱い上手くしていくのか
さてと一応最初のページから読んでいくかな。
俺はきちんと最初のページから読んでいく。
いきなり読まずに薬を飲んでやるとかしないから!
まあ、大体の説明書は読まない派なんだけど
薬とか副作用とか注意事項とかありそうだしな
30分ほどして本を読み終えた。
タイトルの通り『馬鹿でも分かる気の扱い方』だったため
本当に説明は簡単に書かれていた。
まず薬を飲む。
そして、体の中のどこに違和感が有るかじっくりと確かめる。
その違和感があるところが気が生成される場所でありそこに命令することにより気を生成できる。
生成した気を頑張って動かす。
以上が気の扱い方だ。
ぶっちゃけ習うより慣れろって書いてある。
だからこそこんな薬が付いているのだろう。
特に注意事項などは存在してなかったので薬を服用して気を運用してみよう。
むずいよこれ!
気の生成ってやつはできるようになったんだけど
なんというかONとOFFしかない水道の蛇口でしかも水が物凄い出る感じだ。
つまり生成自体は出来ているのだが生成する量が制御できてない
それに生成した後の気の運用だけどまったくもってできていない!
結局アレだな
一朝一夕では上手くならないらしい
まあ、本にもそんなこと書いてあったな
大体習得に3年は掛るって
3年とか……
もうすでにこの世界で生きていくことに慣れてそうな期間だ。
本当にこれが役に立つのだろうか疑問視しつつ気の運用と生成の制御を練習する。
1時間程度練習すると全身に気だるさが出てきた。
本に書いてあったのだがこれは確か生命力の使いすぎによる症状だったか
この症状が出たらすぐに気の扱いの練習を止めるように書いてあった。
無視して続けると命に関わるらしい
しかし、ここまで疲れるとまともに動けないな
ゴブリン狩りは朝にやって昼から気の扱いの練習をしようと思っていたが、1時間でダウンするようならゴブリン狩りを朝から夕方までして夜に気の扱いを練習をするか
まあ、ハードスケジュールの様な気もするが疲れが次の日まで続くようなら時間配分の調整をしよう
これで気についてはいいとしてもっと重要な案件をコンと話し合わなければならない。
つか前から超重要だと思っていたんだけどポイントが少ないからと我慢してきたのだ。
我慢してきたのだがもう1週間だ
この異世界に来て1週間も立ってしまったのだ
もはや俺の我慢の限界に達したためコンに上訴しようという魂胆だ。
「なあ、コン。大切な話が有るのだが聞いてくれるか」
俺が紳士の目でコンを見つめながら言うが
コンはなぜか嫌らしいものを見る目でこちらを睨み
「断ります!」
「ええええ、俺まだ話を聞いてくれとしか言ってないのにそれはないよ」
「どうせまた邪な事を考えていたのでしょう。尻尾は触らせませんよ」
ぐぐぐ
コンめ、痛いところを突いてくるな
尻尾は今回は諦めようではないか
しかーしだ、重要なのは尻尾ではなく
いや尻尾も大切なんだけど
とにかくコンに話を聞いてもらわないと話が進まない
俺は一旦俺から放たれる紳士のオーラを抑え再びコンに話しかける
「コン、今回は重要な案件なんだ。話だけでも聞いてくれると助かるんですが」
「ええ、分かりました。拒否させていただきます」
「おおおい、なぜなんだ。ちゃんと変態のオーラは仕舞ったじゃないか」
「ダダ漏れですけど」
「ぐぐぐ」
コンがどうしても拒否してくる
ここは強引に話を進めていくしかないか
「とりあえず聞いてくれ、人間の三大欲求というものがあるそれは」
「変態ですね!!!! 私をそんな目で見ていたなんて! 三大欲求と言うことは性欲ですね、性欲なんですね、性欲を私で満たそうとしているのですね。最初に私はオスだと申したというのにあなたは変態どころか鬼畜ですね! しかも私は手乗りサイズなんですよ! 変態だというのは分かっていましたがここまでの者とは思いませんでした。実家に帰らせていただきます」
コンは言いたいことだけ言うとカタログに近寄りページを開き始める。
ちょ、マジかよ!
