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カタログを持って異世界に行こう!  作者: 天野 洋
三章 ダンジョン放浪編
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冒険者ギルド カイナーグ支部

 私は受付が案内してくれた部屋に入る。

 部屋はギルドマスターと言う割には調度品なども質素だ。

 まあ、カイナーグなんて辺境の港町のギルドマスターだから当たり前と言えば当たり前だが。

 私は置かれたソファーに腰を下ろす。

 対面のソファーにはにこやかな老齢のばあさんが座っている。


「で、では私はこれで」


 受付の人はそう言うと素早く部屋から出て行った。

 どうやら私の脅しが予想以上に効いたようだ。

 まあ、礼儀がなってないのだから仕方がないが。


「よく来られましたねS級冒険者『水鎌すいれん』のエリアさん、遥々(はるばる)カイナーグまでありがとうございます」


「ああ、指名依頼は基本的には断れないから仕方なくだが」


 私は仏頂面ぶっちょうづらで答える。


基本的に指名依頼は何か特別な用事、例えば国の偉い人からお呼びが掛っているだとか、重傷で依頼を受けられる状態ではない場合や指名依頼が重なった場合は除いて、何も用事が無い場合は指名依頼を受けなければならない。

指名依頼は大体が緊急を要する依頼や、多くの人命が掛っている場合などに、その冒険者でないと達成できないだろうと思われる事案の時だけ指名依頼が使われるのだ。

また、それを断るということは冒険者を止めると言っているのと同義とされていて断った者には大体冒険者カードが剥奪される。

この指名依頼はどの冒険者にも使えるわけではなく大抵がS級冒険者以上に対して行われる。

まあ、S級冒険者ともなるとほとんど貴族扱いになって色々と高待遇になるから、その代わりの義務みたいなものだ。

私は激しくめんどくさい制度だと思っている。

私は私のやりたい依頼だけをやりたいというのに、あれをやれこれをやれと指図されるのが嫌なのだ。

 それを断ってしまったらギルドを抜けなければならなくなり、収入がなくなるので仕方なくやっているが。


「受付が失礼しましたね、まだギルドの受付を始めてからあんまり経っていないし、頭が硬い人だから」


「それについては大して気にしていない、脅してやったから多少マシになるだろう」


 私もさっさとギルドマスターと話を付けたかっただけで本当はそんなに怒ってはいない、周りの奴から言わして見れば『どこが?』と見えるようだが。


「シーサーペントの件に関してはごめんなさいね、誰か知らないけれどシーサーペントを倒してしまったみたいで、残念ながらギルドとしてはエリアさんに報酬を支払うことはできないわ」


「前置きは良い、さっさと他の依頼について紹介してくれ」


 討伐依頼については先に倒した者勝ちで倒した者にのみ報酬が支払われるというのが基本だが、指名依頼は少し違う。

 指名依頼は特定の冒険者に特別に来て貰って依頼を受けて貰うのだから、討伐依頼と同じように他の冒険者が倒したからと言って報酬を支払わないのはその冒険者の機嫌を損ねてしまいよろしくない。

 そもそも、指名依頼はS級以上の冒険者に対して行われるのでギルドとしても、S級以上の冒険者の機嫌を損ねたくない。

だから代わりにその周辺で普通の冒険者では手が出しにくい困難な依頼を受けて貰い報酬に色を付けるということが行われている。

これでS級以上の冒険者の反感を買うこともなく、困難な依頼を終わらせることが出来るという一石二鳥なのだ。


「それに関しては、候補としては2つあるんだけど、1つ目はシーサーペントを倒した奴の捜索依頼だね」


 私はそれを聞いてため息を吐く。


「私がそんな依頼をこなせるわけがないだろう。そういう依頼はその手のスキルを持った奴に調べさせろ、第一そんなめんどくさい依頼を私が受けると思っているのか?」


「もしかしたら、お主の知り合いじゃないかと思って聞いてみただけだけど、知らないようだね」


 ギルドマスターはそう言って笑う。


 まったく、そんな偶然があるわけないだろう。

 確かに船を使わずに倒したのなら私の知り合いの可能性もあるが、小舟を盗んでシーサーペントを倒した可能性もあるだろうに。

 一体どんな奴がシーサーペントを倒したのか……。

 私は多少興味もあるのでギルドマスターにどういう奴がシーサーペントを倒したのか聞いてみることにする。


「ところで結局どういうやつがシーサーペントを倒したとギルドは思っているんだ? 噂話程度は聞いたが」


「おやおや、興味があるのかい? なんなら捜索依頼を受けてみるかい?」


「それはけっこうだ、それでギルドは犯人をどうみているんだ?」


「シーサーペントを倒した犯人に関しては噂話の通りだね、おそらくシーサーペントを倒して大きなアイテム袋で収納して港に死体を置いて逃げた。それにそいつが水中を泳ぐのが得意な種族なのか、それともばれない様に小舟を盗んでシーサーペントを倒して小舟を返したのかは分かっていないね。犯人の目星も全く付いていない」


