黒猫の庭 9
さて如何に料理しましょうか彼女のピンと立った耳を垂れさせるほどの甘噛みをしましょうか?
いやいや、ここは尻尾だろ!
尻尾!
獣と言ったら尻尾に決まってるじゃん。
彼女の尻尾は残念ながらメイド服の下にあるのだろう。
てか普通メイド服に穴を開けて尻尾出すものじゃないの!
俺が彼女の主人なら必ず尻尾を出させるぜ!
おや、これは……表の私が出始めましたね、ということはもう終わりですか。
まあ、最初でしたからこんなものですか。
私はメイド服を着たイヌミミの女性をちらりと見る。
短い時間でしたがそこそこ楽しめましたし良しとしますか。
そうして、私は消えた。
くそっ、頭が痛い……メイド服+イヌミミ+無表情系クール女性の衝撃が大きすぎて俺のソウルが暴走したのか。
俺はさっきの自分の所業を思い返す。
しかし、これはやりすぎじゃね?
暴走したにしてはいつも以上におかしかった気がする。
それに何かが増えた様な気がする。
俺は嫌な予感に従い自分のステータスを思い浮かべる。
名前:犂宮 大斗
年齢:18
レベル:37
<固有スキル> ケモナー化
<スキル> 異世界共通語 剣術Lv2 射撃Lv1 狙撃Lv1 毒耐性Lv3
気配察知Lv1
なんか変なのが増えてる!
今までなかった固有スキルの欄にケモナー化という謎のスキルが増えている。
ケモナー化って何だよ。
ケモナー化って……。
確かに俺はケモナーだけど、こんなスキルってアリなのか?
まあ、ファンタジーの一言で済ませられる様な気もするけどな。
ついでに下のスキルの方も剣術がやっとLv2になっている。
それにコンの言っていた気配察知Lv1が増えているな。
って俺のスキルとかはいいとしてどうやってこの場を収めよう……。
取り合えず、俺は彼女たちに土下座することにした。
「それでさっきの暴走は固有スキル『狂化』のようなものですか」
イヌミミの女性が若干疑わしいという目で俺を見てくる。
俺はこの状況の打開策を思いつくことができなくて、固有スキルによる暴走ということを正直に話した。
自分の情報をベラベラと喋るなんてただのアホだろと言われてもしょうがないと思う。
俺も自分でそう思うし……。
どうにか誤魔化せば良かったんじゃないかって?
だってアレをどう誤魔化すんだよ!
誤魔化しようがないだろ、アレは。
さすがに俺もカタログの事を話すような愚を犯してはいない。
話したのは固有スキルと召喚トラップと物納はゴミ処理の画期的な魔法と嘘を吐いた。
まあ、正直に大体話したんだけど俺の事を胡散臭い目で見られている。
いや、そりゃね……明らかにケモナー化がやり過ぎましたからね。
俺でも正直引くレベルだ。
これは俺の黒歴史の中でも断トツで1位で代々語り継がれてもおかしくないだろう。
「まあ、正直納得はいきませんが、大体の話も聞けたので良しとしましょう。シア様ここをさっさと離れましょう、私もこの変態と一緒に居たくありません」
「そうね、私もまさかこんな変態だとは思わなかったわ、早く別の場所に行ってレベル上げをしましょう」
少女の方もイヌミミ女性の方も俺の事を生ごみでも見るような目で見ている。
まあ、そういう目で見られても仕方ないよな。
少女とイヌミミ女性が立ち去って行くのを見送っていると、何かが気配察知に引っ掛ったのを確認した。
俺は全力で後方に跳ぶ。
次の瞬間俺の居た地点は爆発が起こった。
何者かによる攻撃か。
しかし、ヤバかったな気配察知が無かったら直撃だっただろう。
飛んできた攻撃の方向を見ると赤い目をした二股の黒猫が居た。
おいおい、俺は敵の強さとか分からないけど。
あの黒猫はヤバイ感じしかしないぞ。
俺は即座にコンに声を掛ける。
「コン! 奴のレベルとスキルを確認しろ!」
「わ、分かりました」
そう言っている間に黒猫はこちらに向かって接近してくる。
しかも、ここの魔物に比べて遥かに早い。
この黒猫、本当にここの魔物か?
俺は疑問を浮かべつつ、グラディウスを構えて応戦する。
「ライトニング!」
先手必勝とばかり俺はグラディウスに付加された魔法を発動する。
グラディウスから放たれた電撃は黒猫へと向かう。
電撃が黒猫に当たると思われた瞬間、電撃は何かに弾かれた。
あれは?
