私たちと契約して仲間になってよ!
「さて朝食を食べ終わったら外に出るかあ」
俺は昨日買ったアニメ、フルメタル○ニックを見るついでに朝食を食べながら言う。
「そうですね、この『ふもっふ』という言葉には何か魔力があって名残惜しいですがエリアとの約束もあるので仕方ないですね」
昨日これを買ってから睡眠時間を3時間まで削ってコンと一緒にこれを見ていたのだが、どうやらコンもこれが気に入ったみたいだ。
俺はラノベの方から入ったのでアニメよりもラノベのが好きなのだが、短編集の回をアニメで見るとラノベとは違った味があるからなあ。
え? アナザーですか、ハハハあんなものはなかった!
「俺はふもっふも好きだが一番好きなのがラグビー回だな、あのはっちゃけ具合が素晴らしい」
「確かにあれもなかなかでしたね、いやしかし……」
~30分経過~
「しまったな、話し過ぎた」
俺は一通りコンと議論をぶつけ合っていたのだが何時の間にか、フルメタが次の話に飛んでいる。
しかも、短編集ではなく本編っぽいぞ、これ。
慌ててネタバレをされないためリモコンでテレビを消しておく。
「ふぅ、危なかった、危うくネタバレになる所だった」
「そうですね、なかなかの英断です。ネタバレは作品を楽しむためには絶対にやってはいけないものですからね」
「コンもよく分かっているじゃないか、作品を途中から見たり気軽にネタバレをする奴は人間じゃないエイリアンか何かだよな!」
「そうですね!」
それからなんやかんやで俺たちがホームから出るのに1時間かかったことについては決してエリアには言えないだろう。
俺たちがホームから出るとエリアは洞窟の入り口から100メートル先ぐらいのとこに居た。
無論出るときにコンに外の様子をチェックしてもらって出たので最初から知ってはいたが……。
「俺たち何も考えずにホームに入ったけど出るときのこと考えてなかったよな」
「そうですね、出た地点にエリアが居れば瞬時に敵が現れたと思い攻撃された可能性が高いですね」
そうなのだ。
ホームは入った地点に出るのでその地点に人が居ると不審に思われるし、敵かと思われ攻撃されても文句は言えないだろう。
だからちゃんと人が来なさそうな所でホームに入らなければいけないのだ。
「デスヨネ~、問題点が人と関わるだけでぼろぼろ出てくるな」
「そうですね、気を付けているようで私たち適当ですから」
「ああ、頷いてしまうしかない俺も悲しいよ」
俺たちはそんな話をしながらエリアの方へと近づいていく。
「エリア! こんなに早く来るとは思っていなかったよ、待たせてしまったみたいですまない」
俺は今までだらだらとアニメを見ていたことをおくびにも出さずに言う。
エリアの周囲を見れば焚火等があるので確実に昨日の夜くらいから居る事は確実なのだがな……。
「いや、私の方が予想以上早く戻ることになってしまってね、元々は今日の昼ぐらいに着く予定だったのだから気にしないで良い」
予想以上に早く戻ることになってしまったって何かあったのだろうか?
ボスに壊されたカットラスの代わりとなるものも持っていないようだから、とにかく急いで街を出てきたというのは分かるが。
とりあえず何があったのか聞いてみるか、話をしないと進まないしな。
「エリア、カイナーグで何かあったのか?」
俺がそう言うとすまなさそうに俺を見て
「実はあそこのボスが私が思った以上の魔物だったんだ」
思った以上の魔物ってどういうことだ?
実はSランクのモンスターじゃなくてSSランクのモンスターだった的なやつなのか?
