表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カタログを持って異世界に行こう!  作者: 天野 洋
二章 イスカの街編
31/68

黒猫の庭 7

「弱い、弱すぎるなあ」


 俺は右手でグラディウスを振り、左手で襲いかかって来る魔物を殴り飛ばす。


 召喚トラップでの戦闘中もさすがに作業と化してきていて退屈になってきたのだ。

 超美味しいんだけど、これをずっと続けるというのも飽きるというものだ。

 あれだネトゲーにおける経験値5倍イベントとかで、最初は経験値5倍美味いいいいいいいいって6時間ほどレベル上げを続けていると、さすがに飽きたわ……もうこのイベント終わりでいいわってなるのと同じようなものだ。

 本当のゲーマー(廃人)なら24時間とか余裕だぜとか言うけど一般人の俺にしては無理なんだよね。

 

 もうこの方法をやり始めてから2日経つのだ、すでに総獲得ポイント数もヤバいことになっているが、俺の気力も右肩下がりでヤバいことになっているのだ。


 そんなことを考えつつ戦っていると。


「こらっ、大斗! いくら格下相手だってのにちゃんと戦いなさい! そういうのが命取りになるんですよ!」


 コンが俺に文句を言ってくる。

 いやまあ、コンの言いたいことも十分わかるんだけどね。


「えええ、でもよお」


 そう言って俺は背後から襲って来た魔物をひらりとかわし、グラディウスで斬り殺す。


「飽きたっていうのが第一としてあって、それとなんか背後に目があるように後ろの敵の気配っていうのかな?それが分かるし、目を開けてなくても周囲数メートルの敵は手に取るように分かるようになってきたから、こうやってふざけてても簡単に倒せるんだよな」


 そう言っていてふと気付く。

 あれ?

これはもしかしてアレなんじゃないか。

俺の脳裏にある可能性が閃く。

 魔物を倒しまくって悟りの境地を開いた的な何かか。

 それとも俺に秘められた才能が開花したのか。


「ふふふ」


 俺は厨二的な展開を妄想し、にやにやする。

 いやあ、男にとってこういう能力開花の瞬間とかマジで大好物だからな!

 このまま俺の秘められた才能が開花し、ハーレムルートへ!

 酒池獣林(造語です)の展開が来る!!!


 俺がだらしなくニヤニヤ笑っているとコンが寄ってきて一言。


「おめでとうございます、新しいスキルが増えていますね。気配察知Lv1ですか、察知スキルと違ってこれはパッシブ(常時発動)タイプのものですね」


 俺の妄想をぶろーくんした。


「おおおおおおおい、なんでそこで俺の夢を壊すの! もしかしたら新しいスキルが出たんじゃないかと思ってはいたけど、そこははかない可能性を信じて『俺の秘めたる力が発動」説を妄想していたのに!」


「大斗……戦闘中に妄想しながら戦うとはなんですか、変態にも程が有りますよ。しかもスキルが増えた可能性についてはちゃんと考えておきながら、現実逃避で僅かな可能性を妄想しているとか難易度高いですね」


「ふっ、甘いな、コンよ。男なら燃える展開に期待するんだ!!!」


「いや、一応私も性別上オスですけど、そういう事は思ったことないですね」


「なぜだ! 男なら一度は戦隊ヒーローに憧れて戦隊ごっこをしたが、なぜか女性役のピンクを押し付けられ、仮面ライ○ーに憧れてラ○ダーキックをして顔面から地面にダイビングし、超能力に憧れて開花するんだ俺の超能力!と小一時間念じ続けた挙句、知恵熱を出して寝込んだことは男なら誰にでもあるはずだ!」


「うわぁ~、大斗の子供時代が手に取るように分かってきました」

 

 『可哀そうな大斗くんですね、よしよし』と言いながらコンが俺の肩に乗って前足で俺の頭を撫でてくれる、時々当たる爪が痛いけど……それもまた良い!


