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カタログを持って異世界に行こう!  作者: 天野 洋
三章 ダンジョン放浪編
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冒険者ギルド カイナーグ支部(再)

「ど、どうぞお入りください」


 ここまで案内してくれた受付が私に怯えつつ扉を開けてくれる。


 私はそのまま無言で部屋へと入り、ドカッとソファーに座り対面のソファーに座っている老齢のばあさんを睨みつける。


 ばあさんは私の機嫌が悪いことに気づいていながらにこやかな表情を崩さない。


 私とこのばあさん睨み合いが10秒ほど続いたところでついにこの空気と私の殺気に耐えかねたのか……


「し、失礼しました」


 ここまで案内した受付が急いで扉を閉めて逃げるように廊下を去っていく。

 冒険者ギルドの受付なのだからこの程度の殺気は慣れていてもおかしくないのだが、所詮は小さい支部の受付だから私の殺気に耐えられなかったのだろう。

 まあ、冒険者ギルドで高ランクの冒険者が殺気出して怒っていることなど普通ないとは思うが。


 ばあさんは受付が完全に遠ざかると私に声を掛けてきた。


「うちの受付をあんまり怖がらせるのは止してくれないかい、ここにはあんたみたいな高ランクの冒険者は滅多と来ないのだからそんな殺気を出すのは止めておくれ」


 私は無言のまま今まで出していた大人げない殺気を出すのを止める。

 ちゃんと殺気は抑えめにして出していたんだがな。


 私が殺気を出すのを止めたのを見てばあさんは嘆息して


「その様子を見るとダンジョンで不測の事態が起きたみたいだね、依頼は完遂できたのかい? 持っていた武器も無くなっているみたいだしね」


 私の腰にあったはずの2本のカットラスがないことに気付いたのだろう。

 あの受付は私の殺気を気にしていてその事にまったく気づいていないようだったが。



 おかしいことについては私が依頼を達成したと言っても一応ギルドも確認として冒険者ギルド子飼いの冒険者を出して調べるだろうから、無駄に隠し事をしても駄目だから私は正直に言う。


「ダンジョンについてだがあなたに教えてもらった情報とかなりの食い違いがあった。大きくは二つだ、一つはダンジョンに大量の魔物が居なかった、はっきり言って普通のダンジョンより少し多い程度だった、冒険者ギルドはあの程度の数を多いと言うのか? 二つ目はダンジョンのボスについての情報が違っていたことだ、何が魔法使いタイプだ、バリバリの近接タイプだったぞ、カットラスは粉砕されて私の命まで無くなるところだったんだが……」


 私の言葉によく理解できないとばあさんはぽかんとしている。

 

 まあ、放置ダンジョンのはずなのに魔物が少なかったり、ボスがなぜか変わっていたりすれば驚くのは無理もないだろう。

 私はこれで理解できるだろとギルドから貸与されたアイテム袋からボスが持っていた槍を取り出す。


「こ、これは……」


 ばあさんは目が飛び出るんじゃないかと言うほど目を見開いて槍を見ている。

 冒険者ギルドのギルドマスターは支部であっても最低でAランク以上の元冒険者じゃないと成れないのでこの槍の価値に気付いたのだろう。


「あ、あんた本当にこれを持ったボスを倒したのかい?」


 ばあさんの声が震えている。

 これほどの価値の武器など早々見る事はないからな。


「ああ、かなりヤバかったがなんとか倒せたよ。相手がこちらを舐めていたお蔭なのもあるとは思うが」


「そ、そうか……おそらくだがこれを持っていたボスは討伐ランクはSSクラスになるだろう……本当に済まない、これほど放置ダンジョンのボスが強くなっているとは」


「……」

 

 あ?

 このBBAは今何て言った?

 あのボスの討伐ランクがSSクラスだと……

 そんな強いやつを私に討伐させたのか!

 確かに近接戦闘はあまり得意ではないのだが、そこらのSランクと同じくらい私は近接戦闘をこなせるのはずなのに、ああまで簡単に武器を破壊されたのだ。

 確かにアレはSSクラスと言ってもおかしくないかもしれない。

 固有スキルが決まっていなければ……

 

 私は人を睨み殺せるだろと言うほど目力を込めBBAを睨む。


 さすがに申し訳ないと思うのかBBAはにこやかな顔ではなくしゅんとしている。


 BBAの落ち込んだ姿とか見ても不快になるだけなのに分かっているのか、このBBAめが!


「い、依頼の報酬には色を付けておこう。それとダンジョンの魔物の数が少なかったことについては……」


「魔物の数が少なかったことについては分からない! 私がダンジョンに入った時にはすでにダンジョンのボスの部屋以外の魔物の数は多いと言える程ではなかった、その原因も分からない!」


 私は言わなければいけないことだけ言うと糞BBAから貸して貰っていた大きいアイテム袋を取り出して糞BBAに向かって投げる。


「その中にギルドから貸して貰ったものとボスの死体等が入っている、報酬に関しては査定が終わり次第他のギルドで受け取れるようにしておいてくれ」


 私は義務は果たしたとばかり部屋を出ようとする。


「ま、待ってくれ、もう少し詳しい話を……」


「私もあそこのダンジョンに関しては訳がわからない! これ以上有益な話し合いにはならないだろう、今は大した敵もいない普通のまずい二級ダンジョンだから調査を行うといい」


 私はこれで終わりだと何かを言っている糞BBAを無視して扉を開けて最後に一言だけ言ってこの部屋を去る。


「じゃあな糞BBA!」


 その言葉に固まっている隙に私はさっさとギルド出て街の外へと向かう。






 一人ぽつんと残されたギルドマスターは厄介事を抱え込み途方に暮れた顔で一言


「わたし、まだ四〇代なのだが……」






 とりあえず勢いでなんとか糞BBAにペースを掴まさせずに話を終わらせ、逃げるようにカイナーグの街を出てしまったが大斗とコンの事はなんとか誤魔化せただろう。


 あの槍を置いてきたことは非常に残念だが……

 しかし、あのダンジョンのボスの強さを調べるために死体とあの槍が必要になるだろうから、どうせ槍も冒険者ギルドに預けなければいけなくなっただろう。

 それにあの支部に鑑定ができる人員が居るとは思えないので大都市の冒険者ギルドに移送することになってさらに時間かかるだろうから……それに付き合わないで済むなら良い方か。

 

 だがアレクラスの武器は早々出回らないからどこかの貴族やらがちょっかい出してくるか、ギルドがSSランク以上の冒険者のために勝手にあの槍を買い取る等と言いだし必ず買い叩かれる未来しか見えないがな。

 王都のオークション辺りに出せれば相当な金になりそうなのだがな……


 あの槍に関しては期待しないでおこう。

 そもそも私の武器は剣であって槍ではないので売るしかなかったのだしな。

 

 それとカットラスの代わりの武器を買わずに街を出たことは痛かったな、あのまま居ると必ずあの糞BBAが探させただろうから街を出るほかなかったのだが。

 食料も買ってないが水は魔法で出せるし、そこらで魔物を狩ったり山菜を採ったりすれば問題はない。


 まあ、これで細かいところはともかくなんとかあのダンジョンのおかしい所を誤魔化せて、大斗とコンに迷惑がかかることはないだろう。


 少し予定よりも早くなってしまったが大斗とコンが待っているダンジョンの入り口に急ごう。

 

 そうして、私は予定よりも少々早く待ち合わせの場所に向かうことにした。


現在のカタログポイントは427487となっています。

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