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カタログを持って異世界に行こう!  作者: 天野 洋
三章 ダンジョン放浪編
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半魚人の洞窟 2

「うわ~、手応えが全くないわ~」


 俺は蛍丸を振るい次々と半魚人の首を落としていく。

 はっきり言ってただの作業だ。

 戦闘でテンションが上がるとかそういうことは一切ない。

 敵が遅いし武器の性能が良すぎて簡単に倒せてしまう。


 今回出会った集団を全て倒し終えて、俺は死体を物納していく。

 コンの方も俺を手伝う気はないのか援護は一切なかった。

 俺は一息吐きコンに話しかける。


 「コン、これは予想以上にだるいよ……手応えが無い魔物とこれから長時間戦うってのは」


 そう言うとコンは呆れた顔で。


「文句言わないでください、格上相手に長時間戦うのよりはずっと楽だし、安全でしょう。それに格上に時間をかけて倒すより雑魚を倒した方がポイントの稼ぎはいいじゃないですか」


「む~」


 それはコンの言う通りなんだが納得がいかないというか。

 こんな雑魚ばっかり戦っていたら本当に強い相手と戦うことになった時に困るような気がするんだが、まあ、当然のごとくそんな敵に会ったらホームに逃げることになるだろうが。

 安全な狩りって緊張が続かないというかね。

 アザレスの森で魔物と戦っていた時は戦いに緊張感があったと思うが、今は微塵の欠片もそんなものがあるとは思えない。

 今はなんというかゲーム感覚で戦っているみたいな感じかな。

 こういうのに慣れてしまうと後で何か痛い目に会うような気がするから、どうにかしないといけないと思うが……状況の打開策が思いつかない。

 黒猫の庭で出会ったあの黒猫みたいなのと戦えば何か変わるかも知れないが、あんな格上とはやり合いたくないしな。


 コンの方は俺がこんなことで悩んでいるなんて思ってもいないだろうし説明しても分かって貰えないだろう。

 コンは俺みたいな平和な世界に居た人間の気持ちと言うのが良く分かっていないというか……まあ、そもそもの考え方が違う気がするんだよな。

 でも、その癖コンはよく抜けているからな……。


 俺はそんなことを考えつつコンを眺める。


「どうかしましたか、大斗?」


 俺がぼーっとコンを見ているとコンが声を掛けて来た。

 俺は何でもないと返すと先へと進むことにした。




「この先に大量の敵が居ます! しかし、これは……敵が水中に居る?」


 コンが急に立ち止まったので俺も立ち止まっているとそうコンが言った。


 敵が水中にねえ。

 今までは普通の洞窟に半魚人が歩いて集団で襲ってくるという感じだったが、今度は水中から敵が襲ってくるという訳か?

 そういえばイクノアのおばちゃんも言ってたな。

 敵が水中から突然襲ってきたり、手傷を負わせた魔物が水中に逃げたり、死体が水中に落ちてしまったりとかして面倒だって。

 ということはこの先に水場があってそこから魔物たちが攻撃してくるということだろう。

 

「コン一応さっきよりは警戒しつつ、先に進むぞ、危なくなったら援護を頼む」


「分かりました」


 俺とコンは警戒をしつつ洞窟の先へと歩いて行く。



 そこは開けた空間だった。

 天井までの高さは10メートルくらいあり、人が2,3人立てるほどの道が真っ直ぐ伸びていて周りは全て水に覆われている。

 俺は水面を覗いてみると水面は透き通っていて水中を半魚人やその他の魔物が大量に泳ぎ回っているのが分かる。


 なるほどこれはやり難いわけだ。

 洞窟の入り口からここまでは1本道だった。

 ということはこの道を必ず通らないといけないわけだ。

 この真ん中まで行けば前と後ろから、そして突然の水中からの攻撃に対処しないといけない道を。

 それにこの道は戦闘するにはかなり手狭だし、倒した魔物をそのままにしておいたら邪魔になって適わないだろう。

 もしもこんな道がダンジョンの奥までずっと続いているのなら、ここは絶望的に美味しくないダンジョンと言われても仕方がないと思う。


 しかも、さっき水中を見たことから分かるように大量の魔物がここには居る。

 こんな戦いにくいところで大量の魔物に襲われたら普通の冒険者ならお陀仏だ。

 