「そうか」


 噂通りということか。

 それに犯人の目星も付いていないか。

 シーサーペントを簡単に倒し死体を港に置いていくような奴が簡単に正体がバレるような証拠を残して行くとも思えないから、この件については犯人が分からないまま終わるのは確実だろう。

 まあ、この件については良いとして依頼についてだ。


「それでもう一つの方の依頼は何なんだ?」


「もう一つの依頼はあなたでも少しキツいかもしれないわ」


 私でもキツいかもしれない依頼か。

 この周辺でヤバイ魔物が出たという話は聞かないし、潜入系の依頼は私には無理だし……心当たりがないな。

 

「この周辺に2級ダンジョンがあるんだけどそれについて知っている?」


「いや、この周辺にダンジョンがあるなんて話は聞いたことが無いな」


 ギルドマスターは『ああ、やっぱり』と言ってため息を付いた。


「この周辺に2級ダンジョン、半魚人の洞窟というのがあるんだけど、敵が水中から突然襲ってきたり、手傷を負わせた魔物が水中に逃げたり、死体が水中に落ちてしまったりしてほとんど冒険者が行かないダンジョンなの」


 なるほど、そういう美味しくないダンジョンというのがあるというのは聞いたことがある。

 人気があるダンジョンは人が多いが人気のないダンジョンは放置されている。

 そして、人気のないダンジョンが百年くらい放置されるとダンジョンのボスが魔物を率いてダンジョンを出て近くの街などを襲う。

 おそらくはギルドマスターが依頼したいのはその2級ダンジョンのボスの討伐だろう。

 しかし、2級ダンジョン程度なら私一人でも余裕だと思うのだが。


 私が首を傾げているとギルドマスターが。


「ここだけの話なのだけど、放置されているダンジョンは人が倒さないからダンジョンにいる魔物の数が徐々に増えていくの」


「そうなのか?」


 私もレベル上げの時は有名なダンジョンにしか行かなかったのでその手の放置されているダンジョンには行ったことはないので初めて聞く話だ。

 しかし、そのことを普通の冒険者が知ってしまえば絶対放置ダンジョンには人が行かなくなると思うのだが。


「無論こんなことを話せばさらに放置ダンジョンに行く人が少なくなるからギルドはこのことを公開していないの、あくまで放置ダンジョンは魔物の数が多くて戦いにくいということにしておいて、冒険者にダンジョンの魔物を倒して欲しいから」

 

「しかし、そんな話を私にしても良いのか? 私が今聞いたことを喋ったらギルドは困るだろう」


「ふふふ、ギルドもこの手のダンジョンの依頼をする時は口が硬くて信用がおけてこの手の話に理解がある人にしか頼まないの」


「なるほど」


 確かにS級冒険者以上の者にも口の軽い奴やこの手のやり方が気に食わないという奴にこの話をすれば問題になるだろうからな。

 私も口は硬い方だし、この手のやり方にも理解がある方だ。


「それで放置ダンジョンにはまだ問題があって、放置されたダンジョンのボスは通常のダンジョンのボスと比較してもかなり強いの。半魚人の洞窟のダンジョンのボスが討伐されたのは60年前だから、おそらく現在の半魚人の洞窟のボスはレベル60くらいと思われるわ」


「レベル60だと」


 レベル60となるとそれはもはや一級ダンジョンのボスに匹敵する。

 二級ダンジョンで出ていいボスではない。

 これを普通の冒険者に話さないのは問題ではないかと思ったが、それがギルドの方針なのだろうから口は出さない。

 要は放置ダンジョンに行かなければ良いのだから。


 しかし、今回の依頼は強制の様なものだ。

 話したからには行って貰うといったものだろう。

 レベル60のボスに大量の雑魚達か……面白そうだな。


 私は深く笑みを浮かべギルドマスターの依頼を了承する。


「まあ、厳しいかもしれないが私なら問題ないだろう。それに水中戦を仕掛けてくる相手でも私なら適任だろうしな」

 

「そう言って貰って助かるわ、半魚人のボスや出てくる魔物の情報それにダンジョン内の地図なんかも勿論教えるわ、報酬についても十分な量を支払うわ」


 こうして私は二級ダンジョン、半魚人の洞窟のボスの討伐に行くことに決まった。


現在のカタログポイントは11512となっています。


もうすぐ総合評価ポイントが1万5千ポイントになりそうなので、なりましたらその日の分に加えて+2話とこの間投稿しなかった2話分を追加で投稿したいと思います。現在全力で執筆中なので1万5千ポイントになる頃には間に合うと思います。


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