 などとやってるコンも十分真面目にやってない気がするけど。


 と思いつつ、俺は最後の一匹を斬り殺す。

 周りを見渡し再度生き残りが居ないことを確認すると。


「物納!」


 そして剥ぎ取りもせずに魔物たちを物納する。

 魔物たちの死体はどんどん光の渦に呑まれていく。

 

 さすがに大量の魔石や素材を持って行って換金すると目立つので、すでに魔物の解体などはやってない。

 殺した後は全部物納だ。

 めんどくさくなくていいけどな。

 

 目立つのは嫌だと大斗は言っているがすでにこのダンジョンに入ってから3日が過ぎている。

 3日もダンジョンにしかもソロというか一人と一匹でキャンプ狩りをし続ける人など普通いないので、このまま出たら十分目立つことを大斗はさっぱり自覚していない。

 ダンジョンの門番をしている兵士がたった2人でダンジョンに入って3日も出て来ないことに心配しているなど露知らず、大斗は召喚トラップを発動させ再び狩りを始める。




◇◆◇◆◇◆◇◆




「これは」


 先頭を走っていたカレンが急に走るのを止めた。

 なんでだろうと不思議に思いながら私はカレンの横まで走る。


「どうしたの? 早く行かないと召喚トラップを発動させた人が死んじゃうかもしれないのに」


 私はカレンに問いかける。

 たった二人というか一人と一匹でかなりの数の魔物を相手にできるはずはない。

 急がないとその人は死んでしまうかもしれないというのに。


「再び察知スキルを発動させたのですが、魔物の数が物凄い勢いで減っているのです」


「どういうこと?」


 魔物の数が物凄い勢いで減っているって他の人が助けに行ったってこと?

 いや、でもカレンは他の人が助けに行ったとは一言も言ってない。

 だとしたらその人たちが強くて簡単に返り討ちにしてしまったってことかな?

 それなら一安心だ。

 走って損した様な結果だが、目の前で人に死なれるよりはマシだろう。

 私は魔物狩りに戻ろうと別の方向に歩いて行こうとして、カレンがまだ察知スキルを使っていることに気付いた。


「どうしたの、カレン? その人たちが大丈夫なら再び狩りを始めましょう」


 そう言ったがカレンは私の言うことを聞いている様子ではない。

 おかしいなと思い私はカレンの顔を覗きこむと。


「こ、こんな馬鹿げた事をやっている人がいるなんて!」


 カレンは怒気と驚愕が混じったような顔で叫んだ。

 いつもは温厚なカレンがこんな顔をするのは珍しい。

 その人たちは何をしているのだろうか。

 そんなことを考えているといつものカレンに戻ったのか。


「シア様、すみません、少し取り乱しました。彼らは恐らくですが意図的に召喚トラップを発動させているようです」


「え?」


 私はあり得ないことを聞いて固まった。

 意図的に召喚トラップを発動?

 召喚トラップと言えば発動させてしまうと、20体近くの魔物を召喚してしまうダンジョンでも最悪とされているトラップだ。

 普通のそのレベル帯の冒険者ならこの数の魔物を前にしてそのほとんどが殺されてしまうと聞く。

 まあ、その召喚トラップ自体ダンジョンにはほとんどないのだけど、それを発動させてしまった時の絶望感は半端ではないらしい。

 私も、もしそんなトラップを発動させてしまったら、まともに戦うことなどできないだろう、だけどカレンが居るからどうにかなるとは思うけど。

 そんなトラップを意図的に発動させるなんて信じられない。

 その人たちはどうしてそんなことをしているのだろうか。

 私は不思議そうにカレンの方を見ると、私の考えを察したのか。


「恐らくは効率的なレベル上げのためでしょう、この召喚トラップを使えば効率的に魔物と戦うことが出来ます。ですがこんな方法を取るなんて余程腕に自信があるのか、それともただの馬鹿なのか……」


 確かにカレンの言う通り効率的に魔物と戦うことはできるだろうが、20体近くの魔物と戦うというとんでもないリスクが発生する。

 だというのに効率的な魔物狩りをする。

 私はそんな人物に会いたくなった。

 もしかしたら、複数の魔物を相手にしてもスキルを使わずに、慌てず落ち着いて倒せる様になる切っ掛けになるかもしれないと。

 私はその人物に会うことを決める。


「カレン、私はそんなことをする人に興味が湧いたわ、会いに行ってみましょう」


 私がそう言うとカレンは猛烈に反対した。


「シア様、危険です! こんな信じられないようなことを行う者など普通の人物ではありません、確実に変です! 変態です!」


「いいじゃないの、色々な人物に会うのも為になるでしょう。私決めましたから」


 私はそう言うとカレンを置いてその人物がいる方へと歩いて行く。


「お待ちください、シア様!」


 私は制止を求めるカレンを無視して、その人物が居る方へと向かった。


現在のカタログポイントは275290となっています。


ご意見、ご感想お願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