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カタログを持って異世界に行こう!  作者: 天野 洋
三章 ダンジョン放浪編
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イクノア

「ふむ、これはなかなかいけるな」


「そうですね、思った以上に美味しいですね」


 俺とコンはシーサーペントを倒して2日後、やっと漁が再開されて魚が入ってきたと聞いたので、早速この前おっさんに勧められたお店、イクノアで魚料理をコンと共に食べていた。

 コンは本当は食事など必要ないのだが、今は狐の獣人の恰好をしているのでお店に来て俺だけが食事するのもおかしいので、なんとか説得し一緒に食事することになったのだ。

 食事するのは良いんだけど……俺はコンの方を見る。


 コンの前には4人掛けのテーブルなのに所狭しと料理が並んでいる。

 明らかに1人前などではなく、6人前はある。

 それをコンは次々と口の中に入れていき、コンの前にある皿はどんどん空になっていく。


 コンさん……食い過ぎじゃありませんか?


 いや、確かに食事を勧めたのは俺なんだけど、こんな食べるとは思わないじゃん。

 そもそも、どうやってあれだけの食事がコンの胃の中に収まっているんだ。

 元々は手乗りサイズなんだろ!

 あれ?

 というかコンが買ったのは姿を変えるアクセサリだったけど、あれどういうタイプの物だったけ?

 コンに勧められるがままその通りに買ったから全然詳細を読んでなかったわ。

 今さらそのページを開いて商品を確かめようとしても無理だろう。

 

 姿を変えると言っても色々ある。

 例えば幻術をまとい見かけを騙すタイプ、だがちゃんとコンを触った時に感触はあったけど、そういうのも騙すタイプとかじゃないよね? それに完全に姿を変えるタイプ、でもこれ仕組みとか良く分からないんだよね、どうやって姿を変えているのやら。

 そもそも、どうやって手乗りサイズのコンが十数倍もある獣人になるんだ、質量保存の法則はどこに行ったんだ。

 まあ、魔法と言えば全てが解決する世界な気がするからな……。

 

 でも、あんな凄い効果を持つアクセサリがたった二万ポイントで買えるものなのか?

 幻術タイプのものならその程度だと思うけど、完全に姿を変えるタイプのものは二万じゃ買えないだろう。

 実は不良品で変身したら元に戻れなくなるアクセサリだったりしてな……本当にそんなことないよな?


 俺はそんなことを考えつつ、料理を食べていく。




「ごちそうさま」


「ごちそうさまでした」


 俺たちはご飯を食べ終えた。


 俺の方は普通に1人前だが、コンはあの後おかわりまでして結局8人前は食べていた。

 しかも、最後の一言が『あまりお金もありませんし、この辺で止めますか』だ、コンの胃袋はどうなっているのだろう?

 お金があったらもっと食べていたというのか?

 正直あれだけの量を目の前で食べられたら、俺の食欲がなくなってしまうので止めて欲しいものだが。

 まあ、ケモナーとしては『ご飯をたくさん食べてもぐもぐしているコンたん萌え~』と言った方がいいのだろうが、正直あそこまで食べる人を見たことがなかったのでそのような反応をすることが俺にはできなかった。

 そのうち、慣れて『コンたん萌え~』という状況になりそうだが……。


 さてと会計をするか、俺は席を立ち会計を済ませる。


「合計で銅貨1枚と鉄貨2枚になります」


 高いよ!

 つまりは合計で1020ガルドということになる。

 普通の食事は50ガルドなのだが……。

 まあ、魚が取れ始めとあって高いのとここの料理が美味しかったこともあるので俺は素直に払うことにした。

 お金が入っている袋を見ると残りのお金は銀貨2枚と銅貨が4枚24000ガルドだ。

 そろそろ金策をしないとな……コンがこれだけ食べると分かったら食費は今の10倍は必要だ。

 俺はため息を吐きつつ、会計をしているウェイトレスのおばちゃんに話しかける。


「ここら辺でダンジョンってないですか? レベル上げにダンジョンに行きたいのですが」


「あらあら、あなたたち冒険者だったの? そういえばあのお嬢さんはたくさん食べていたからねえ」


 どうやらおばちゃんから見ても俺たちは普通の冒険者には見えない様だったが、コンがあれだけの量の料理を食べていたことに納得していた。

 というか冒険者の一言であの食事量を許容していいのか?という疑問が俺の中で渦巻いていたが、驚いた目で見られていないことから普通なのだろう。

 