俺は慌ててコンを止めようとする
「ま、待つんだコン。これは誤解なんだ、決して俺は君を邪な目で見ていたことはないんだ。いつも尻尾にすりすりしてもふもふしてええええとか思っているけど実行に移したことは8回ぐらいしかないだろ、ほら俺を信じてくれよ!」
「あなたは自分の発言をよく吟味することをオススメします。まったく弁明になっていませんよ、それ」
なぜかコンが冷ややかな目で俺を見てくる。
こういうプレイもいいな
じゃなくてどうにかコンを説得せねば
コンが居なくなったら自分でカタログの中から商品を得らばなければならない
それこそ数万いや数十万もある商品の中から使えそうなものをだ
絶対無理だろう
というか俺の大事なもふもふ分を補給できなくなるとか
死を宣告されたものの様だ
どうにかしてコンを説得せねば
俺が必死にどうやって説得しようと考えていると
「ふふふふ、はははは」
コンが腹を抱えて笑いだしていた。
そのままごろんと転がってお腹を見せてくる。
これは服従のポーズとかじゃなくてただ単に笑い転げているのだろう。
しかし、なぜコンが突然笑い出したのか良く分からない。
俺は良く分からず首を傾げていると
「悪かったですね、今のはただの冗談です」
「冗談?」
「はい、そうです」
コンはにやにや笑いながら言ってくる
そうか冗談だったか
「それなら良かった、コンが本当にいなくなると思って焦ってしまったよ」
「大斗が変態な事をいつも言ってばかりなので意趣返しです」
そんなに俺って変態な事言ってるかな?
常に隙あらばコンの尻尾を触ろうとしているのだけは事実だが
まあ、ここは話に乗っておこう
「はははは、俺から変態を取ってしまったら何も残らないじゃないか」
「そうですね、それでさっきは何を言いかけてたのですか? 途中で私が遮ったので最後まで聞いてませんでしたが」
おお、やっと聞いてくれる気になったのか
ほんと最近アレが欲しくて堪らなかったんだよな
まあ、今のポイントは432ポイントだから買えるかどうか微妙だけど
「人間の三大欲求と言うのがあってだな、これは性欲、食欲、睡眠欲だ。俺は二次元ともふもふにしか興味ないので性欲は良いとして」
「全然良くないよ! 大斗は私で性欲を満たしていたんだね! 変態だ変態だと思っていたけどやっぱりド変態だよ!」
コンは2本足で立ちあがり声高々に俺を変態と罵る。
2本足で立ちあがるコンが超可愛いと思っているが
これをカミングアウトするとまた文句を言われそうなのでとりあえず黙っておく
そのまま5分ほどコンの説教が続き俺はじっとコンが2本足で立って時々尻尾をふりふり動かすのを観察しながらその時を過ごした。
「まあ、説教はこの辺にして話の続きをしましょう」
やっと話の続きを許可してくれたようなので俺は話始める。
「性欲は満たされているとして、食欲、これもちゃんと3食食えるようになったから問題ないが、最後は睡眠欲だ。俺はこれに納得がいっていない、なぜならこの空間の床に寝転がって寝ているからだ! これじゃ全然寝た気がしねえ というか毎朝起きると体のあちこちが痛いんだよ! いい加減布団で寝たいから布団を所望する!」
「そうですか、布団は安いもので探しますね」
「ああ、というか安いのしか買えそうにないんだけど」
「ありました420ポイントですね」
「それを購入してくれ!」
「分かりました……購入が完了しました」
カタログが輝き、布団一式が現れる。
「つ、ついに夢にまで見た布団が実装……したぜえええええええええええええ」
俺はテンションが上がりコンを抱っこしようと飛びかかるがコンは分かっていたかのように背後からの攻撃をするりとかわした。
ちっ
どさくにまぎれて抱きつこうとしたのだがバレたか
とりあえず奇襲は失敗したのでとりあえず布団に入ってみる。
う~ん、久しぶりの布団は良いね
ふかふかだ
久しぶりの布団の感触を十分楽しんだ後コンの方に目を向けるとコンは布団から離れた所で丸まっていた。
やはり俺が抱きつくのを警戒して離れた所に寝ているようだった。
どう頑張っても上手くいくとは思わないがとりあえず実行だけはしてみよう。
「さあ、コンちゃん。ここだ、ここに入って来るんだ。ふかふかの布団だぞ~」
「…………」
コンはこちらを一瞥するが無視して視線を外し再び丸くなった。
ですよね~
ちょっぴりコンと一緒に布団で寝るのを期待していたのだが残念ながら無理そうだ。
これはあれだ
もっと親密になって新密度をあげればいつかは一緒に布団に入ってくれるだろう
そんな幻想を抱きつつ俺は静かに目を閉じた。
今日はぐっすり眠れそうな気がする。
そんな1日だった。
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