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カタログを持って異世界に行こう!  作者: 天野 洋
三章 ダンジョン放浪編
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半魚人の洞窟 6

「さてさて今日も今日とて魔物狩りですね」


「完全に飽き始めているじゃないですか」


「仕方ないだろ、さすがにずっと戦ってばっかじゃ飽きるんだから」


 俺は冷めた目で俺を見つめているコンに文句を言う。


 誰だって単純作業をずっと続けていたら飽きるものじゃん。

 俺単純作業とかは長時間出来ないタイプだし。

 物好きな奴は何時間も出来るだろうが俺には無理だ!


「昨日息抜きと称して少女アニメのDVDBOX全3巻を買って見ていたじゃないですか」


「何を言っているんだコンは、テレビがある状況でカードキャ○ターさくらを見ない奴がいるかよ!」


「いやいや、あれ少女向けのアニメですよね?」


 コンがさっきよりも冷たい目で見てきているが俺は気にせず演説を続ける。


「カードキャ○ターさくらはなあ、多数の大きなお友達を生み出した元凶であるとも言われている非常に業の深い作品でもあり、現在の萌えアニメ隆盛のきっかけとなった作品のひとつなんだ。そのクオリティの高い作画とさまざまな属性(ロリ、ショタ、同性愛、シスコン、教師と生徒の禁断の恋etc...)どんとこい!なキャラ設定が相まって超人気な作品だったんだぞ、俺個人としてはクロウカードというシステムが最高だったね、あのクロウカードを捕まえて自分の持ち札として使ってピンチを切り抜けて行くという設定が大好きだったよ! それにキャラが良かった! 俺として一押しなのはケ○ちゃんだね、あの黄色の可愛い顔して食い意地の張った関西弁のぬいぐるみは最高だったよ! あの最後の予告の時の『こにゃにゃちわ~』が大好きで、あの瞬間がカードキャ○ターさくらを見ていて最高の至福の時間だったと言っていいほどだよ! 無論俺も今手元にはないけどカードキャ○ターさくらはDVD全巻持っているよ!」


「ああ……はいはい、分かりましたからアニメ語りはその辺で止めてください。息抜きはしたんですからちゃんと戦ってくださいね」


「え~、まだまだ語り足りないんだが……」


「あんまり五月蠅いと購入を拒否しますよ?」


「仕方ないなあ、コンはツンデレなんだから」


 俺はしぶしぶアニメ語りを止める。


「それじゃあ、外に出て狩りを始めますよ」


 そう言ってコンは察知スキルを使って外を確認して外に出る。


「今日はどうするんだ、コン? けっこう魔物の数が少なくなってきているけど」


「そうですね、魔物の数が多い所は大体潰してしまいましたし、ボスでも倒しに行きますか? ここのボスじゃ手応えがあるような敵じゃないと思いますが」


「そうだなあ、そういえば結局黒猫の庭じゃダンジョンのボスまで行かなかったし、このダンジョンでボスと戦ってみるか」


「ではボスをまず探しますね、ここのダンジョンは敵の数が多く密集しすぎて調べにくかったのでまだボスの所在は分かってないので」


「おう」


 コンの察知スキルはあくまで敵の位置や罠が分かるというもので、それと一緒に鑑定スキルを併用することにより、相手のレベルやスキルを調べている。

 分かりやすく言うとマップに大量の敵のマークがあってその一つ一つのマークに対して鑑定スキルを試して調べているのだ。

 なので大量の敵が居る時は全ての敵の力を測ることが出来ないのだ。

 大量の敵の中にぽつんと1匹超強い魔物が居たら分からないだって?

 その時は『ホーム』を使って逃げるに決まってるじゃないか。


 目を瞑って察知スキルを使っていたコンが目を開いた。

 どうやら終わったみたいだがなぜかコンが首を傾げている。


「発見はしたんですけど……レベルが高いのが二人居るんですが」


 二人?

 ボスが二人居るってこと?

 ダンジョン系のゲームでもそういう敵は居ないことはないと思うけど。

 よく分からないな。


「片方が半魚人でレベル62でもう片方がリザードマンでレベル71ですね」


「ふむ、」


 このダンジョンの名前からしてどう考えても半魚人の方がボスとすぐ分かる。

 てか、レベル62っておかしくないか?

 ここは二級ダンジョンだから20~40レベルのはずだろ、なんでレベルが20も上なんだよ……。

 

 そして、もう片方の方もおかしい。

 リザードマンとなるともしかしたら冒険者の可能性もある。

 まだそういう種族には会ったことが無いけどこの世界の事を考えると十分あり得る。

 しかし、そのリザードマンが冒険者と仮定するとなぜこの様な美味しくなさそうなダンジョンに来たのか?