でもあの半魚人からは黒猫の庭のあの黒猫程のヤバさは全く感じなかったのだが……。
「あの半魚人のボスはSランクじゃなくてSSランクだったらしい」
「ほんとうなのか?」
あの強そうには見えなかった半魚人は本当にSSランクだったらしい。
エリアが簡単に倒していたのにな。
ということはあの黒猫はどんだけ強かったのだろうか……半魚人よりはるかにヤバかったぞ、多分SSSランクは確実だろうな。
あの黒猫の庭には二度と近づかないようにしよう。
うん。
「信じられないかもしれないがあれはSSランクだろう、カイナーグという小さな街のギルドではあるがギルドマスターが直々にそう言っている」
「それは信じるほかないか」
「ああ、信じられないかもしれないが事実だ」
俺は適当に相槌を打ち信じられない顔をしておく。
内心では別の意味で信じられなかったからな……。
「それとボスの槍についてだがあれはすぐには現金化できそうになかったんだ、すまない。Sランクの魔物じゃなくてSSランクの魔物と認定されたから、ギルドで調べてそれを証明するためにも必要になるのでお金になるのは当分先になると思う。すぐにお金にして渡したかったのだがな」
エリアはすまなさそうに謝ってくる。
あれはエリアが一人で倒したんだからエリアにあげると言っておいたのに、ほんと良い奴だな。
「要らないと言ったものだから気にしなくても良いよ、それに現金化されるのが先になりそうならそれについては話し合わなくてもいいだろ、それよりもエリアとパーティーを組むことについて話そう」
俺は話を元々の目的に戻すことにした。
ボスについての云々の話とかあんま重要じゃないしな。
「いや、だがな」
「いいって、いいって、俺たちにとってはボスに関してよりもエリアの事の方が大切だからな!」
俺がそう言うとなぜかエリアはそっぽを向いた。
「そんな事初めて言われた……」
エリアが何かぼそっと呟いたような気がしたがよく聞こえなかった。
どうしたんだろう?
突然尿意でも催したのだろうか?
さすがに俺も突然催した尿意に対するフォローが正しくできるとは思えない。
どうすればいいのだろうかと考えていると
コンの爪が俺の頭に容赦なく突き刺さる。
「いたああああああああああ!」
俺が必死に頭を押さえごろごろと転がり痛みに耐えている間にコンがすっとエリアに近づく。
「この馬鹿は放っておいて話を勧めましょう」
「ええと、大斗がのた打ち回っているんですけど良いんですか?」
「ええ、大丈夫です。あれは痛がっているのではなく快感で喘いでいるだけですので」
「そうですか……」
俺が転がりながらエリアの俺へ対する視線が変わったのはおそらく錯覚だと思う。
うん、多分。
「それでエリアは私たちに何か秘密があるということは分かっていますね」
「ああ、明らかに怪しいから……」
「私たちの秘密に関しては下手すれば国家が傾くようなことであると認識していますか?」
「そこまでなのか?」
エリアが驚きを露わにする。
普通はそんなことに関わるようなことはないだろうからな。
「ですのでかなりの厄介事に巻き込まれると思われます、その覚悟があなたにはありますか?」
コンがエリアの目をじっと覗き込みつつ質問をする。
これはおそらくコンのエリアに対する最後の試験みたいなものなのだろう。
この質問の時に読心術で心を読めば俺たちの仲間になるに足りうるかは簡単に分かってしまう。
できれば合格してほしいものだ。
というか俺たちは合格することを前提に動いているのだから不合格では困ってしまう。
数分間ほどの沈黙の後
「私にどこまでの対処能力があるか分からないが全力で君達を守ろう」
エリアはそう言った。
コンの方を見ると何やら相当呆れた顔でエリアのことを見ている。
これならエリアはコンの試験に合格しただろう。
コンの顔から察するにエリアは……
「エリアは本当にお人好しですね、普通見ず知らずの私たちのためにそこまで頑張ろうとは思いませんよ」
コンの言うとおり相当のお人好しなのだろう。
俺は予想していたとはいえニヤニヤが止まらなかった。
それならばさっさと完全に信頼できる関係へと成ろうじゃないか。
「コンあれを用意してくれ」
「分かりました」
そう言ってコンの手の中に一枚の紙が出現する。
「私たちの秘密に関して他の人にしゃべらないように契約をして貰いましょう」
現在のカタログポイントは115487となっています。