半魚人の洞窟 9
俺はリザードマンの冒険者カードを見てみる。
冒険者ランク:S
名前: エリア
<固有スキル> なし
<スキル> 剣術Lv6
やっぱり俺と同様で情報をけっこう消してあるな。
これじゃ実力がさっぱり分からない。
まあ、普通はSランクと示せれば良いんだからこれで良いのかもしれないが。
しかし、Sランクの冒険者か。
レベルが71の時点で分かっていたが……そこまで強そうには見えないな。
どちらかというと黒猫の庭で出て来たあの黒猫の方がヤバかったと思う。
ちなみに俺が渡した自分の冒険者カードはこうだった。
冒険者ランク:E
名前:犂宮 大斗
年齢:18
<固有スキル> なし
<スキル> 剣術Lv2
二級ダンジョンに入れるランクじゃないし、スキルも剣術Lv2とか超軟弱だし、怪しまれることは確実だ。
というか怪しまない奴が居たらそれはおかしいぐらいの情報だ。
リザードマンの方は俺の冒険者カードを見ると邪悪な笑みをしていた。
いや、リザードマンさんそれ絶対子供の前でやったら泣くからな。
俺も正直怖いし。
一通りリザードマンは邪悪な笑みを浮かべた後、俺の冒険者カードを返却してくれた。
俺もリザードマンに冒険者カードを返す。
ちなみに俺の本当の現在のステータスはこうなっている。
名前:犂宮 大斗
年齢:18
レベル:53
<固有スキル> ケモナー化
<スキル> 異世界共通語 剣術Lv2 射撃Lv1 狙撃Lv1 毒耐性Lv3
気配察知Lv2 身体強化Lv3 シックスセンスLv3 成長促進Lv1 刀術Lv1
鷹の目Lv3 思考加速Lv3 気闘術Lv1 気力強化Lv1
変わったのがレベルが大幅に上がったのと気配察知がLv2になったのと、刀術が新しく増えたくらいだろう。
あれ?剣術と被ってない?と思われるだろうがどうやら被ってないらしい。
コンに聞いてみると『そういえば刀は剣術じゃなくて刀術に分類されるんでしたね』とか言ってくれたよ!
つまり、剣術は剣を使わないと働かないので刀を使っている現在は死にスキルとなっている。
最初から刀を買っていればこんなことには……。
まあ、それはいいとしてリザードマンがどう質問してくるかだ。
リザードマンは少し思案した後に話しかけて来た。
「君は知らないのかもしれないが一応ダンジョンというものにはそれぞれランクが付けられていてね、ここの二級ダンジョンなら最低でもBランクじゃないと入れないんだよ」
「でも、ここは人気が無くて見張りの人も立っていないので入っても良いじゃないんですか?」
そういうのがあるらしいということは聞いていたけど、勿論知らぬ存ぜぬを通す。
「それでも一応規則で決まっているんだよ、ダンジョンには特別に許可を貰うか、国の騎士とかじゃない限り、冒険者ランクを上げて入る資格を取得する必要があるんだ」
「え~、でも冒険者ランク上げるのってめんどくさいじゃないですか。それに俺たちはここのダンジョンくらいなら楽勝なんでいいんじゃないですか?」
「そうは言っても決まりだから守って貰わないと困るんだよ」
「いやでも、知らなかったものは仕方ないんじゃないですか。だって見張りの人とか居ないところだと誰にも止められないから」
「そうだね、知らなかったのは仕方ないと思うよ。でも、一応規則を破って入ってしまったんだから、私と一緒にギルドに来て貰ってもいいかい? 知らなかったのだからそこまで怒られることはないと思うよ」
ヤバいな。
雲行きが怪しくなってきた。
これでこのまま素直にギルドに連れていかれたら厄介事にしかなりそうにないな。
分かってはいたんだけど……どうしよう。
考えなしにとりあえずリザードマンに会いに行こうとか軽率過ぎたわ。
「そうですか、なら俺たちは仕方ないのでギルドに行って事情を話しますね。リザードマンさんはここにわざわざ来たようですし、用事をしてくださってけっこうですよ」
俺はそう言うとそっとコンを連れてその場から去ろうとして。
「いやいや、待ってくれ君たち、私の用事もそこまで切迫したものではないので、君たちをちゃんとギルドに送り届けてから再びここに戻って来ることにするよ」
そう言ってリザードマンは俺たちの後を付いてくる。
どうする? この際『ホーム』を使って逃げるか?
だがリザードマンには冒険者カードを見られている。
この場を逃げ切ったとしてもこのことがギルドを通して伝わり、ギルドを利用しようとしたら捕まることは明白だ。
そうは言ってもこのままリザードマンと一緒にギルドに戻れば厄介事になることは明白である。
これはどうしようもないな。
この際ギルドの利用を止めるという手もある。
お金なんて盗賊から奪えばいいし、身分証が求められるとこには魔法の絨毯で不法侵入すればいいしな。
しかし、この手を取ると同じもふもふな冒険者とパーティーを組むという夢を捨てなければならない。
いや、別に冒険者じゃないといけないということはないんだけど、強いもふもふは冒険者だろうしな。
もう一から俺の好きそうなもふもふを拉致って来て育てていく光源氏大作戦をするしかないのか。
いや、むしろロリなもふもふを手に入れられるという素晴らしい利点をこれは持っているんじゃないか?
おおおおおおおおおおおおおおおおおおお
素晴らしいことを思いついてしまった。
あれだな街に帰ったらロリなもふもふの人材を探そう。
異世界だから奴隷とか普通に手に入ると思うし、無理なら裏で取引やってる業者とかに大量のお金を払えば問題は解決できるだろう。
俺の思考が明後日の方向に向かい始めた時にコンが今までの均衡を破る発言をする。
「大斗、もうめんどくさいです。どうして私たちが譲歩しないといけないのですか、さっきからこのリザードマンがウザいです。さっさと殺してしまうか処理してしまいましょう」
おいおい、コンさん物騒な事を言うじゃないか。
それは最終手段であって今のところ何もこちらにしてきていないリザードマンを害してしまうことは良くないと思うのだが。
そう思っているとコンの発言を受けてリザードマンは二本のカットラスを抜いた。
「ふふふ、そっちがやる気じゃあ、しょうがないね」
そう言いながら怖い笑顔でカットラスを構えるリザードマン。
というかリザードマンさんやる気満々じゃないですか。
さっきまでの紳士的?なリザードマンさんはどこに行ったんだよ。
もしかして、このリザードマンさんこうなることが分かっていて話を持っていったのか?
とにかく、このままではリザードマンとコンが戦闘を始めてしまう。
どうにかして止めさせなければ、俺はどうやったらこの状況を解決できるのか思案していると。
「死に晒しなさい!」
コンが複数のかまいたちをリザードマンに向かって放った。
「…………」
もうこれ、収拾付けられないわ。
俺は一人ため息を吐いてコンとリザードマンの戦闘に巻き込まれない様に広い空間の入り口まで飛び下がった。
現在のカタログポイントは496324となっています。
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