結界か何かか?
俺がそう思っているとコンがかなり焦った様子で。
「今のは奴の対魔法結界です! レベルは50ですが所持スキルが多すぎます。これは勝てません、すぐに逃げてください!」
ほんとうにこいつレベル50なのか?
それ以上としか思えない気がするんだけど。
これは逃げた方が良いな。
俺は逃げる前に固まっている彼女たちに声を掛ける。
「俺が時間を稼ぐから、さっさと逃げろ! 時間を稼いだら俺も逃げるから早くここから離脱しろ!」
俺が叫ぶとイヌミミの女性はすぐに少女を担ぎ全力でここから逃げていく。
あの分なら少し時間を稼ぐ程度でいいだろう。
俺は再びグラディウスを構え黒猫と対する。
黒猫は尻尾揺り動かすと、その尻尾が急激に伸びた。
尻尾が物凄い勢いで俺に向かって伸びてくる。
俺は片方の尻尾を避けて、もう片方の尻尾を切断しようとスキルを発動させる。
「スラッシュ!」
剣が青白い光に包まれ物凄い勢いで黒猫の尻尾を切ろうとするが。
ギンッ
グラディウスではこの黒猫の尻尾を切断することは適わなかった。
こいつ、硬いし、重すぎる。
俺は強引に黒猫の尻尾の軌道をずらしなんとか攻撃を避ける。
これは本当に勝ち目がないな。
近接戦はまずいと判断し、俺は黒猫と距離を取る。
黒猫は動かずこちらを見ていたが、次の瞬間には炎の波がこちらに向かって放たれた。
とてもじゃないがかわせる様な代物ではない。
俺は全力で上空へと高くジャンプをしてこの炎の波を避けるが。
それを分かっていたという風に黒猫もまた俺と同様に空中に跳んでいた。
黒猫は二股の尻尾をこちらに向かって凄い勢いで伸ばしてくる。
これはヤバいよな。
俺は若干焦りつつ、唯一使える気闘術を発動させる。
「気闘術 纏い 黒壁!」
俺は全身に気を纏い防御力を上げる。
次の瞬間には黒猫の尻尾がグラディウスを貫通し、腹に直撃した。
「がっ」
俺はそのまま吹き飛ばされ、受け身も取れずまま落下した。
「大丈夫ですか、大斗!」
コンが急いで落下した俺の所に駆けてくる。
どうやらさっきの炎の波をどうにか避けたようだ。
「コン、これ以上は無理だ、撤退する」
「分かりました」
コンが俺の上に乗ったことを確認すると俺は『ホーム』を発動させこの場を離脱する。
◇◆◇◆◇◆◇◆
「これは……」
私はシア様を背負い全力で逃げている途中なのだが、察知スキルで彼らがどうなっているか見ていた。
そして、彼らの反応が突如消えた。
しかし、あの黒猫の反応はまだある。
この意味は彼らが死んだということだろう。
「どうしたの、カレン?」
シア様が不思議そうに聞いてくる。
もう少し危機感というものを持ってほしいものです。
あれほどの敵と対峙したということにまるで気付いていないようだ。
私はそれを知らせるためにも事実を告げる。
「どうやら、彼らが死んだ様です」
「え?」
シア様は意味が分からないという顔をしている。
「だってあれってここのボスのヘルキャットでしょう? 彼らがボスとは言えレベル20の敵に負けるはずが」
「いえ、違います。シア様は霊獣様の言うことを聞いてませんでしたか? あれはレベル50、いえ能力的にはもっと高いナニカです」
「それはおかしいわよ、このダンジョンにはそんな強いものは現れるはずがないじゃない!」
「ダンジョンとは何が起きてもおかしくない場所です、例えここの様な三級ダンジョンでも私を圧倒できるような手練でも、簡単に死んでしまうような所なんですよ、ダンジョンを甘く見ないでください、シア様」
シア様はそんなこと信じられないという顔をしつつ、すぐに自分のすべきことを決めたのか。
「ごめんなさい、私は少しダンジョンというものを侮っていたのかもしれないわ、彼らの死を無駄にしないためにも早くここを出てあの魔物のことを知らせましょう」
私はシア様の発言に満足し、より一層早くこのダンジョンから抜け出そうと駆ける。
現在のカタログポイントは276712となっています。
すいません、展開急いだらぐちゃぐちゃになりました。
今度からは急ぐことなく自分のペースで書こうと思います。
え? 書き直さないのかって?
今日は忙しいから時間が取れなくてry
ご意見、ご感想おねがいします。