 レベルだって71とここの適正レベルを超えている。

 普通なら一級ダンジョンクラス40~60レベルだ。

 特級は80レベル以上と桁が違うからこのリザードマンが居るべき場所としては一級ダンジョンなのに……。

 やはり良く分からないな。


 だがこのリザードマンが冒険者かどうかを見分ける方法はある。

 このリザードマンが冒険者なら普通に魔物に襲われるので、コンの察知スキルでこのリザードマンを見張っていて魔物が消えて行けば冒険者と分かる。

 コンならすぐにこの方法を思い付いていると思うが、コンは意外に抜けているので一応確認だけしておこう。

 

「コン、半魚人はここのボスで間違いないだろうが、リザードマンを魔物か冒険者か見分けられるか?」


「無茶言わないでください、私の察知スキルと鑑定スキルの合わせ技では相手の名前と年齢、レベル、それにスキル構成しか分かりません」


 やっぱ気付いていないのかよ!

 確認しておいて良かったわ。

 仕方なく教えるか。

 俺がそのことを教えようとする前にコンが――。


「それでどうしますか? どちらかがボスで、もしかしたら、もう片方がこの前の黒猫の庭みたいに現れた様な存在なのかもしれませんよ、ここは接触は止めて撤退をした方が良いと思います」


 おいおい、止めるんだ、コン。

 俺が物凄く言いにくい状況になってしまうじゃないか。

 というかそんな台詞を言っていいのか?

 後で悶絶するのは不可避になるぞ。


「スキル構成をみる限りリザードマンよりも半魚人の方を警戒した方が良いと思いますが、レベルだけならリザードマンの方が高いですし……やはり戦わずに逃げることを私は推薦しますね、大斗はどう思いますか?」


 そう言ってコンは真面目な顔で俺に聞いてきた。


 言えねえ……盛大にスベっているコンの前でリザードマンが冒険者かどうか見分ける方法があるなんて。


 いや、待つんだ俺。


 リザードマンがまだ冒険者と決まったわけではない、もしかしたらコンの言う通りの存在かもしれない!


 俺の予想では冒険者だけど。


 このまま、何も意見しないでこのままこのダンジョンを去るというのも一つの手だが、俺は己の失敗に顔を真っ赤にして恥ずかしがるコンが見たいので空気を読まずに発言する。


「コン」


「なんですか、大斗?」


「リザードマンの周りにいる魔物を見張って周りの魔物が消えて行かないか見ていれば冒険者かどうか見分けられるんじゃないか?」


 俺がそう言った瞬間コンの表情が固まった。


 これは完全に気付いていなかったな。

 まあ、気付いていればあんな発言とかしないだろうしな。


「えっと……すぐに調べてみますね」


 どこか元気のなさそうな声でそう言うとコンは察知スキルを使い始めた。


「……ど」


「ど?」


「どうやらリザードマンは冒険者みたいでした」


 コンは顔を真っ赤にし拳を握りしめながらなんとかその一言を言いきった。


 それで俺の腹筋は崩壊した。


「あっははははははははははは、コン、マジで最高だって『ここは接触を止めて撤退した方が良いと思います』と言われた時、俺本当にどうしようかと真剣に悩んだぞ」


「ううう」


「コンが真剣な顔で『黒猫の庭みたいに現れた様な存在かもしれませんよ』とか言ってたから、その可能性もあるなと思って言ってみたらこれだよ! あはははははははは」


「ううう……」


 コンの方を見ると目尻に涙を貯めて顔を真っ赤にしながら拳をぷるぷると震わせている。


 あっ……やべえ。

 さすがにそれを見た俺はやり過ぎたなと後悔し始めた。

 というかあんまやり過ぎるとコンにボコボコにされるから止めようと思ったのも間違いではないが。


「ちょ、コン泣くことは無いだろ、俺がからかって悪かったって、謝るからな」


 俺は慌ててコンに近寄ると頭を撫で始める。

 

 結局コンが機嫌を治すまで十数分ほど頭を撫で続けさせられました。


 え? 役得だからいいじゃないかって?

 でも、コンは……俺が狐耳の方を撫でようとするたびに睨んで来ていたから肝心な所は触れていなくて……。

 反省の色が全く見えないって?

 これでも一応反省しているんだがな。


 意外にコンの奴こういういたずらに弱いというかメンタルが子供っぽいというか……まあ、やってることは俺の方が子供だろ!と言われてもしょうがないけど、今後気を付けることにしよう。


現在のカタログポイントは494328となっています。


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