港町カイナーグ
「さてと、やって来ました港町カイナーグ! 魚を食べるぜえええ」
「やってきて早々、食べ物ですか」
「おう、だってこの世界の魚料理って食べたことが無いからな。さすがにこの世界じゃ冷凍技術なんてないだろうから、魚とか海の近くじゃないと高くて食べれないみたいだからな」
「まあ、そうですね。というかなんでこの街を選んだんですか?」
「う~ん、魚料理が食べたいと思ったからかな?」
「そんな理由ですか……」
「さすがに海の魔物を倒したいとか思ったわけじゃないしねえ、ほら俺らってこの世界の情報ほとんど知らないからダンジョンに行こうとしても、どこにダンジョンがあるか分からないから適当な街に行って、その近くのダンジョンに行こうと思ってたから」
「そうですか、まあ、言われてみれば確かにそうなので仕方が無いですね」
「さてとそこらへんの人にこの街の美味しい店を聞いて情報収集でもしますか」
俺はそこらに歩いているおっさんに声を掛ける。
「すいませーん」
「うん?」
「この辺りで美味しい魚が食べれるお店ってないですか?」
「おや、こんな若いのに二人旅かい?」
「一応俺たちは冒険者ですよ」
俺はそう言って腰に差した蛍丸を見せる。
それ見ておっさんは苦笑しつつ『そうだね』と誤魔化された。
苦笑されるとか……そんなに俺は子供に見えるのか? 日本人は若く見られがちとは言うけど、まあ、コンの方は身長も150cmと小さくもろにロリっ子だから仕方がないと思うが。
俺がそんなことを考えているとおっさんが話を戻して。
「魚については残念ながら最近は魚が捕れないらしんだ」
魚が捕れないって、漁獲量が減って魚が捕れないってことかな?
まあ、そういう時もあるだろうと思うけど、今は魚が食べたい気分なので多少高くても食べるつもりだ。
「あんま魚が捕れなくて魚の値段が高いってことなんだよね?」
俺がそう言うとおっさんは困ったような顔をして。
「そうじゃなくて、魚は今は1匹も捕れていないんだ」
え?
なんで魚が1匹も捕れないんだ?
いや、海に出れば普通捕れると思うんだけど。
それとも海に異常があって捕れないということか?
この世界だから有り得ないとは言えないないな。
俺はおっさんの話の続きを聞くことにする。
「最近この港の近くにシーサーペントが住み着いてね」
シーサーペントだと……。
やべええええええええええええ。
海蛇っすよ。
海蛇!
鱗ペロペロ!
鱗ペロペロするぜ!
ぜひともうちも一匹は欲しいですね。
いやでも陸地とか上がれそうにないから……無理か。
それ以前に魔物だった場合はほぼ不可能だろう。
あいつら俺が愛想振りまいて近づいても無視して攻撃してくるし。
どうにか仲間にできないものかね
魔物使いみたいなスキルがあればできないか?
あれ?
そういえばそういうスキル取れば良かったんじゃないか?
うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお。
なんで今まで思いつかなかったんだ俺……。
現在のポイントはほとんどないから習得は不可能だろう。
うん、今度習得することにしよう。
俺が妄想をしてテンションを上げたり、落ち込んだりをして周りが見えなくなっている一方、コンとおっさんは。
◇◆◇◆◇◆◇◆
「あの少年はなんかブツブツ言いながらニヤニヤしたりしているんだけど、大丈夫なのかい?」
おっさんが大斗の奇行を見て心配そうにコンに話しかける。
まあ、大斗がああるなのはいつものことですからね、恐らくは『シーサーペントだと……超ペロペロしてええええええええ』とか妄想しているのでしょう。
大斗を待っていては話が進まないので、無視して話を進めよう。
「ええ、いつものことですから。気にしないでください、それよりも話の続きをどうぞ、彼の代わりに私が聞きますので」
おっさんはそれでも大斗のことを心配そうに見ていたが、奇行が止まらないようなので仕方なく説明を続けた。
「そうかい、なら話を続けるね、シーサーペントが近くに住み着いたせいで船を出して沖に行こうとすると、どうもシーサーペントの縄張りを通るみたいで船が襲われるんだよ。それで漁がまったくできなくなってしまってね」
縄張りですか……めんどくさい所に居座ってくれたものですね。
大斗のことだから『この後、シーサーペントをペロペロしに、おっと倒しに行こうぜ!』とか言いだすに決まってますね。
私は仕方なく索敵スキルを使い海にいるシーサーペントのレベルとスキル構成を調べる。
レベル41ですか、このスキル構成なら問題なく倒せますね。
後でシーサーペント狩り決定ですか。
私はそのことをおくびにも出さず話を続ける。
「なるほど、魚が捕れなくなった理由はそれですか。ですけど冒険者などにそのシーサーペントの退治の依頼を出さないのですか?」
この程度の敵ならそこそこ強い冒険者でも倒せそうな気もしますが。
やはり海ということろがネックなのでしょうかね。
「ああ、それなんだが、確かに依頼は出したんだが……冒険者が皆返り討ちにあってしまってね。海の上だといくら強い冒険者を雇っても船が壊されれば何もできなくなってしまい」
おっさんは非常に苦い顔をして言う。
このおっさんもおそらくはこの街の住人だから漁業関係か何かの仕事なのでしょう。
今の状態では生活が成り立たなくなってしまって……。
しかし、この世界は人間だけではないのだから水中戦も得意とする種族がいてもおかしくはないはずですが。
「ですが獣人には水中戦もできるような者がいるんじゃないですか?」
「ああ、そうなんだ。だからギルドを通してそういう腕の立つ冒険者を呼んでいるらしいから、解決するのは時間の問題だと思ってはいるんだけど……シーサーペントはかなり強い魔物だからね」
腕の立つ水中戦もできる冒険者を呼んでいるが、その冒険者が負けた時はそのシーサーペントをどうにかする望みはないでしょうね。
水中戦のスペシャリストが負けたらどうしようもないでしょうからね。
おっさんはその冒険者に期待を掛けつつ、失敗するんじゃないかと怯えているのだろう。
まあ、そのシーサーペントは今日中には私たちの手によって倒されるでしょうが。
「そうですか、ではシーサーペントが倒されることを祈りつつ、どこか宿屋で魚料理が食べれる様になることを待つことにします。それとついでに美味しいお店を教えてくれませんか?」
「ああ、分かったよ。美味しい店はここの通りをまっすぐ行ったら広場に出るんだけど、そこを右に向かって行けば見えてくるイクノアってお店が美味しいかな」
「わざわざありがとうございました、ほら行きますよ大斗!」
「え? どうしたのコン?」
大斗はまだ妄想をしていたのか状況に気付いていないようだ。
私は大斗引っ張って人気のない裏路地に入って行き、先ほどの話を説明することにした。
現在のカタログポイントは6712となっています。
男の娘の登場できっと読者がかなり離れたんじゃないかな()
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