 「そうね、ここの近くのダンジョンは二級ダンジョンの『半魚人の洞窟』くらいかねえ」


 二級ダンジョンか。

 三級ダンジョンでは少々物足りないところがあったからちょうどいいかもしれない。

 しかし、二級ダンジョンからは魔物のレベルが20~40レベルと振り幅がけっこう広い。

 ちなみにこのダンジョンの等級については魔物のレベルが20~40のものが現れる所が二級ダンジョンと言われているだけで、1つのダンジョンでレベル20~40の魔物が出るわけではない、レベル20~25の魔物が出る所も、35~40の魔物が出る所も二級ダンジョンとなっているということだ。

 さすがに俺でも35~40の魔物が居る所で召喚トラップによるレベル上げはできない。

 その半魚人の洞窟が25~30くらいであればちょうど良いのだが。


「その半魚人の洞窟の洞窟に出る魔物のレベルはどれくらいなんですか?」


「えっと、確かねえ20~25と二級ダンジョンでも一番低い方なんだけど……あそこのダンジョンは人気がないんだよ、どうも敵が水中から突然襲ってきたり、手傷を負わせた魔物が水中に逃げたり、死体が水中に落ちてしまったりとかなり戦いにくいって聞いたよ」


 魔物のレベルについてはちょっと低いが許容範囲だろう。

 雑魚だから簡単に敵を倒せて召喚トラップによるレベル上げが行えると考えればいい。

 それにしても水中に潜る敵か……それはやりずらいだろうな。

 普通の人なら戦いにくくてそんなダンジョンにはいかないだろう。

 でも、要は一撃で倒して一瞬で物納すれば済むだけだ。

 俺とコンならほぼ一撃で倒せるし、死体回収も一瞬で済むから全然問題ない。

 それに人気がないって事は物納の瞬間を黒猫の庭の時みたいに見られることはないということだから俺らにとっては良いところだろう。

 俺はそのダンジョンに行くことを決めておばちゃんにダンジョンがどこにあるか聞く。


「面白そうだからそこに行ってみることにするよ、おばちゃんそのダンジョンどこにあるの?」


「ええ、あんたら結局あそこに行くのかい? 止めた方が良いよ、Bランクのパーティーがこの前あそこに挑戦して帰ってこなかったんだよ、危ないから止めた方が良いって」


「大丈夫だって、こう見えても俺たちはそこそこ強いから実力だけならAランクはあるよ」


「本当かいそれは? 冒険者カードを見せてごらん!」


 そう言っておばちゃんは強引に俺が腰に下げていた袋から強引に冒険者カードを取り出す。


「ちょ、おばちゃん」


 おばちゃんはそのまま冒険者カードを目にして――。




冒険者ランク:E

名前:犂宮(すきみや) 大斗(だいと)

年齢:18

<固有スキル> なし

<スキル>   剣術Lv2




「どこが『実力だけならAランクはある』だい! あんたEランクじゃないか! 勇者ごっこも大概にしなさい! あんたに常識ってものを教えてあげるわ!」


 俺とコンはおばちゃんに引っ張られていき、店の奥でおばちゃんに長々と説教されることになった。




「ああ、疲れた、まさかあんな長々と説教されるとは」


 ご飯を食べに来た時は昼だったはずなのだが、すでに陽は傾き夕方になっている。

 よくもまあ、こんなに長々と説教したものだ。

 お店のウェイトレスをしなくていいのかと聞いたのだが、今日は漁をやっと始めることができたから、みんな忙しくてお店に来る人が少ないらしくて、おばちゃんが抜けても大丈夫だったらしい。

 それにおばちゃんが説教の理由を言うとお店の人達はおばちゃんの意見に賛同して長々と説教されるハメになったのだ。


「ほんと失礼ですね! 私たちが強いって言っているのにあのおばさんは全然聞く耳持ってくれませんでした!」


 コンの方は説教中もおばちゃんに反論し続け口論になっていた。

 そのせいで説教が長引いた真の原因と言っても良いだろう。

 まあ、コンにそのことを言うと絶対怒りだすから言わないが。

 

 コンは全く聞く耳を持ってくれなかったおばちゃんの事をまだ怒っているのか、耳がピクピク動き、尻尾がうねっている。


「まあ、コンそんなに怒るなよ、あのおばちゃんたちも悪気があって説教したわけじゃないんだから」


「そんなこと言っても、私たちはあの程度のダンジョン簡単に踏破できるほど強いんですよ! あんなこと言われる覚えはありません!」


 俺は怒っているコンを眺めつつ、どこか安心した顔で言う。


「別にいいじゃないか、むしろ俺は安心したよ。ああやって人の事を気にかけてくれる人もこの世界には居るってことがね、最近は碌な出会いがなかったからね」


「っ……そうですか、そう大斗が言うのならいいです」


 コンは何か納得がいかないような顔をしていたがそう言った。


「さてと今日はもう遅いからダンジョンに行くのは明日にして、だらだら過ごしますか」


 俺とコンは適当に人気がない所でホームに帰りだらだらと過ごした。


現在のカタログポイントは8012となっています。


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