 でも、これくらいのハンデがないとこの程度の魔物たちでは楽しめないだろう。

 俺は笑みを深めつつ敵の真っ直中へと歩いて行く。




◇◆◇◆◇◆◇◆




「はぁ? 今何て言った?」


「で、ですから、わざわざ来てくれたのですがシーサーペントは何者かに倒されたみたいなので、シーサーペントの討伐依頼はキャンセルということに」


 私はギルドの受付がそれ以上話す前にカウンターに拳を振り下ろす。


「ひっ」


「こっちはカリドナからカイナーグくんだりまで急いで来たというのに、舐めているのか?」


「で、ですから討伐対象がすでに倒されてしまったのですから、報酬を支払う訳にはいき」


「あ?」


 私はギルドの受付を多少本気で睨みつける。


「ひぃぃぃぃぃ、す、すぐにギルドマスターを呼んで参ります」


 やっと私の意図を理解したのかギルドマスターを呼びにギルドの奥の方に走って行った。

 ほんとここのギルドの受付は使えない奴だな。


 私がなぜ冒険者ギルドのカイナーグ支部で受付の人を脅しているかというと、ここカイナーグに出たシーサーペントの討伐依頼が出たが、ここら周辺に居る冒険者では歯が立たないというか、戦いにもならなかったおかげで水中戦を得意とする私に指名依頼が来たのだ。

 そしてカリドナから乗り合い馬車に乗って10日も掛けてここに来たら、すでにシーサーペントは何者かに倒されていて依頼はキャンセルと言われたので、ギルドマスターに文句を言って最低限ここまでの乗り合い馬車の代金を払って貰おうとしている最中なのだ。


 しかし、シーサーペントを倒したのはどこのどいつなのかね。

 人の仕事を掻っ攫って行きやがって、しかもそいつは聞いた話ではシーサーペントの死体をまるまる残して行ったらしい。

 普通レベル40クラスの魔物であるシーサーペントの死体となると、だいたい金貨数枚はするというのにそいつは死体をそのまま残して立ち去ったということだ。

 さらにはその死体を分かりやすいよう港の目立つ所に置いてあったらしい。

 これはおそらくだが金に困っていないお人好しの高ランク冒険者の仕業だろう。


 しかしながら、不可解な点が一つある。

 それはギルドも誰がシーサーペントを倒したのか特定しようとして近日中に船を借りた人や勝手に船を盗んだ者がいないか調べたのだが、そのような者はいなかったのだ。

 シーサーペントは10メートルもあるのだ。

 そのお人好しはどうやってシーサーペントを倒し、運んだのか。

 普通の人間ならば絶対に大きな船が必要になったはずだが、大きな船はどれも動かされていないことが確認されている。

 それならばシーサーペントを倒した者はどうやってその死体を港まで運んだのか……それが全くもって分からなかった。


 もしかしたら私のように水中戦の得意な者であれば可能だが……シーサーペントの死体は何か鋭利な物で切ったようにバラバラになっていたのだ。

 そのバラバラになった死体を水中戦が得意な者であっても運ぶことは不可能だ。


 結局結論としては何者かがシーサーペントを倒し、空間魔法が掛けられたアイテム袋か何かで運んだのだろうと推測された。

 しかし、普通のアイテム袋はそこまで大きな物を入れることはできないのだ。

 どれだけ大きな物をそのアイテム袋は入れられるんだとギルドは必死でその人物を探しているらしいが見つかっていないらしい。


「え、エリア様、ギルドマスターがお呼びです。どうぞ奥に」


 私が考え事をしている間に受付の人が戻って来たみたいだ。

 私は受付に案内して貰いギルドマスターの待つ部屋に歩いて行く。


現在のカタログポイントは11512となっています。


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